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環学連通信

各地の生物多様性に関心のある若者が中心となり環境保全学生連帯会議が発足しました。
日本中の水辺の再生を目指し日々活動中!



3/1の九州河川協力団体連絡会議に参加しました。

長年活動されてある九州各地の団体と知り合えたことをいかし、今後の活動に繋げていきたいです。
こんにちは。環学連江戸川支部です。ここでは、江戸川や利根運河周辺に住む生き物の調査や、環境調査・改善などを目標に活動をしています。
 
今回は、利根運河から取水している田んぼの用水路で起きた"魚の大量死"について少し書かせていただこうと思います。
 
利根運河は、1890年にできた、利根川と江戸川を結ぶ人工河川です。

作られた当時は船の航行などがあったそうですが、今は使われておりません。
 

人工河川にしては、護岸されていない場所があったりと、生物が比較的住みやすい環境にはなっているのですが、昔、工場から流れ出た工業排水で事故(地域のお年寄りの方から聞いた話です)が起こったりした関係で、このあたりに住んでいる方々はあまり利根運河に興味を持っていないようです。
準絶滅危惧種のジュズカケハゼや、絶滅危惧Ⅱ類のミナミメダカとかもいるんですけどね…^^;
 
 
さて、利根運河の紹介はここまでにしておき、本題に入りましょう。
 
利根運河の水は、田んぼにも使われています。
田んぼに水を供給する用水路は、生物にとって越冬場所となることがあります。タナゴがとりたかった私は、2/20、ガサガサ用の網を持って用水路へと向かいました。

用水路へ水を引いてくる水門は、冬の間は閉めるようで、夏に来た時より水位がかなり下がっていました。水が残っているところが少ないと、ポイントも絞りやすいと考えた私は、ウキウキ気分でポイントを散策…すると、とんでもない光景に出合いました。
 



 
「臭い!!」
第一印象は、激臭でした。夏によくタナゴをとっていた場所に着いた瞬間、ものすごい腐臭を感じました。
嫌な予感がしながらも、持ってきたタモ網を水の中に入れると…




「やはりか…」
 
死んだ魚が大量に入りました。
ナマズや、フナの未成魚、ドジョウやタナゴ(同定できない程腐っていました)が一回すくっただけで10匹単位で網に入りました。どうやら彼らが腐臭の原因だったようです。
 
直ぐに保健所へ連絡しようと考えましたが、採取した時間が19時であったため、保健所への電話は諦め、翌日の朝一で電話しようと思いました。
 
大量の死んだ魚を見た瞬間、昔読んだレイチェル・カーソンの『沈黙の春』を思い出し、このままだと自分の身も危ないと感じた私は、すぐさま家に帰り、シャワーを浴びました。





 
シャワーを浴び終えた私は、もしかしたら農薬か何かの影響で自分も死んでしまうのではないかとビクビクしながら、保健所の人へ伝える内容を整理していました。
 
・利根運河の近くの用水路で魚が死んでいる。
・夏の時点でその場所では、ヤリタナゴやジュズカケハゼといった希少な生物も確認されていた。
・大量の死体の中に、ヤリタナゴと思われる死体も混ざっていた。
・冬の間は水門を閉めるため、利根運河から毒素が流れ出したとは考えにくい。
・近くに工場なddd←ここで寝落ちしました(笑)
 
 


 ~翌日~
電話受付が開始される時間に保健所へ電話。すると、事態を深刻だと受け止めてくださった保健所の役員さんがその日のうちに現場へ来てくださりました。

 
死体や現場の撮影、その後、パックテストにて水質調査も行ってくださりました。自分もパックテストを行おうと思ったのですが、パックテストのキットって高いんですよね…笑
 
自力ではなかなかできない調査までしていただき、本当に助かりました。保健所さんありがとうございました。
 
結果…
 
問題なし!!
(データの詳細の公表などは、データの独り歩きを懸念して、厳禁とされているので、詳しい結果については割愛させていただきます。)
 
えぇ…∑(゚Д゚;) えっ
 
そんなはずがない…だってこんなにも多くの魚が死んでるんだぞ…
 
でも、パックテストの結果がそうならば、そういうことなのでしょう。受け入れざるを得ません。
保健所さんにお礼を言い、お別れした後、すごくもやもやしていたので、ツイッターにて意見を募集してみました。
 
すると、釣り好きの吉永さんから…
 

何ですと?!ターンオーバー??
 
