いのち動的平衡館 「うつろいゆく いのち」 ~大阪関西万博 ㉜

   

 

   大阪関西万博会場の真ん中に位置する8っの「シグネチャーパビリオン」は8人のプロデューサーが監修するパビリオンだ。

  全体で「いのちの輝きプロジェクト」と呼ばれ、これらのパビリオンを「シグネチャーパビリオン」と命名されている。

  そのひとつ、生物学者・福岡伸一さんがプロデュースした「いのち動的平衡館」は、細胞が分解と合成を繰り返し、バランスを保つことで生命を維持する「動的平衡」がキーワードのパビリオン。

  卵子が受精し細胞分裂が始まるところ「エンブリオ」を表現した建物となっている。

 

 

 

    建物内には柱がなく、外周を囲む鉄骨リングからワイヤーやエアチューブを張り巡らせ、膜屋根を支えている。

 細胞同士がバランスを取り合っているような自律的な空間で、生命が誕生する仕組みを具現化したという。

 

 

 

  メインは 約32万個の発光ダイオード(LED)を立体的に配した「クラスラ」。

 その明滅で生み出す光のショーで、32億年にわたる生命進化史が体験できる。

 

 

  いのちはうつろいゆく流れの中にある。

私たち生命の身体は、つねに動的な状態にあり、物質、エネルギー、情報が絶えず流れ込み、一瞬、流れの中に浮かぶ淀みのような秩序を作り出し、すぐにまた流れ去る。
秩序は、宇宙の大原則である「エントロピー増大の法則」に従って、無秩序になる方向にしか動かない。しかし、生命だけは、この法則に抗って、自らを率先して分解し、同時に作り直すことによって、なんとか秩序を維持しようとしている。これが生命のもっとも重要な本質、動的平衡である。フランスの哲学者アンリ・ベルクソンが言った「坂を登ろうとする“努力”」である。

とはいえ、動的平衡も、宇宙の大原則に抗えども、これに打ち克つことはできない。
生命はやがて秩序を失い、大きな自然の循環の中に戻る。つまり個体の生命には有限性がある。有限があるがゆえに生命は輝く。そして有限ではあるものの、無限の生命連鎖に連なる。

                                                                                                                                                                                                             福岡 伸一