「連合軍進駐にも度を失せぬ用意」

鳥取市では聯合国軍の進駐を予そうして一般市民の心構へに就て次の如く注いし、万一不祥事故発生の場合にも必ず大国民たるの自覚を失はぬよう強く要望してゐる

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聯合国軍の本県への進駐が行はれる場合、郡市方面へ進駐するが如きことは考へられない、必ず市部にあるものと予そうされるがこの場合政府当局の指示した事項をよく守り大国民たる心構へをもつて善処されたい。それにはあらかじめ次の事項をよく心得て万一の場合に不必要な動揺を生ぜぬやうちゆういしてほしい。

▲進駐前の心構へ

(一)聯合国軍の進駐は我が政府との緊密な折衝の結果一切平穏裡(に)行はれるもので暴行掠奪など万なきものと信ぜられるから徒らに周章狼狽せぬこと

(二)進駐地区の住民が勝手に移動すると混乱し却って治安上の妨害となり皇軍の秩序正しい撤退に支障を来すから特に沈着冷静に協力すること

軍輸送の為汽車やバスに一般住民は原則として乗車させぬこともあると思ふ、従つて通勤者はこの場合家庭にあつて支差へない、その他火事の都合で交通機関を利用したい人もこの際我慢してほしい、然し食糧生活必需物資の配給は支障を来さぬ様万全の措置をとつてゐるから安心されたい

(三)聯合軍進駐の後も従来通り我が警察憲兵が治安取締りに当るから決して心配はいらない

(四)住民は絶対に県警察憲兵を信頼して従来屡々あつた様な

 ○重慶軍が進駐するから恐ろしいことだ

 ○(娘?)の供出をさせるといふから奥地に避難させねばならん

 ○米を皆取りあげて仕舞ふといふから匿して置かぬと取られる

等荒唐なるデマに迷はず大国民の態度で冷静に職場を守り落着いて家事に精励して貰ひたい

(五)今後の成行については県情報の掲出或は町内会長部落会長を通じて住民に知らせるから総て当局の指示を守つて行ふことが大切である

▲進駐後の心構へ

(一)外国軍人に対して個人が直接接触することは努めて避けること、但し先方から求めて来た際はキ然たる態度で接すること、言葉が通せぬ為色々な摩さつや間違ひが起易いから各町内部落会などで万一の場合を考へて英語の話せるものを用意するも一策である

(二)治安維持は警察憲兵が当り外国軍隊が勝手に交通機関を押へることはないから決して動揺することなくまた濫りに住居を逃げ出す様なことはいけない

(三)如何なることがあつても腕力沙汰に訴えぬこと、また自分勝手に個々の談判をせず問題がおきたら直ぐに警察憲兵にとどけ出ること

(四)特に婦女子は日本婦人としての自覚をもって外国軍隊に隙を見せる様なことはいけない

(五)婦女子にみだらなせん情的なる服装をさせぬこと又人前で胸をあらはしたりすることは禁物である

(六)外国人が「ハロー」とか或は片言まじりの日本語で呼びかけても婦女子は相手にならずさけること