ターンオーバーとは、水温が一気に冷やされることにより、上層で冷やされた水が沈み、低層にある悪い水がかき回されることなのですが

〇で囲ったところに注目していただくとわかるように、17日に一気に気温が上昇した後、18日、19日と気温が冷え込みました。最高気温で比較すると、17日と18日の気温の差は6度もあります。(Yahoo! 天気予報より)
 
現場は、田んぼ用の用水路でしたので、底に堆積していた微量の農薬などが、ターンオーバーによって水中に攪乱され、生物の大量死を招いたと結びつけることもできます。
 
ということで、今のところ、江戸川支部ではターンオーバー説が最有力候補として挙げられています。(といっても、江戸川支部には私しかいないんですけどね(笑))
 
しかし、ターンオーバー説を証明するのは容易ではありません。吉永さんが教えてくださった、広島城の例などを参考にして、どの様に証明するかが今後の課題です。
 
魚の謎の大量死。今後これが収束するのか、拡大するのかは、私にはわかりません。しかし、事態は刻一刻を争います。私は、現状の回復を祈りつつ、自分にできることを精一杯頑張ろうと思います。
 
長くなりましたが、以上とさせていただきます。
 
環境保全学生連合 江戸川支部
 
 
~追記~
記事を書いている途中にも一度現場へ行きましたので、その時に撮った写真と、簡単な報告を書こうかと思います。


魚が大量死した現場で撮影された、トウキョウダルマガエルです。左足の一部が壊死しています。
トウキョウダルマガエルは、東京都と千葉県では絶滅危惧Ⅰ類に登録されているカエルなのだとか…


こちらは、得体のしれない粉です。
ピンク色というのが、なんとも毒々しい感じを放っていますが、前回来た時にはなかったので、魚の大量死と因果関係があるのかは不明です。
 
どうも、有明海担当の小宮です。この度2月17日~20日まで、お隣の大韓民国にお邪魔していました。





唐突な韓国遠征でしたが、事の発端はこの“オオシャミセンガイ”からでした。この見慣れない生き物は有明海に生息する巨大なシャミセンガイの仲間です。シャミセンガイというのは、アサリやハマグリなどの一般的な二枚貝の仲間ではなく腕足動物という独特な生き物です。



ちなみに、同じシャミセンガイの仲間のミドリシャミセンガイは有明海でメカジャと呼ばれ、食用にされています。


そして、このオオシャミセンガイはミドリシャミセンガイを上回るレア物です。私はこのオオシャミセンガイをかれこれ2年ほど探しているのですが、全く見つかりません。

それもそのはず、福岡県レッドデータブックによると1980年以降4個しか見つかっていないそうなのです。

オオシャミセンガイの文献を調べているうちに、とある資料に行き着きました。






この資料によると、韓国南西部の干潟にオオシャミセンガイがいるらしいのです!

ということで、以前お世話になった全南大學校  水産海洋大學 海洋技術學部の尹先生にさっそくメールを出してみま した。

Lingula adams(オオシャミセンガイ)に対する資料は見つける事が出来ませんでした。」

Σ( ̄□ ̄!)


「変わりに”Lingula unguis(개맛)”と”Lingula anatina(큰개맛)”に対して資料はありました。形態的には”Lingula unguis”とよく似た感じがありますが、私もこれに関しては専門ではありません」

※尹先生はプランクトンの専門家
よく分かりませんが、どうやらオオシャミセンガイという名前の生き物は韓国の文献にはいないが、似てる生き物はいるらしいのです。

ということで、とりあえず行ってみることにしました。

「現場のことは隣にある木浦大学の底生生の先生にお願いしております。現場で色んなことを決定しても出来るようであります。
此方は結構寒いですので準備を願います。

目的にする生物を探すことは難しいとの話もありますが、行って見ます。では、楽に来て下さい。」





<オオシャミセンガイ探し>



ということで、話が始まった2週間後の2月17日、全南大学校にいました。

釜山から麗水へ。ここで尹先生と合流し、18日木浦へ向かいます。







というわけで翌日、木浦に来ました。
木浦大学校でHyun-Sig Lim先生に合流しました。



それでは、さっそく干潟に行きましょう!







......広い、広過ぎる!
今日は小潮だと聞いていましたが、小潮でこれ程引くとは......。大潮の際は川の澪筋を残して内湾全部が干潟になるそうです。

ちなみに、氷点下の暴風が吹き荒れています。





では、さっそく干潟に入ってみましょう。







澪筋にそって進んでいくそうです。







この程度の泥質の干潟です。







3歩目で半身沈む有明海よりは良心的ですね(笑)









最初に見つけたのはハイガイ。日本では激減してしまい、有明海の一部くらいでしか見ることが出来ないかいなんだとか。







続いて、シオマネキも出てきました。冬眠中起こしてしまって申し訳ない(汗)
他にもゴカイやイソメの仲間、チゴガニ(ハラグクレチゴガニ?)、アゲマキの殻など色々出てきます。

とくに、アゲマキは有明海でほぼ絶滅状態なので嬉しい発見です!





見慣れない光景。
どうやらゴカイやカニが、地下の赤土粘土を掘り返してこうなったようです。やけに硬いです。







.........見つからない!









