なりすます能力 | 悪態のプログラマ

悪態のプログラマ

とある職業プログラマの悪態を綴る。
入門書が書かないプログラミングのための知識、会社の研修が教えないシステム開発業界の裏話は、新人プログラマや、これからプログラマを目指す人たちへのメッセージでもある。

ずいぶん昔のことである。私はA社のプロジェクトに、「協力会社」の SE として参加していた。そのA社の人に、

「あなたの会社ではどんな新入社員にどんな研修をされているのですか?」

と聞かれたことがある。私はちょっと焦って、

「さぁ。中途採用だったもので、研修は受けていないんですよ」

と答えた。

しかし、それは嘘だった。なぜそんな嘘をつくかって?

そこでは、私は表向きは協力会社であるB社の社員ということになっていたが、実はそうではなかった。自分の会社からまずB社に派遣され、そこから更にA社に送られていたのだ。当然、B社の新人研修の内容など全く知らなかった。


SE やプログラマが、他社に派遣(出向)されることはよくあることである。酷いときには、多重派遣が行われることもあるようだ(※1)。

私のケースでは、A社のプロジェクトに参加してはいたが、B社の管理下で動いていたので、多重派遣ではなかったはずだ。にもかかわらず、B社から「社員のふり」をするように言われていた(※2)。何だか知らないが、大人の事情があったのだろうか。

モノ作りにしか興味のなかった私は、そんなことはどうでもいいと思っていた。しかし、おかげで、初対面の人に会う度に「名刺を切らしておりまして」などと言って恐縮する羽目になってしまったのである(※3)。


冒頭の会話を聞いていたB社の若手社員は、

「中途採用だなんて、よく咄嗟に答えられましたねぇ」

などと感心していた。

技術者にも、そんな会話能力が必要なことがあるという話である。まぁ、嘘が上手いからといって、褒められたものではないのだが。





※1
多重派遣は違法だが、この業界では当り前に行われているようだ(参考リンク: IT業界のタブー「偽装請負」に手を染めてませんか(ITpro) )。技術者の不勉強が問題だという指摘もあるが、他業種の「労働者」はちゃんと勉強しているのだろうか?

※2
法律的なことはよく分からないが、A社が「B社」という社名に対して金を払ったのだとすれば、詐欺罪になるかもしれない。もっとも、B社の社員以上の仕事をすれば、訴えられる筋合いはないとも思うが・・・。いずれにせよ、気持ちのいいものではないので、こういうくだらない指示はやめて欲しい。

※3
聞くところによれば、偽の名刺を持たせる会社もあるようだ。



■関連記事
プログラマの出向事情





平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学
M.スコット ペック M.Scott Peck 森 英明
草思社
売り上げランキング: 17,872
おすすめ度の平均: 4
4 怠惰とナルシシズムからの脱却⇒個人の成長
5 国家としての悪に対する方策が「徴兵制」。驚くが納得。
2 内容にどうしても首肯できない部分あり