
のどかな風情の中房温泉。 しかし色々なお客様が集まるだけに、事件が起きる事も多々あるようでして。
チェックアウトの時間前に、もう一度露天を楽しんで行こうと『月見の湯』に入っていたところ、一人の男性客が後から来られました。 で、その方が掛け湯もせずに入られたので、その場にいた女性客が「掛け湯もせずに入るなんてマナー知らずね」と声に出されたところ、「私は他の風呂にも入ってて汚れてないから、掛け湯する必要は無いんだよ」と返されました。 そこで私が「あなたが他で風呂に入って来たかどうか、他の方は知らないのですから、誤解にせよ周りの方が不快にならないよう、形だけでも掛け湯をして入るのがマナーだと思いますよ」と注意しました。 その後、その男性は脱衣場の方を向いてずっと見ているので、女性客は湯から出るに出られず、私が楯になるような位置で浴槽際に立ち、着替えをさせてあげましたが、その際に女性客の言った「キモチ悪い奴」という言葉に切れたのか、私に対して「おい、あんた、昨日大湯の女性脱衣場に入りこんでたよなぁ。 マナーだ何だって言うけど、女湯の脱衣所に入り込むのはいいのかよ。 それは犯罪だろ?」と言ってきました。
前日チェックインした直後、まだ日があるうちに無人の浴槽と温泉分析表を撮影して回りましたから、確かに大湯にも行っています。 しかし当然ながら宿の管理者の方の案内無しに女湯や脱衣場に入る事は有り得ません。 その方にも「女性脱衣場に侵入した事は無いですよ」と説明するのですが、頑として譲らず「いや、うちの連れが見てるんだよ。 あんたが女湯に入って来てたって言ってるんだから間違い無い」と言い張ります。 私も気分を害してその場を去り、宿のフロントで今の一件をお話すると、その男性客も追って現われ、「この人は昨日女湯に入って来てたのに、いいんですか?」と訴えます。 その場では埒が明かず、私が侵入していたと言う証人を連れてきてくれと頼み、根拠も無く言われるなら警察に一緒に行きましょう、私は名誉棄損で訴えますから、と告げて、一旦チェックアウトの支度の為に部屋に戻りました。
大湯というのは本館にある浴場で、中房温泉では唯一男女別浴となっています。 本館の宿泊棟から大湯へは渡り廊下を渡るようになっており、廊下の突き当たりに女性と男性の脱衣所の扉が二つ並んであります。 私は無人の男性浴室(2階の露天と1階の内湯)を確認した後、脱衣場から出た廊下に掲示されている温泉分析表を見ていました。 心当たりが有るとすれば、その時に女性脱衣場の中から「ここは女湯ですよ」と言う声は聞いたのですが、私自身は廊下の壁を向いており、女湯も男湯も同じ所にあるわけですから、誰に向かって何の事を言っているのか、サッパリ分らなかったわけです。
30分ほどで、先ほど仲裁に入った宿の方が迎えに来られ、本館に場所を移して当事者同士でもう一度話し合いをするよう頼まれました。 相手の方の話では、昨日夕方、連れの奥様が大湯で入浴を終えて脱衣場に来てみると、脱衣場の扉が半開きになっていて、廊下の先の方に男性の姿が見えた。 ここは女湯ですよ、と声を掛けたが返事もせず立っているので、襲われるかもしれないと怖かった、という事でした。 夕食会場で私を見つけ、「あの人がさっき女性の脱衣場にいた人よ」と伝えたので、彼は私が脱衣場に侵入していたと思い込んでいたのでした。 単なる誤解ではありますが、これで出発が一時間近く遅くなってしまいました。
そのとき仲裁に入った宿の方は中房温泉のご主人で、和解した後に名物の水出しコーヒーを御馳走になりながら、宿の経営について話を伺いました。 混浴主体の営業をしているので、入浴マナーに関するトラブルは非常に多い。 うちの湯が濁り湯だったら、どんなに良かったか。 本当に、着色料入れちゃおうかと思った。(オイオイ) なかなか面白いご主人です。 敷地のはずれの露天湯は照明がほとんど無いため、日没後の脱衣場は真っ暗。 懐中電灯無しには見えないほどなので、着衣の間違いは日常茶飯事。 他人の下着や浴衣を間違えて着て行く高齢者や泥酔者がいて、下着泥棒騒ぎになり警察を呼ぶ事も珍しくないとか。 かと言って浴槽からは丸見えの脱衣場に照明を付けたら、ストリップのステージになっちゃいますからね。 やはり脱衣場と浴槽の間、それから脱衣場から浴槽に入る部分のエントリーに目隠しが無いと、いくらタオル巻きOKと言っても女性には利用し難い構造ですね。
温泉施設を営業するには、施設を新築あるいは改築する際に保健所から営業許可を取る必要があります。 しかし現在どの保健所も「混浴」の施設は許可しません。 したがって、新規の混浴温泉が増える事は無く、廃業や、浴場の改築をする毎にその数は減って行きます。 混浴温泉というのは、まさに絶滅危惧種なんです。 それだけに利用客がマナーを守り、施設側も設備を整えて、男女関係無く気持ちよく温泉が楽しめる、昔ながらの文化を継承したいですね。
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