東京オリンピック・パラリンピックにおいては、お台場海浜公園の周辺が、トライアスロンの会場になっていますが、大腸菌などが安全基準を上回る日があることが大きな問題になっています。
去年の7月から9月に水質検査を行ったところ、基準値を下回ったのは26日中6日しかなかったそうです。
特に大雨のあとは汚染がひどく、国際トライアスロン連合が定める基準値の21倍になった日もあるそうです。
日本は、高度成長期に都市部の下水を整備しましたが、汚水処理と雨水による浸水の問題を同時に、かつ安く解決するために、汚水と雨水とをひとつの下水道管で集めて下水処理場まで送る合流式という方法が幅広く採用されました(東京都では8割の下水が合流式です)。
この下水道の整備により、東京湾に流れ込む河川の水質は大幅に向上しましたが、当時採用した合流式という方法が、今になって大きな問題になっているのです。
日本では最近、ゲリラ豪雨と呼ばれるような局地的な大雨が降ることがありますが、そうなると下水管に流れ込む下水の量が普段の70倍にもなるため、下水道及び下水処理場の能力をはるかに上回ってしまうのです。
システムが処理できない下水は、そのまま河川や海に直接流し込む設計になっています。
つまり、東京都では、ゲリラ豪雨があるたびに、大量の汚水が雨水と一緒に処理されずに東京湾に流れ込む仕組みになっているのです。
これが台場海浜公園周辺の水質がしばしば安全基準を上回ってしまう理由なのです。
本来ならば、汚水だけを下水管で下水処理場に送り、雨水は別の管で河川や海に送る「分流式下水道」システムに切り替えるべきなのですが、住宅密集地に新たな下水管を設置する場所はないし、個々の建物の設計まで変更する必要があるため、コスト面でも時間面でも全く現実的ではないのです。
そこで東京都としては、会場の周りに水中スクリーン(ポリエステル製のカーテン)を設置して東京湾に流れ込んだ汚染水が入り込まないようにするという応急措置でなんとか乗り切ろうとしています。
しかし、たとえ水中スクリーンを設置しようと、潮の満ち引きに応じて水中スクリーンの中の水位も変わることを考えれば、効果は限定的です。
東京都は、去年、テストのためにお台場海浜公園の一部に水中スクリーンを設置したところ、多少の効果はあったそうです。
ちなみに、この時に設置した水中スクリーンの長さは180メートルで、設置コストは約一億円かかったそうです(トライアスロンで泳ぐ距離は4キロ)。
つまり、この問題は今になって発覚した問題ではなく、以前から東京都は把握していたし、IOCからも改善を求められていた問題なのです。
今回の五輪テスト大会は、水中スクリーンの効果を測る意味もあったのですが、選手たちから「トイレ臭い」という不名誉なコメントをもらってしまい、大会関係者たちは困惑していることでしょう。
水中スクリーン設置後の水質検査の結果はまだ発表されていませんが、結果次第では IOC からさらなる改善を求められることになります。
さらなる改善と言われても、ゲリラ豪雨のたびに汚水が東京湾に流れ込む状況をオリンピックまでに変えることはどう考えても不可能なので(莫大なコストと時間がかかり、現実的ではありません)、結局は水中スクリーンのような中途半端な方法に頼るしかなく、(大腸菌の量を)IOCから要求されている基準値以下に抑えられるかどうかは「天氣次第」という情けない状況になってしまっているのが現状です。
<転載終わり>
「このような状況を打開するために大量の牡蠣(カキ)を使った浄化作戦が平成19年に行われるも、設置された牡蠣は1年以内に全て壊滅。
カキによる浄化は成功した事例が世界中に多数あり、カキがここまで短時間で壊滅するのは異常だと言えるでしょう。」
東京湾の汚水の事は、かなり前から問題視されていたようですが、まだ有効な手立てがない状態です。
五輪を迎える東京湾は死にかけている
羽田で漁を続ける亀石幸弘さんは、「都民や東京の企業はもっと東京湾に関心を持ってほしい」と訴える。
東京湾に糞尿を垂れ流しにしたのは行政の責任だが、住民がそれを知らないことは問題の解決を遠ざける。
本当にトライアスロンの選手たちを東京湾で泳がせられるのか。
日本最大の空港である羽田の周辺の海で何が起きているのか。まずは無関心からの脱却が必要だ。
森さん「東京23区は下水路と雨水路を分けていないので、特に大雨の時には湾に糞尿が流れ込む仕組み。上から見ても明らかに黄色っぽい水の帯が漂っているのが分かります。お台場の浜で子どもを海に入れている家族連れもいますが、絶対お勧めしません。 」
<抜粋終わり>
海はこれまでたくさんの物を浄化してきてくれました。
だからと言って、原発の汚染水や工場廃液、汚水など何でもかんでも垂れ流しにして良いわけがありません。
人間は愚かでした。
先のことも考えられないで、その場しのぎだったのです。
我が地元でも、製紙工場の廃液を海に垂れ流ししていたためにヘドロを作りました。
今回の東京湾の問題も、元はと言えば安価で早く設置できるからと「合流式」の下水処理が採用された結果です。
後のことが見えていなかったのです。
最初から、手を抜かずに最善の方法が採られていれば、後で大変な思いをせずに済んだのです。
最初が肝心だと学びました。
最近では、水質浄化の様々な手法が出てきています。
全国から手を差し伸べて、東京湾をきれいにする方法をみんなで一緒に考えなければならないと感じます。
そのためには、まずはこの問題を多くの人が知ること。
オリンピックに風評があってはならないとばかりに、メディアではあまり取り上げられていませんが、臭いものに蓋をしてしまうのではなく、日本国民全体で「海」を意識していく事が必要だと感じます。
海は世界に繋がっており、日本だけの問題ではないのですから。
地球を汚してばかりの人類をどうかお許しください。