年齢問わず、日本人は「ありがとう」を多用する国民なのではないかと思う。


私は子供英会話講師をしており、時々営業活動のため、モールなどにいる子供達に風船などをあげることがあるのだが、まだ言葉がまともに話せない1歳、2歳の子供でも、風船をあげた時には、親に「ありがとうは?!」と言われ、頭をこくんと下げて「あぁーとぅ」と言ってくれる。
子供によっては気分が乗らず「あぁーーとぅー」を言わず親が何度も「ありがとうは?○○ちゃん、お姉さんにありがとうは?」ってな感じで私は「あぁーーとぅー」待ちをするのである。私は親になったことがないが、日本の大半の親はこんなに小さいときから「人に何かしてもらえば、感謝する」ということを教育するのである。



昨日の日記に電車で中学生の子にあって、席を譲ろうとしたことに対し、何度も丁寧にお礼を言ってきてくれた話を書いたが、インドでも全く同じシチュエーションがあったことを思い出した。


それは多分2001年か2003年にインドを訪れた時だと思うが、どこのバスに乗車したかは定かではない。けれど長距離を移動していて、バスを乗り継ぎ乗り継ぎで目的地に向かっていた最中だ。


中には鶏が十何匹入ってる籠や、子供一人入れそうなくらいの大きさの米俵のようなものを持ち込む人がいたり、それはそれはローカルバス上等!!てなくらい気合の入ったローカルバスであった。


その中で私と旅友Kちゃんは席に座ることができた。Kちゃんは窓際、私は通路側である。鶏や米袋がごった返している中、バックパックを下ろすスペースもなく、バックパックを背負いながら、ほぼ90度の角度で座っていた。私はどこでも寝られるタイプで、普段であれば、窓のサンに頭をがんがん打ちつけながらも爆睡できるのだが、その時は自由に体を曲げられないため、非常に疲れているものの起きていた。バスが走って間もなく40代くらいの男性が乗ってきた。この人も米俵や、あと何か布団のようなものや色々なものを背負っている。私の座席に手を置き、支えるようにして立っていた。


自分よりはるかに大きな荷物を背負っている。けれど私も大きなバックパックを背負っていた。
私のすぐ隣に立ってこっちを見ているので、何だかいたたまれない気持ちになった。
このまま知らないふりして座り続けるのは、私が精神的につらい。声をかけてみよう。
多分向こうも私が外国人だし女の子だし、こーんな荷物を抱えてるんだから、「席をどうぞ」と申し出たところで、断わられる可能性が高い。



「よかったらどうぞ」
私はあと何時間このバスに揺られるのかを計算していなかった。申し出を断られる可能性にかけていたからだ。


「・・・」
頭をかくかくと2、3度揺らし、無言のまま席についた。


無言だけれど、当たり前の権利のようにズンと座る男。頭かくかく揺らすというのは、インドではOKのサインなのだが、何だか腑に落ちない。

>"私が外国人&女の子&荷物が多い"というのを考慮して、座席の申し出を断るという展開を想像してた私。全くの予想外の事態となった。

予想外の事態の上、全く感謝をされないなんて・・・こんな理不尽なことがあるか?!


でもでも、この男が案外早く下車する可能性もあるし、途中で次はあなたが座りなさいと席交代制を提案する可能性だってある。もう少し頑張るのだ、あたしの足よーーー



1時間近く立っただろうか・・・そろそろ席交代の時間じゃないかしら、と思い男をチラチラ見るが、こちらを見る気もなく、じっと前を座っている。
Kちゃんが何回か「席かわろかー」と申し出てくれた。けどKちゃんに代わってもらう義理はない、私が勝手に男に席を譲ったのだから。ここは私の妙なプライドの意地。見栄を張ってプルプルする足に鞭を打った。


ってかこのやりとり、男は見てて何か思わんのかーー!!言葉がわからなくてもどういう状況か察知つくやろがぃ!空気読まんかいぃーーっ(怒)

席を替わって2時間近く経過しただろうか、男は無言のまま下車した。

何か言うことないんかーいっ

怒りも通り越して疲労感MAXの私は席について、インド人たちには決して席を譲るまいと思ったのは言うまでもない。


多分お礼をそこで言ってもらえたら、席の譲り甲斐があるってものだ。乗車中に沸々と湧いてた怒りも下車する際にありがとうの一つでも言ってもらえたり、笑顔をくれたら、怒りも収まったと思う。

インド人は「ありがとう」や「すみません」を言う文化がないと、インド人の友達から聞いた。人は助け合って当然だから、そういう挨拶は不要だそうだ。なので親しい友達にお礼や謝罪をするのは特によくない。私もインド人の友達に「ノーサンキュー、ノーソーリー」と言われたことがあった。
インドでもありがとうの意「シュークリヤーやダンニャワード」という言葉があるが、実際インドの旅で聞いたことは1度もなく死語になっている。



その話を聞いた時はインド人はすごく寛容だなと思い感銘を受けたが、実際にお礼を言われない場面に遭遇すると全く納得がいかない日本育ちの私であった。挨拶が人間関係を良好にする潤滑油だと考える日本人、挨拶が距離を感じさせるというインド人、どちらが正しいわけではないけれど、席譲ってもらって当然という顔をしていた男も、席を譲って当然という立場に立つこともあるのなら、私の思いは少しでも報われるのである。