それもそのはず、広大な干潟でこの人数ではどうしようもありません。しかも夏ならまだしも、生き物が深く潜ってしまう冬は難しいようです。








というわけで、私も先生もヘトヘトになるまでやって今回は断念しました。

先生曰く「いるにはいるけど、少なくなかなか見つからない。とくに冬は厳しい」とのこと。

ダメ元でここまでやってきましたが、いざ採れないと悔しいものです。Hyun-Sig Lim先生も、調査の時に採れたら連絡してくれるそうです。

また、暖かくなったらリベンジに来なければ!夏には無数のムツゴロウやシオマネキが見れるとか。
今は潰えてしまった有明海伝統漁「アゲマキ釣り」を試すのもありかもしれません!









<韓国の干潟事情>

韓国の干潟は広大です。




韓国西部にはこんな干潟が延々と広がっているそうです。場所によっては干満差が9mを超えるとか。

生息する生物相も、有明海でお馴染みのムツゴロウやシオマネキ、タイラギやサルボウガイ、そしてエツ(チョウセンエツ)までいます。

大陸系の生態系を色濃く残す有明海ですが、ここに来てみると正しくそれを実感出来ます。





スンチョンの干潟です。
ムツゴロウの巣穴らしきものが無数に空いています。以前、長崎大学の先生がここでムツゴロウの研究をしたのだとか。






足元に目をやれば、どこか見覚えのある貝殻。有明海で生物採取をしてきた私からすると、とても親近感がわいてきます。



有明海との最大の相違点は、これらの自然が残っているというところでしょうか。



有明海では、現在多くの干潟が失われ、生態系は崩れつつあります。



諫早干拓事業の際には、約一億個体もの国内最大級にして、残り少ないハイガイの個体群が絶滅に追い込まれました。
それだけでなく、諫早調整池内で作られた汚水は海に放水され続け、周囲に悪影響を及ぼしています。

そして今日も諫早干拓による損失は顧みられることがなく、矢部川最後の塩性湿地、そしてヤベガワモチの希少な生息地に船着場建設の話が上がっています。

日本の湿地帯に住む生き物たちは、いま絶滅の危機に晒されています。







さて、一方で韓国の干潟はどうでしょうか?

スンチョンの干潟も、かつては埋め立てて工業地帯にする話が上がっていたそうです。しかし環境保全と観光地化を掲げ、干潟を守ったそうです。





そして、市がこのエビ養殖池すら買い上げ干潟に戻す動きがあるそうです。

本当に信じられませんよね。干潟を埋め立て森林を切り開きメガソーラーの設置を進める私たちの国とは大違いです。

尹先生は「埋立地を掘り返して干潟に戻す話もある。馬鹿な話だ(最初から埋めなければよかった)」と仰っていましたが、天然記念物の生息地を埋立ようとしている現状を見ると羨ましい限りでした。



環境保全が注目され始めた今日、日本でも生物多様性国家戦略が規定され、有明海再生に向けた取り組みもようやく始まろうとしています。

私たちの有明海も、かつてのように、そしてこの干潟のように命溢れる環境に蘇ってくれることを期待します。







<市場見学>
やはり、海外に行った時に生き物好きに欠かせないのが市場の見学です。面白い生き物を沢山みることができます。





ベトナムの市場
コイ目の魚を中心に、何故か南米のコロソマまで売っていました。



ケニアの市場。
ハイギョやナマズの仲間、ビクトリア湖の外来種ナイルパーチなど様々な魚が見られます。







ということで、3ヶ所ほど韓国の市場を見て回りました。



韓国ではお馴染みのユムシ。下は赤貝(サルボウ)のようです。このサルボウガイはどうやらポピュラーな食材らしく、多くの市場に沢山売っていました。





こちらは近縁のハイガイ。殻に入る溝の数が違います。






大きなサルボウガイ。クマサルボウでしょうか。日本ではクマサルボウもほとんどいなくなってしまったそうです。










タコ。アシナガダコでしょうか。




ヒラメと一緒にサメも売っています。












こちらはどうやら、深い海の魚達のようです。







日本でもお馴染みのアンコウ








日本ではあまり馴染みのないクサウオなど、こちらもとても面白い!













さて、奥に写るのはタイラギです。
貝柱を食用にする大型の二枚貝です。最近養殖技術が確立されたことがニュースになりました。

ちなみに有明海では、重要な漁獲物でしたが減少が続き五年連続休漁が続いています。




筑後中部魚市場(福岡県柳川市)に並ぶタイラギの貝柱




これ全て韓国産でした。






こちらはスズキ。しかし、日本のスズキとは違い背中に斑点があります。これはタイリクスズキ特有の特徴です。ちなみに有明海には有明海型スズキと呼ばれるスズキとタイリクスズキの中間種も住んでいます。




韓国の魚市場は、並んでいる魚はどれも日本で見覚えのあるものが多かったです。とくに沿岸の浅瀬に住む生き物はほとんど有明海や瀬戸内海と同じでした。

氷河期に大陸と繋がり、その後別れ別々の進化をたどった日本(とくに有明海)と朝鮮半島・中国沿岸の歴史が、市場に並ぶ魚達からも見えてくるのは面白いですね。

皆様も海外に行ってみた際は、市場に並ぶ海産物のルーツを考えながら見るのも面白いかもしれません。