真夏の妄想② [水曜日担当:池村] | 教育研究所ARCS - 独断的教育論 -

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教育現場のプロ3人衆による本音トーク


さて、前回のテーマを引き継いで‘妄想思考実験’をしたいと思います。

設定としては、スマホにアプリがあります。このアプリは「生涯あと何回○○出来るか」を教えてくれるものです。

例えば、「あと何回海外旅行に行けるか」とか「あと何回運命の人と出会えるか」などを入力すると、その回数を教えてくれるものです。

これを知る(知ってしまう)ことによって私の行動はどうなるのか?
対話風にやってみたいと思います。

登場人物A:アプリ使用者・既婚者 登場人物B:聞き手・Aの友人、独身
B:なんだよ、こんな深夜に重大な話って? A:今日わざわざお前を訪ねたのは、実はこんなアプリを手に入れてしまって…カクカクシカジカ。 B:フム、なるほどね…って、そんなアホなこと信じてるの?SFの世界じゃあるまいし。 A:いやあ、俺も最初は単なる冗談だと思ったんだけど、妙にリアルなんだ。例えば「東京ドーム野球観戦」とか「競技場でサッカー観戦」とか入力すると0回と表示されるんだ。 B:まあ、確かにお前は実際に足を運んでのスポーツ観戦はしないよな。正しい。でもそれだけじゃあそのアプリが本物っていうことにはならないだろ。 A:ところがさ、俺が嫁さんとよく行く近所の飲み屋あるだろ。そこにあと何回行くか見てみたんだ。すると、「あと1回」と出た。笑ったよ、だって月に最低でも2回は行ってるし、これからも通うつもりだったからな。 B:じゃあやっぱりガセのアプリだな。 A:いや、昨日店の前を通ったら閉店の張り紙がしてあったよ。店主が体調不良になって、これを機に田舎へ帰るらしい。3日前に行ったのが結局最後になったわけだ。 B:…なんだか気持ち悪いな。で、そのアプリに信憑性があるとして、重大な話ってのは?
A:そうそう、それなんだけど…俺も気味悪くなったんだが、こういうのって怖いもの見たさっていうのがあるじゃない。そこで、入力してみたんだよ。 B:何を? A:あと何回「歯磨きするか」って。 B:げ…そういう規則正しくやってることって、ちょっと…。 A:お察しの通り。寿命がわかっちまうよな。俺の場合、朝晩の2回だ。昼は仕事場で面倒だから磨かない。休日でもその習慣できっかり一日に2回。これはずっと変わらない。 B:で、何回だったんだ? A:それがなんと21回。これが相談内容だ。つまりあと11日で俺は死ぬということらしい。ちなみにあと何回風呂に入るかというのは6回だった。まあほぼつじつまは合っている。 B:まさか!見るからに健康なお前がいきなり死ぬなんて…。 A:俺もそう思う。だから思わぬ事故に遭遇するんじゃないかって思うんだ。なにせその日はさ、ちょうど出張から帰ってくる日なんだよ。夜遅くに帰宅する予定だから夜の歯磨きをせず帰宅途中に死ぬと考えれば回数的にも納得がいく。 B:まあ待て。じゃあこうしたらどうだ。少なくとも今日からしばらく歯磨きは一日1回にする。そうやってタイミングずらせばその日に事故死ってのはほぼなくなるはずだろ。いまスマホないのか?そう決意して入力してみろよ。 A:じゃあやってみようか。えーと、歯磨き…と。11回だ。歯磨きの回数は変わったけど、運命は変わってないよ。きりがないな、決意した瞬間に回数は変わるわけか。 B:ホントに嫌なアプリだな。でもあれだ、少なくとも未来ってのは、ある程度変えられるってことだろ。少なくとも歯磨きする回数に限って言えば。 A:そうだな。でも死を回避できなければ意味がない B:未来ってのはいろんな解釈があるらしいぞ。例えば多世界解釈とかさ、あまり現代物理学のこととかはわからんけど、この瞬間にいろんな未来の可能性が重なっているって話だ。どうなるかは確率の問題でさ。だから今は11日後に死ぬっていう確率が高くても、行動によっては変えられるかもしれないじゃないか A:まあ、少なくとも事故は避けられるか。例えば出張を今回は他の人に行ってもらって、家で引きこもるとかな。 B:そうかもしれん。だが、家にトラックが突っ込んできたりとか、予想だにしない事故に遭う運命かもしれんぞ。むしろその選択こそが命取り…とかな。 A:それは大丈夫だ。嫁さんとずっと一緒にいればいい。嫁さんについても調べてみたんだが、歯磨き回数4万5千回ぐらいだった。あと50年は無事だ(笑)。 B:ちょ…、そのアプリって他人のことも分かるのか。 A:分かる。フルネーム入れればいいだけだから。お前のも見てやろうか。 B:いやいや、いいよ…なんか怖いし。 A:さて、もう一度歯磨き回数を入力してみるか…。お、341回に増えてるぞ B:マジか?その出張をパスするという決意で変わったのか!でもその回数だと結局半年ぐらいしかもたないぞ…。 A:確かにそうだ。今回の事故は回避したとしても、また半年後にピンチじゃあ困るな。…だが妙だな。今となってはかなり事故というものに気を付ける意識になっているのに、そうそう簡単にまた事故の運命がめぐってくるか?いよいよこれは事故ではなく、殺されることも考慮に入れなきゃならんかもな B:なにもそこまで考えなくても…。第一誰かに恨みでも買ってるのか? A:そういう覚えはないけどさ、それでも運悪く殺されるって場合があるじゃない。 B:そんなこと滅多にないだろ。例えば通り魔や強盗にってこと? A:そういう可能性もあるけど、保険金狙いっていう線もある。 B:…それは、奥さんにやられるってこと? A:あるとしたらそうだね。免責期間が過ぎてるから、自殺でも俺にかかっている保険金はおりる。だから自殺に見せかけて…という可能性も。 B:ちょっとさあ、いくらなんでも自分の奥さん疑ってどうすんのさ。 A:ところが十分にありうるんだな。実はしばらく前から夫婦仲は冷え切っててね。ただうちの嫁は自分で手を汚すことはしないだろうな。実行するとしたら足がつかないように共犯者を使うと思う。まあ、もしそうだとしたら、俺は嫁の裏切りには何らかの形で報復の手立てを考えると思うよ。 B:…なんにしても用心するしかないな。ちなみに今もう一度歯磨き回数を入力してみてよ。 A:やってみよう。えーと…3万8千回だ。どうやら幾重にも重なった未来のうち、なんとかマシなものが選択されたようだ。 B:そうか。よかったじゃないか。俺は何の役にも立てなかったけど(笑)。 A:いや、十分助かったさ。聞いてもらってスッキリしたし。じゃあ長居してごめん、帰るわ。
 そう言ってAは帰っていった。まったく…アプリがどんな仕組みになっていたか知らないが、とにかく身震いした。即座に電話をかける。

