はじめに

だいぶ久しぶりですが、やってみたら簡単で面白かったので共有します。

今回参考にさせていただいたのは金田さんの文献です。

 

 

参考にした文献

(1)金田明大2017「大変だったので仮想空間で伐採してみました」『文化財の壺』vol.5 文化財方法論研究会

 →注文可能

 

 

 

(2)金田明大2019「3次元技術等によるデジタル技術の導入」『デジタル技術による文化財情報の記録と利活用』 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所

 →ネット上で閲覧可能

 

 

こちらの金田さんの文献を見ていただければ、まるっと分かるんですが、要は「3Dデータを利用することで、森の中にある微地形の把握が簡単にできる」というものです。

下の2枚の画像は(2)(p.16)の文献から引用です。

 

図6を編集したものが図7ですが、古墳群のぽこぽこしたものがよくわかります。

最初これを見たとき、すごいけど、自分にはできなさそうだなと思ったものでした、が、今の私の手元には手持ちLiDARことiPhoneがあります。これはいけるのではないか、と思って試してみました。

 

 

実際にやってみる

詳しいやり方は(1)の文献に載っていますので、ぜひ入手されてください。

 

簡単に書くと、以下の通りです。

①iPhoneのLiDARとアプリを使って、木を含めながら地面を3Dスキャンする。※Metaschanアプリ使用

②スキャン後はクラウド(点群)データとして出力する。※ここではPLYで出力

③クラウドデータをPCに入れ、フリーソフトCloudCompareで読み込む

④クラウドデータを選択し、プラグイン>CSF Filterで処理をする

⑤こまかな調整をする

 

必要なもの

〇LiDAR搭載のiPhoneまたはiPad

〇3Dスキャンアプリ(Metascanなど)

〇PC(そんなにスペックが高くなくてもいい)

〇CloudCompare(無料)

 

 

 

①②は割愛します。

③CloudCompareにデータを読み込んだところです。

必ず必要なわけではありませんが、色情報はいらないので左下のプロパティから色を「なし」にしておきます。

 

続いて段彩をかけます。

 

 

これで、高さが色で分かるようになりました。

 

 

斜めから見て見ると、木の下部分がぴょこぴょこと出ていて地形が分かりにくくなっています。

ここから木の部分だけを除去していきます。

 

④CSF Filterを使う

 

ここは「Relief」のままで大丈夫です。

つづいて、タブを「advance」に切り替えます。

 

 

右に英語で説明があるので、それを読んでもらえば分かるかと思います。

参考として、Deeplで翻訳したものを貼っておきます。

 

アドバンストパラメーター命令

1. 布の解像度とは、地形を覆う布のグリッドサイズ(単位は点群の単位と同じ)を指します。布の解像度を大きくすると、より粗いDTMが得られます。

2. 2. Max iterations は、地形シミュレーションの最大反復回数を指します。ほとんどのシーンでは500回で十分です。

3. 3. Classification threshold は、点と地形の距離に基づいて、点群から地面と地面でない部分に分類するための閾値(単位は点群の単位と同じ)を指します。0.5がほとんどのシーンに適応される。

 

ひとまず、前掲の画像にあるパラメーターで処理してみます。

 

 

一見変わっていないように見えますが、左上に新しいデータができているのが分かります。

「ground points」が地面、「off-ground points」が木などです。

表示を切り替えて見ると、木が消えるはず…

 

 

あらら、ちょっと消えすぎてしまいました。

先ほどのadvanceの設定でcloth resolutionの値を小さくしてみると上手くいきました。

見比べてみてください。

 

 

 

山城でやってみた

古墳群でも効果はバツグンですが、きっと山城にも使えるはず!

というわけで、近くの山城でもやってみました。

(以下、画像がつづきます)

 

 

やりすぎたので、パラメーターを調整…

 

 

段彩をかけなおして…

 

 

上から見ると…

 

 

赤い部分は土塁、青い部分は空堀があるのですが、よく分かるようになっていますね。

 

 

おわりに

今回はお試しだったので、お城全体はできていませんが、お城を分割してスキャンして、後で3Dデータをつなげれば、全体の丸裸モデルができるはずです。もちろん古墳群も!

山城だと縄張り図という簡易見取り図を作成することもありますが、そちらと見比べて楽しむのもいいでしょう。

もしかしたら、新しい山城の遺構や古墳の発見につながるかもしれません。

何より手軽なのがいいですね!

 

iPhoneのLiDARを利用する人が増えてきた今、単純にスキャンするだけでない楽しみ方の一つになるのではないでしょうか?

 

ちなみにMetashapeでも点群の読み込みと高密度クラウドの分類(pro版)ができますが、そちらでもできるかも…。

あと効率重視のため今回はLiDARでやりましたが、フォトグラメトリで生成したモデルの点群でもできるはず。