用水路で起こった魚の大量死について | 環学連通信

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各地の生物多様性に関心のある若者が中心となり環境保全学生連帯会議が発足しました。
日本中の水辺の再生を目指し日々活動中!

こんにちは。環学連江戸川支部です。ここでは、江戸川や利根運河周辺に住む生き物の調査や、環境調査・改善などを目標に活動をしています。
 
今回は、利根運河から取水している田んぼの用水路で起きた"魚の大量死"について少し書かせていただこうと思います。
 
利根運河は、1890年にできた、利根川と江戸川を結ぶ人工河川です。

作られた当時は船の航行などがあったそうですが、今は使われておりません。
 

人工河川にしては、護岸されていない場所があったりと、生物が比較的住みやすい環境にはなっているのですが、昔、工場から流れ出た工業排水で事故(地域のお年寄りの方から聞いた話です)が起こったりした関係で、このあたりに住んでいる方々はあまり利根運河に興味を持っていないようです。
準絶滅危惧種のジュズカケハゼや、絶滅危惧Ⅱ類のミナミメダカとかもいるんですけどね…^^;
 
 
さて、利根運河の紹介はここまでにしておき、本題に入りましょう。
 
利根運河の水は、田んぼにも使われています。
田んぼに水を供給する用水路は、生物にとって越冬場所となることがあります。タナゴがとりたかった私は、2/20、ガサガサ用の網を持って用水路へと向かいました。

用水路へ水を引いてくる水門は、冬の間は閉めるようで、夏に来た時より水位がかなり下がっていました。水が残っているところが少ないと、ポイントも絞りやすいと考えた私は、ウキウキ気分でポイントを散策…すると、とんでもない光景に出合いました。
 



 
「臭い!!」
第一印象は、激臭でした。夏によくタナゴをとっていた場所に着いた瞬間、ものすごい腐臭を感じました。
嫌な予感がしながらも、持ってきたタモ網を水の中に入れると…




「やはりか…」
 
死んだ魚が大量に入りました。
ナマズや、フナの未成魚、ドジョウやタナゴ(同定できない程腐っていました)が一回すくっただけで10匹単位で網に入りました。どうやら彼らが腐臭の原因だったようです。
 
直ぐに保健所へ連絡しようと考えましたが、採取した時間が19時であったため、保健所への電話は諦め、翌日の朝一で電話しようと思いました。
 
大量の死んだ魚を見た瞬間、昔読んだレイチェル・カーソンの『沈黙の春』を思い出し、このままだと自分の身も危ないと感じた私は、すぐさま家に帰り、シャワーを浴びました。





 
シャワーを浴び終えた私は、もしかしたら農薬か何かの影響で自分も死んでしまうのではないかとビクビクしながら、保健所の人へ伝える内容を整理していました。
 
・利根運河の近くの用水路で魚が死んでいる。
・夏の時点でその場所では、ヤリタナゴやジュズカケハゼといった希少な生物も確認されていた。
・大量の死体の中に、ヤリタナゴと思われる死体も混ざっていた。
・冬の間は水門を閉めるため、利根運河から毒素が流れ出したとは考えにくい。
・近くに工場なddd←ここで寝落ちしました(笑)
 
 


 ~翌日~
電話受付が開始される時間に保健所へ電話。すると、事態を深刻だと受け止めてくださった保健所の役員さんがその日のうちに現場へ来てくださりました。

 
死体や現場の撮影、その後、パックテストにて水質調査も行ってくださりました。自分もパックテストを行おうと思ったのですが、パックテストのキットって高いんですよね…笑
 
自力ではなかなかできない調査までしていただき、本当に助かりました。保健所さんありがとうございました。
 
結果…
 
問題なし!!
(データの詳細の公表などは、データの独り歩きを懸念して、厳禁とされているので、詳しい結果については割愛させていただきます。)
 
えぇ…∑(゚Д゚;) えっ
 
そんなはずがない…だってこんなにも多くの魚が死んでるんだぞ…
 
でも、パックテストの結果がそうならば、そういうことなのでしょう。受け入れざるを得ません。
保健所さんにお礼を言い、お別れした後、すごくもやもやしていたので、ツイッターにて意見を募集してみました。
 
すると、釣り好きの吉永さんから…
 

何ですと?!ターンオーバー??
 
ターンオーバーとは、水温が一気に冷やされることにより、上層で冷やされた水が沈み、低層にある悪い水がかき回されることなのですが

〇で囲ったところに注目していただくとわかるように、17日に一気に気温が上昇した後、18日、19日と気温が冷え込みました。最高気温で比較すると、17日と18日の気温の差は6度もあります。(Yahoo! 天気予報より)
 
現場は、田んぼ用の用水路でしたので、底に堆積していた微量の農薬などが、ターンオーバーによって水中に攪乱され、生物の大量死を招いたと結びつけることもできます。
 
ということで、今のところ、江戸川支部ではターンオーバー説が最有力候補として挙げられています。(といっても、江戸川支部には私しかいないんですけどね(笑))
 
しかし、ターンオーバー説を証明するのは容易ではありません。吉永さんが教えてくださった、広島城の例などを参考にして、どの様に証明するかが今後の課題です。
 
魚の謎の大量死。今後これが収束するのか、拡大するのかは、私にはわかりません。しかし、事態は刻一刻を争います。私は、現状の回復を祈りつつ、自分にできることを精一杯頑張ろうと思います。
 
長くなりましたが、以上とさせていただきます。
 
環境保全学生連合 江戸川支部
 
 
~追記~
記事を書いている途中にも一度現場へ行きましたので、その時に撮った写真と、簡単な報告を書こうかと思います。


魚が大量死した現場で撮影された、トウキョウダルマガエルです。左足の一部が壊死しています。
トウキョウダルマガエルは、東京都と千葉県では絶滅危惧Ⅰ類に登録されているカエルなのだとか…


こちらは、得体のしれない粉です。
ピンク色というのが、なんとも毒々しい感じを放っていますが、前回来た時にはなかったので、魚の大量死と因果関係があるのかは不明です。