ネタメモ

うちのオリジナル部下にエルヴァーン暗黒がいました。
エルヴァーンって外見がエルフ、中身ドワーフなんて言われてましたっけ。確か。


エルヴァーンの長身に見下ろされるのにはいい気がしないが、こう気を使われて屈まれるのはガダの癪に障る。
それももじもじと気色悪いのはいい加減ばぁっと燃やしたくなるものだ。
「あの、閣下、その」
「何だ」
「総司令は男、ですよね」
何だそりゃ、と盛大に突っ込みたくなるのをぐっと堪えるのも上司の務めか。
「女じゃねぇのは確かだな」
「ですよ、ね。総司令」
がっくり肩を落とす部下は何を諦めきれないのか、溜め息を重ねた。
どうやら、切り込み隊長は何か重症らしい。
「本人に聞いてみるか? 無礼者と」
斬り捨てられても知らんぞとの言葉は言えなかった。
「はいっ。はいっ! お願いします」
と、部下がこちらの手を握り締め、ぶんぶんとちぎれんばかりに振ってきたからだ。
馬鹿力め、とガダは呟く。エルヴァーンはガダのようなヒュームより腕力の強い人種だ。
ふと、想像力とは悪戯なもので、この馬鹿力に取り押さえられた誰かを思い浮かべてしまった。
あり得ない話だ。
彼には護衛がつく。
皇国の恐怖、不滅隊の目を逃れて彼に触れる事は出来ない。
総司令である前に彼は宰相であり、皇太子だった男だ。
とにかく、部下は喜び勇んで東都の司令部に振られる尻尾が見えそうな様子で付いて来たのに、結局、総司令を前に一言も喋らなかった。
絶対に不滅隊士に不敬罪だと詰め寄られると覚悟していただけにガダは拍子抜けだった。
見捨てて、話のネタにしてやろうと思ったのに、と舌打ちする。
部下は呆けたようだった。
「閣下」
「何だよ」
今更話せなかったと泣き言か? とガダは思っていたが、そうではないらしい。
「性別なんて、どうでも良かったんですね。あの方は天使様、いいえ僕の女神様ですから」
「お、おいッ、壊れるんじゃねぇ!」
しっかりしろっ、傷は浅いぞ! と、やや混乱気味にガダはエルヴァーンの高い肩を掴んで揺すったが、部下は夢の世界に行ったままだった。
「あぁ、こうしてはいられない。女神様の御姿を記録しないとっ。閣下失礼します!」
そう目を輝かせて部下は走りさった。
生きる張り合いがあるのはいい事だ、と思いつつ、総司令たるラズに謝りたくなったガダであった。

女神ラズが部下に押し倒される夢に、目が覚めてうわぁとなるガダがいたりするのです。