「ところでお悩み相談は?」
「あります、ありますー。今仕事のことで悩んでて誰にも話せないんですよー」
仕事に一途で真面目な彼女。
しかし、それが周りとの不和を起こす原因になっていることにはまだ気づいていなかった。
熱意が呼ぶ、悪意
彼女はウミ、26才。医療福祉系の仕事に務めている。
障害をもった子供と接するのが主な仕事内容だ。
新卒から4年、この仕事に従事している。
「今心療内科に通ってて。夜寝れないから薬をもらってます」
「体が重いし、頭に薄いフィルターがかかってるみたいに思考が妨げられる」
「軽快に話してるからそんな感じはしなかったけど、そうなんだ」
「今日まで5連休で実家に帰ってたの。だからちょっと良くなってるかも」
「いつ頃から通院してるか聞いてもいい?」
「1年くらい前からです。きっかけになる出来事があって」
①お局
採用されてから2年、ウミの職場で業務改善アンケートがあった。
職場の掲示板に、業務内容や人に対する不満等を箇条書きにして文書を貼り付けるというやり方だ。
人に向けての苦言は匿名だったが、それはウミだと特定できる内容だった。
「匿名だったけどわたしのことだってすぐに分かった。わたしの仕事、その職場でも専門的で2人しかいないから」
「書いた人も分かってる。わたしと先輩に対して嫌なことをする人」
「その人に対しては誰も何も言えない。周りの人も励ましてはくれるけど助けてはくれなかった」
ある日、子供が遊んでいるのを見守っていたとき、お局さんが子供の様子を見に来た。
お局さんがウミに子供の面倒をみている人は誰か聞いてきたので、わたしが見ていますと答えたそうだ。
誰かが見守りをしていないと障害を持っている子供を安全に遊ばせておくことは出来ないからだ。
お局さんはそのときは何も言わずにその場から立ち去ったらしい。しかし、すぐに引き返してきて「誰も面倒を見てないからベッドに戻りましょうね」と遊びに夢中だった子供を無理やりベッドに戻してしまった。
その言葉は、お前には子供を見る資格なんてないと伝えてきているように思えたらしい。
「子供はギャン泣きするし、わたしが居ることも分かっているのに。そういった出来事が続いたんです」
「それで薬をもらわないと眠れないほどに精神を追い詰められたのか」
「その人が居るときは今ほどじゃなかったんです」
「居るときは?」
「嫌な人(お局)は辞めて今は居ないんです」
②後輩
「もう職場にお局は居ないのか。なら、今ウミを悩ましてるのは?」
「2年前に中途で入ってきた後輩です」
後輩は25才で、ウミは先輩として仕事を教えることになったそうだ
「その後輩が全く言うことを聞いてくれなくて。わたしじゃなくて他の人に仕事を教えてもらいにいったり無視したり」
「仕事教えるどころじゃないなー」
「そうなの。それでその子、大きな失敗をしたんです。分かりきったことだった。迷惑が掛かるのは子供たちなのに。周りの人にも現状を話したけど、あの子はそういう子だからって取り合ってくれなくて」
「ウミだけにそんな態度を後輩はとってくるの?」
「わたしともうひとりの先輩にだけ。わたしたちは医療系の中でも地位が低いから言うことを聞いてくれないんだと思う。他の人にはうまいこと立ち回ってるみたい」
「そっか。ウミだけに対してじゃないのか」
「うん。先輩としか分かり合えないからお互い励ましあってた」
「分かり合える人がいるのは心強いね」
「そうですね。でも今は状況が変わっていて」
③派閥
「先輩は今、後輩の子と仲良くしてるんです」
「無視してくる後輩と?」
「そうです。身の振り方を変えたんでしょうね。前のように先輩と話そうとしても聞いてくれなくなりました」
ウミの働く職場は派閥があるそうだ。最近になって職場のトップが替わって派閥に変化があった。そのとき先輩は後輩と同じ派閥に属すことに決めたとのこと。
「今までは同じ目にあっていたから励ましてくれてただけで自分がやられなくなってからは「あなたが悪いんじゃない?」って言ってくるようになりました」
見事な手のひら返し。先輩の心はぽっきり折れてしまったのかもしれない。
「前は派閥があってもまとまってたんですけど」
ウミの仕事は専門的だ。
その仕事ぶりを先輩や上司は評価していると言ってくれるそうだが、新人が入ってきたときにはウミじゃなくて専門外の人に仕事を教えさせる。本当は評価なんてしてくれていない。
ウミは自分の存在意義を見失ってしまいそうだと話していた。
「今では後輩の子と話すだけで動悸がするんです」
「仕事をやめようかなって最近思って。でもそれだとこんな環境に置いていく子供達が可哀想で見捨てられなくて」
「ウミからは仕事に対する熱意を感じるよ」
「ありますよ~、熱意。仕事が好きなんで」
打開策
まず、問題が3つある。
後輩が報連相をしない
周りを巻きこめない
コミュニケーションが苦手
後輩はウミを見下しているから言うことを聞いてくれない。
周りに協力を求める方法はあるけど、
女性3人目 カナの悩み『パワハラ!お局への対抗手段!?』でも書いたように難しい。自分達を争いに巻き込んでほしくないだろうからね。
そして、ウミは自分の仕事のやり方が絶対だと考えている節がある。
ウミの理想は全ての人間が自分と同じだけの熱意を持って仕事に向き合ってくれることだそう。
だけど、それを人に求めるのは難しいだろう。
周りからすれば、自分たちの仕事に文句をつけてきて、ウミのやり方を押し付けてくるようにしかみえないからだ。
こうなると敵対するのは自然な流れなんだろう。
相手のやり方を認めたうえで、自分のやり方の良さを伝える。
このやり方を身につけてもらうためには、まずは自分自身を変えていく必要がある。
そして、アーマンは”その方法”を知っている。
ウミに『✨彼氏、彼女理論✨』を伝えた。
あまり人の話を聞かない彼女だが、最後まで悩みを聞いたからか耳を傾けてくれた。
「悩みは解決した?」
「解決は……しなかったけど。そんな考え方があるんだって見方が変わりました」
悩みの解決には至らなかったけど、糸口くらいにはなったんじゃないかな。
人を認めることが、自分を認めてもらうことに繋がるのだ。
根気は……かなり必要だけどね!