不思議な体験をした時の話です。

よかったらお付き合いください。

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僕が某居酒屋さんでアルバイトをしていた時の話なんですけどね、

そこの居酒屋さんというのが、駅近くの7階建てくらいの大きいビルの、たしか4階と5階かな、2フロアで営業していたんですね。

下の階にあたる4階が入口になっていて、受付とレジもあり、通常の営業で使うカウンターやオープン席がずらっと並んでいるんです。
それで、上の階にあたる5階が、1フロア丸々広い座敷になっていて、
仕切りもない見渡せるような造りだったので、こちらは団体のお客さんの時なんかに使うんですね。
それで、その一番奥にカラオケ用の個室があったんです。

オフィス街だからっていうのもあったのか、年末年始の新忘年会シーズンみたいな時期を除けば、普段の平日なんてだいたい下のフロアだけで営業を回していたので、僕らアルバイトは、休憩の時には上の階の座敷にドテーッと寝転がったり、そのまま仮眠をとったりしてたんですね。
それで、下のフロアが予定外に忙しくなった時には誰かが呼びに来たりして、仮眠の途中でも起こされ、休憩を切り上げて寝ぼけまなこで働きに降りて行っていたのを覚えています。

これが夏になると、そんな1フロア丸々の広い座敷じゃエアコン効くのも遅いってんで、手っ取り早いのが、奥のカラオケ個室でエアコンをガンガンにすることなんですね。
特に僕は人よりガンガンにするタイプなので、まぁいつもカラオケ個室で休憩をとっていました。

それで、あとから聞いた話なんですが、このカラオケ個室というのが実は、「出る」とアルバイトや社員さんの間でも有名だったんですね。
個室内には外に面した窓がついているのですが、ベランダもない5階の窓だというのに、閉店の時に戸締まりをしっかり確認したにも関わらず、次の日に出勤してくると窓が開いているということが何度もあったらしいんですね。

まぁ、僕はそれを知らなかったので気にもならず、毎回のごとく使っていました。

そんな夏の夜の休憩中なんですけどね、

その日もカラオケ個室でエアコンをガンガンにして、椅子の上に寝転がって携帯電話をいじっていたんですね。

すると、個室の入り口扉には上の方に小窓がついているのですが、誰か男の人の鼻から上が見えて、その目がコチラを見下ろしていたんです。
下が忙しくなったから誰か呼びに来たんだろうなぁと思っていたら、

僕と目が合うとスッと後ろに下がったようでしたので、「あっ、すみません。下、降りましょうか?」と

扉を開けると、

そこには誰もいなかったんですね。

見渡しやすい座敷だというのに、個室から、5階フロアの入口まで広がる座敷の、どこにも誰も見当たらないんです。

え、、  なにこれ気持ち悪い。

と思った時に、後ろでなんか嫌な感じがしたので振り返ると。

窓が開いていたんですね。

エアコンをつけているから明らかに閉めたはずの、窓が開いていたんです。

うわっ!と思うと、

その開いた窓の下のふちから、

鼻から上だけを出して、さっきの男の人がコッチを見ていたんです。

また目が合うとスッと下がったようですが、

ベランダもない5階で、どこに下がったんだか。

気持ちの悪い体験をしました。

下のフロアですぐさまその話を他のアルバイトにしたところ、その時に、あそこの個室は「出る」と有名なんだ。と教えてもらいました。

僕は思いました。

先に教えてといてよ。

それ以後、その個室では休憩をとりませんでした。

その居酒屋さんは、今も営業しています。