「未知への飛行」(1964年)
原題:Fail-Safe
米コロムビア 白黒作品



 

監督
シドニー・ルメット(40歳)


出演
ヘンリー・フォンダ(59歳)
ウォルター・マッソー(44歳)
フリッツ・ウィーヴァー(38歳)
ダン・オハーリー(45歳)
ソレル・ブック(34歳)

ラリー・ハグマン(33歳)
フランク・オヴァートン
ウィリアム・ハンセン
エド・バインズ
ほか


○初めて見たのは1995年8月14日。当時、★が3つプラス1/2と高評価していました。またも白黒映画。

(●部分の文が1995年当時の文、……以下が現時点の文)
 

●冷戦中らしい、米ソ間の緊張感が極度に表現された映画。「博士の異常な愛情」「駆逐艦ベッドフォード作戦」「渚にて」などと並んで、冷戦批判・軍備拡張批判のメッセージ性が強い映画だ。監督がシドニー・ルメットなだけに、心理描写や圧迫感が見事。
……この「博士の異常な愛情」はスタンリー・キューブリックの名作で、ピーター・セラーズが奇怪な3役を演じた名作なのですが、正式タイトルは「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」と長い。「博士―」はブラックコメディなのですが(両方ともモノクロ映画)、内容が「未知への飛行」と似通っているため、訴訟問題になっております(和解で解決)。シドニー・ルメットは初監督作の「十二人の怒れる男」が超感動ドラマでした。



●ペンタゴン(国防総省)のコンピューター誤作動により、哨戒警戒中の爆撃機編隊に間違った司令、「モスクワ侵攻」が伝えられる。この指令に絶対服従する爆撃隊乗務員がよく訓練が行き届いているため、断固決行する。これをめぐって米国大統領(ヘンリー・フォンダ)、国防長官とスタッフ、ペンタゴン司令部(フランク・オヴァートン、フリッツ・ウィーヴァー)の三元中継構成で、この危機を解決するための、息詰まるドラマが展開する。(以下、ネタバレなので割愛)ニューヨークの街角のショットが積み重ね、衝撃のものすごさを表現するラストシーン。
……一部では有名な作品なので、ネットで見れば、ほとんどネタバレ情報だと思いますが、いちおう割愛します。とっても緊張感がたかまる心理劇で、「三元中継」と書いていますが、三カ所を中心に話を進めていきます。ヘンリー・フォンダが大統領を演じて、責任をどう取るか、その心のうちを見事に表現しています。このヘンリー・フォンダがシドニー・ルメットと組んだ作品が、さきほどの「十二人の怒れる男」です。



●ソ連の首相や将軍たちは画面には一切登場せず、声だけ。これと、緊迫した大統領と通訳官(ラリー・ハグマン)のクローズアップが異常な効果を上げる。この映画、

……ソ連首脳部は電話口の声だけという演出。どんな顔をして言っているのか、観るほうもいろいろ想像してしまい、こわさ抜群です。なんでも見せてしまわなくても、それ以上の効果を上げることができることを示しています。

 

●導入部分はまったく違うタッチ。闘牛の悪夢シーンが白っぽく焼けたフィルムのように現われ、つづいて、「フェイル・セイフ」のランプが点く。悪夢を見ていたのは将軍。この家庭の朝のシーン(けだるい)、フリッツ・ウィーヴァー(デビュー作)大佐が、母親のアル中に悩まされる部分、極度の反共主義の政治学者ウォルター・マッソーが女性をひっぱたくなど。これが、UFO(未確認飛行物体)がコンピューターの大画面上に出現するところから、がぜんタッチは変わる。
……UFOのことが出てきますが、このUFOは通常の意味の「未確認飛行物体」で、本作品には宇宙人はまったく出てきません。あと女優さんもたぶんほとんど出てこないような気がしました。