お久しぶりです!
前回和訳したテイラー・スウィフトの Is It Over Now?ですが、この曲、単に訳すだけでは勿体ない。というのも、ここに描かれている恋の終わりの心情というものにかなり共感を惹かれるフレーズがあって…。(もちろん私はハリースタイルズと何かあったわけではないのですが。無念。)
今回は、そんな味わい深い英語のフレーズを解説するとともに、なんやかんや語っていけたら良いなと思います!
それでは早速。
まず最初に、歌詞にあたって知らなかった単語が"wilt"。
歌いだしに"Once the flight had flown With the wilt of the rose(しおれたバラと一緒に 飛行機は飛び立ってしまって)"と出てきます。
単語の意味を辞書で調べると、「しぼむ。萎れる。」といった意味が出てくるのですが、それだけでは拾いきれないような気がするこの単語。和訳するときにもモヤっとしたのです。
そこで"a wilting rose("wilt"している薔薇)"と画像検索してみると、出てきたのがこんな画像↓
これこれ!この感じ!
しおれる、萎む、もそうなんですが、それだけじゃなくて花びらが色褪せて、水分を失って、ちょっとでも触れたらパラパラっと散ってしまいそうなこの感じが、"wilt"には込められていると思うのです。飛行機が飛び立ってしまった空のちょっとくすんだ青を想像した後に、この wilting roses が思い浮かぶと、一節の歌詞で青と赤の対比が出て綺麗ですよね…テイラーの歌詞はやっぱり天才。
歌いだしで随分語ってしまいましたが、続いてうおおっとなったのが"Let's fast forward to 300 takeout coffees later(コーヒーを300回テイクアウトした先まで早送りしてみよう)"という歌詞。
それまでの曲調が落ち着いている分、このフレーズから一気に躍動感が出ますよね。それこそグーッと時間を早送りしているような。
コーヒーを300回テイクアウトするのにはどれくらい時間がかかるでしょう?
コーヒー好きの私ですが、家で飲むことが多いので、テイクアウトすることはあまりなく、300回なら数年単位かな…?ニューヨーカーのテイラーならもっと頻度は上がるのでしょう。
人間関係において、恋愛関係では特にだと思うのですが、「この先どうなるのかな?」と思うとき、変化が起こるまでのタイムリミットってなかなか決められないと思うんです。自分と恋人はいつ別れるのかな、とか、どのくらい待てばあの人は振り向いてくれるのかな、とか…不確実だけれど人と人との関係次第で何かあるかも、やっぱりないかも、みたいな変化って待つだけキリがないというか。だからこそ、1年!とか、半年!ではなく、"300 takeout coffees later(コーヒーを300回テイクアウトした後)"とか、2サビの"300 awkward blind dates later(知らない人と300回気まずいデートをした後)"みたいな、やや不確実な時間軸を設定することが救いになるのかなあ…などと考えてしまいました。
最後に語りたいのが、タイトルにもなっているフレーズ、"was it over when she laid down on your couch?(あの子があなたのソファに寝転がったときに終わったのかな?)"、"Was it over when he unbuttoned my blouse?(彼がわたしのブラウスのボタンを外した時に終わったのかな?)"。
敢えてこの曲がテイラーからハリーに向けて書かれたのではないかという説を無視して語りたいのですが、この2フレーズで唸らされたのが、英語の持つ三人称のスマートさです。登場人物は4人いて、まず"I"=「私」と"You"=「(おそらく過去の恋人であった)あなた」。それから、"She"=「元恋人のソファに今寝転がれるような関係の女性」と"He"=「『私』のブラウスを脱がせた男性」。
なんとなく想像できるのは、昔恋愛関係にあった男女が、お互いの近況を知りあっていて、お互い今は別の誰かがいるのも知っている。それでも、これはもう相手との恋が終わっているのかな…と考えてしまう。みたいな状況。
この複雑な四角関係をテンポよく描き出せるのは英語の三人称の持つ力なのかもしれません。こんな感じの歌詞がおいしい曲といえば、チャーリー・プースの"We don't talk anymore"を思い出します。
(ちなみに、日本語でもこんな感じの「登場人物多!」という歌詞があって、私のお気に入りはKANというアーティストの「けやき通りが色づくころ」という曲です。もしかしたらお好きな方もおられるかもですので是非…)
そんなこんなで、音楽やら英単語やら色々含めて語ってきた"Was It Over Now?"。
『1989』に新しく収録された曲の中でもかなり好きでものすごく頻繁に聴いており、当分聴き続けることになりそうです。