B:もしもし?俺だけど。例の件、やっぱり降りるわ。絶対あいつ感づいてるから。なぜかわからんが出張の帰りを狙う作戦自体バレてる。お前、出張についてわざとらしく根掘り葉掘り訊いたんじゃないか?うん、うん、だからもしタイミングが悪かったら半年後の年末出張の時にしようっていう話、あれも見透かされた。ゾっとしたわ。やるならお前ひとりで勝手にやってくれ。俺は歯磨きできることに感謝して改心するよ。いや…こっちの話だ。もう連絡もしないと思う。じゃあな。
しばらくはAの嫁からしつこく電話がかかってきたのだが、何日かするとピタリとそれもなくなった。あの日以来Aとは疎遠になってしまったのだが、風の噂によればAは再婚し、豪華な家を購入して暮らしているらしい。


え~と、当初の趣旨とかなりズレてしまったのですが、書いているうちに夏だし微妙にブラックジョークが浮かんだので、それ風に書いてみました。

ここで私がいろいろ考えたのは、未来の一部がわかった時点で、もともと決まっていた未来は少なからず変わるだろうということです。
そんなこと言ったってそれ自体知りようがないっていうのは分かった上で、です。

もし知ることが出来る内容というのが自分の生死にかかわることで、この話のように何が原因かは分からず死期だけが示唆された場合、必死に原因を考えると思うんですね。

もしその死の原因がまったく見当がつかなくても、未来の一部を知ったという時点でもう何か違う未来になっているのではないか。少なくとも未来を知らない自分には出来ない思考が可能になるからです。

そういえば、ホントについ昨日のテレビで(林先生が出ている番組)、サイエンスライターの竹内薫さんが、タイムマシンについて真剣に考えている科学者は少なからずいて、過去の自分に接触できる可能性が低いことを計算で出した人がいる、なんていうことを言っていました。

過去にさかのぼることの可能性さえ完全には否定されていないのならば、未来(しかもかなりの確率で起こるであろう出来事を含む未来──例えば明日自分は学校に行く、など)に関してはいくらでも何とかなりそうな気がします。

で、いろいろ妄想した挙句の結論。
今の状態(世界)は、過去に正確に知っていたわけではないからこそ、目の前にある。ビッグバンの時に決まっていたと考えることも出来るけれど、ビッグバンの時に提示された無数の中から選びとったと考えることもできる。また、これから選びなおす選択肢が無数にあるとも考えられる。

だから未来を掴もうとする意志自体に意味はある。
ということでどうでしょうか?



■□■□■□■□■□ イベント情報 ■□■□■□■□■□

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