無限という言葉を聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?おそらく多くの人は無限大をイメージするでしょう。
果てしのない宇宙や時間のイメージ(実際には無限ではありませんが)を思い起こす言葉の響きがあります。ただし無限にはもう一つ「限られた範囲の無限」を考えることが出来ます。つまり小さい方の無限です。現代物理学ではモノの最小単位は‘素粒子’とされていて、それより小さいものは見つかっていません。
とはいえ、それより小さい「サイズの概念」を持つことはできますよね。そう考えると、無限に小さいサイズというものを想像することは出来るわけです。または、単にサイズの小ささだけでなく、どこまで「近づいているか」というギリギリ度を無限に考えることもできます。そして、数学の授業でこの話題になると、やはり議論になります
よく取り上げられる例として、「0.9999…と無限に9が続く数は1よりも小さいかどうか」というものがあります。生徒はたいてい「1よりちょっとだけ小さい」と考えます。理論上は0.9999…と1は寸分たがわず同じ大きさなのですが、彼らの気持ちもわかります。そこでこんな問いを投げかけてみます。
そうすると、皆口をそろえて「それは大丈夫」と言うのです。そこで追い打ちをかけます。
すると生徒たちは言葉に詰まるわけです。ここで「あ、そうか」という派閥と「いや、やっぱり同じじゃないよ」という派閥とに分かれて、授業は結論が出ぬまま終了となります。
と、まあ私の授業の中ではこのように結論を曖昧にして幕を下ろす場合があります。それは疑問を疑問のまま持ち帰ってもらい、家族で議論したり自分で調べたりする余地を残すためです。授業はその種まきの場であるのが理想だと思うのです。
何か不思議に思うこと、それのことが考えたり調べたりすること、つまり学ぶことにつながるはずです。ちなみにこの無限の概念は面白くて、式による実証も出来ます。先の例で x=0.999.... とします。さらにそれを10倍したものを縦に並べて書いてみます。
これを連立方程式の要領で下の式から上の式を引き算してみます。すると、右辺の小数点以下が全て消えて、9x=9 すなわち x=1 という結果が出てくるのです。
実はもっとバージョンアップした無限もあります。下の数は連分数というもので、下のようなものです。
こんな規則で永遠に続いていく分数です。実はこの数、ある特定の値を持っているのですが何かわかりますか?
といっても想像しにくいと思いますので、さっきと似た手順でこの数の正体を探っていきましょう。
まずこの数 x をとします。すると、枠で囲った部分はもとの x と同じ…と言いたいところですが、たった1ヶ所最初の整数が2になっているので、惜しくも x より 1 だけ大きい数です。でも、より 1 だけ大きいのならば、枠の部分を x + 1 と置き換えてしまえばよいのです。
というわけで、下のような方程式ができます。
本来、ような数は無理数といって、「分母と分子がともに整数であるような分数で表せない数」というのが定義です。なのに、分母に無限に足し算される分数を連ねていくと、逆に無理数になるというのが何とも不思議ですよね。
ちなみに小学生でも知っている無理数の代表格は「円周率(π)」です。この円周率は様々な近似値の求め方が知られていますが、ライプニッツという数学者が発見した「無限に分数を足したり引いたりする式」によって求めることもできるのです。
これがその式なのですが、あまりに単純明快なルールのため「ウソでしょ!?」と言いたくなるでしょう。しかしこれはしっかり証明されています。
無限って、恐ろしく奥が深くって恐ろしく不思議で美しい。もっといろいろ知りたくなりますね。