うちのオリジナル部下ズ。
色々設定があった気がします。



「我らが司令閣下というには、美化が過ぎないかなぁ?」
その声に応えず、キャンバスを前にして油臭くなっている精鋭部隊長は、その長身に似合わぬ繊細さで一枚の絵に熱心に筆を入れている。
軍人辞めて画家になればいいんじゃないかと思う位の出来栄えだった。
清楚な白服に滑らかな肌を持つどこか神々しい肖像画、その黒曜石の瞳と艶やかな黒髪が印象深く見える。
男性である筈の総司令は、絵の中で静かな微笑みを浮かべている。
筆を入れ続け、一生完成させない絵だ。
「抱きしめて、印象変わったかな?」
先日、無礼講の飲み会があり、その場で酒の勢いに任せて悪ノリしたのがこの男だった。
「え。飲み過ぎで忘れてる? もしかして」
そこで漸くこのエルヴァーン族の男は口を開いた。
「ヒューム族で小さくて可愛い。同じヒュームだけど、貴様は可愛くはないな」
「あっそう。キモいしいいよ、それで。
まぁ~、司令もあれで背高い方だよ。ガダラル閣下の方がチビだろ」
本人がここにいたら、ファイガが飛ぶだろうことは間違い無さそうだと、自分で言いながら肩を竦める。
「閣下も可愛いからオッケーです」
「はぁー。相変わらず君の性的嗜好は謎だわ」
「……っ、違うからっ! 司令は女神なだけで、邪な感情なんか持つものかっ」
嘘つきめ。どの口で言うのか、と少し睨んでみる。
あの晩、ガダラルが割って入らなければ、そのまま肌を暴き押し倒しそうだった癖に。
普段だったらきっとお手討ちもの。
殺されても仕方がない程の無礼。
全く触れるにも命がけの恋をしてどうなるというのか。
同じ釜の飯食う戦友としては、もっと意味のある恋愛をしてくれと思ってしまう。
「あぁ残念。司令にはもう触れないだろうね」
元々身分が違う。
師団長ガダラルですら、本当は手の届かない場所の人物だ。
皇国のラズファードは、宰相にして聖皇の摂政。云わば国体そのものともいえる。そんな存在。
掛けられた言葉に男の筆を持つ手が止まり、泣きそうな眼で自分が描いている人を見詰めている。
全く、ホント馬鹿だよ。
せめて架空の話の中でだけでも結ばれてみるかね?
と、彼は思いながら、ふと鬼の形相となった羅刹を思い出していた。
あぁ、馬鹿は他にもいる。恐らく物語の中であっても、羅刹は許しはしないだろう。
本当に馬鹿ばかりだわ、こいつらと彼は普段胡散臭い笑みを浮かべる口元で嘆息した。