ねずみの地図 二十五ヶ所目 『睡眠薬の地図』 | ダイエット、なう!

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 自称:名もなき放蕩作家が送るブログ小説。
 ただいま、週一回で、タイムリードキュメンタリー小説『ダイエット、なう!』を配信しています。とりあえず、読んで下さい!よろしくです。『喫茶店mocha』や『もかの紹介感想部屋』もよろしくね。

「皆アリバイが通っていたわね。」
「そうですね。」
 構内の道路を歩きつつ、伊野は溜息をついた。牛尾もメモ帳をめくりながら同意する。
 現場である蛍川は、近々キャンプする予定で、星空はその下見をすると言っていたらしい。おとといの予定は、メンバーそれぞれバイトやゼミでアリバイがあった。
♪ヴー ヴー ヴー♪
 伊野のスマートフォンがバイブレーションを起こした。伊野はポケットからスマートフォンを取り出して、電話を取る。
「もしもしマイ?うん、私。うん・・・。うん・・・。」
伊野は頷きながら、電話越しの卯塚と話す。
「・・・分かった。ありがとう。それじゃあまた。」
電話を切った伊野に、牛尾は話しかけた。
「どうしたんですか?」
伊野はポケットにスマートフォンをしまって、答えた。
「被害者の体内から、睡眠薬が検出されたの。」
「って事は、被害者は眠らされてから沈められたって事ですか?」
「そうなるわね。」
 牛尾はメモ帳を見た。
「どうしたの?」
伊野が尋ねると、牛尾は慌ててメモ帳を閉じた。
「えっ、いやぁ何でも。」
牛尾のごまかしに、伊野は首をかしげた。
 そして、二回目の捜査会議。睡眠薬以外は何も進展がなかった。
 一週間後、聞き込み調査を続けたが、結果が出なかった。暗礁に乗りあがった、事実上の迷宮入りに月江戸市警の凶行犯係は頭を抱えるしかなかった。伊野のねずみの地図も、伊野自身が地図の中で迷っていた。だが、一人だけ、牛尾だけはこの一週間迷っていなかった。聞き込みを一緒にしていた伊野も、それだけは感じた。しかし、伊野が尋ねても、牛尾は何も答えなかった。
 それから、二週間が経ってしまった。月日が過ぎて、事件の要員も半分に縮小された。時間の経過は、過去の情報を得にくくする。それが伊野にとって、応える事だった。
 伊野のねずみの地図は、何度も書き直してはゴミの山に一部になっていた。
 そして、ある日の一日も過ぎようとしていた。伊野の今日の一日は、ゴミ増加に貢献しただけだった。
「伊野さん。」
隣にいた牛尾が声をかけた。
「僕は用事があるので先に上がります。」
「そうか。ご苦労様。」
「お疲れ様です。」
牛尾は荷物を片手に部屋を出て行った。伊野はペンを放りだして、大きくのけ反った。

(続)