8位:朝日新聞の慰安婦検証。産経が自己正当化・責任転嫁と批判
宮台:あの、(朝日新聞が)検証した事自体は、良い事だと思いますが、その検証の中で表れているですね朝日新聞の、まぁ自己認識には、には違和感があります。なので、あのー、産経新聞のこの批判には、あのーかなり当たっている点が、僕はあるという風に思います。でね、まず、あのー、何度も繰り言ってる事だけれども、あのー、慰安婦。或いはですねまぁ従軍慰安婦に関する、えー国際的な枠組みは、あのー強制性があったかどうかなんですが、えその強制性は、その連行を誰がしたのかという事に関係なく、えーその場で働いている人間が、あの自由意思。を、妨害されていないか。えーつまり自由意思に基づかないで、えー、その売春をさせられていないか。という点にだけ、あるんですね。えーなので、これはもうこの場でも、ほんとに、10回ぐらい言ってきたと思いますけれども、あのーそれ以外の議論、えそのー連れて来たのが業者なのか、ね、つまり強制的に連れて来たのが業者なのか、軍なのか、或いは警察官なのかといったような事は、あのー国際的な議論には全くなっていないし、えー、その事について、その国内で、議論が起こっているというのは、非常に滑稽で、あのー、変なんです。そんな事は周りから見れば、どうでもいい事なんです。次に、しかしですね、この、軍がね、強制的に連行したかどうかというような論点を巡って、国内で、或いはその日韓でですね、グチャグチャ、そのー、どうでもいい枝葉末節な争いが生じてしまった、その根本的な原因は、朝日新聞による、その1992年の、そのーですねまぁ吉田清治証言というですね、捏造証言に、由来しているんですね。でー、確かに朝日新聞がここで言い訳している通りね、あのー本人の意に反する強制性はあったっていうのはそれは国際標準の言い方ですつまり、えーそこで、あのー慰安所で働いている人間達が、そこで働いてる事について必ずしも自由意思ではなかったし、或いは場合によって自由意思を阻害される事があった、という事。そうなんです。国際的にはそれが問題なんですけれども、そもそも、吉田清治証言、をもってですね92年にここで問題化した時には、「何、国がやっていたの?」みたいなね、そのーはっきり言うと"どうでもいい論点"、国が強制労、連行していたのかどうかという、"どうでもいい論点"に、問題を引きつけてしまったんですね。いいですか、どうでもいいというのは、国際的にそうした事は全く議論になっていないので、そこで言い訳して、日本軍が、日本の警察が、強制連行してわ、いた訳ではないなんていう風に、どこで、声高に主張しても、「はぁ?そんな事誰も言ってないんですけど」で終了なんですよね。分かります?つまりここにーまず国内と国外の大きなズレがある訳だけども、その大きなズレを作り出した原因は、朝日新聞のこの記事にある。ね。だからもう元々最初から国際標準の枠組みに基づいてね、あの、慰安所内の、えー慰安婦の働き方について、えーその強制性があったのかなかったのかという風な議論を、するべきだったんですね。ところがねぇこれがなかなか難しいんですよ。以前ですね、あのここであの、ラグヌスフィルシュフェルトの「戦争と性」っていうですね、本の、まぁ復刻版を、そのーまぁ僕が出して頂いて、長い解説を書いた話をしました。プレゼントもしましたけれどもね、あのー、まぁナポレオン戦争、に対する反省、以降、まぁ20世紀に入る頃から、えーヨーロッパの国々はね、まぁ、軍の、えー、性病蔓延、と、もう一つは、あのー暴力の蔓延、えーこれを、まぁ食い止める為に、えー政府が、えー、直接に慰安所を開設するという図式を、つまり軍がっていう事です。軍は政府の一部ですからね。えー奨励するようになるんですね。で、その理由は、徹底した管理売春を行った上で、えー女性の自由意思を尊重するという、管理売春×自由意思という図式なんです、でーそれによって、その性病や暴力も防げるし、えーその女性の、そのような人権、に対する侵害も防げるという、図式なんですね。ただこの場合、その管理する必要上ですね、あのー慰安所で働いている、慰安婦が、自由に出入りしてもいいという風には普通はならないんですよ。だってそうなってしまったらですね、そもそもその性病管理っていうですね重要な、その柱のうちの一つについての、管理ができなくなってしまう、んですね。という事から、あのー実は一定のですね、その外出、などについては制限されるのが当り前、という事で、えーそういう意味で言うとですね、その強、あの、いわゆる自由意思、の侵害っていう議論もですね、あの市民社会における自由意思の侵害と同じように議論する事ができないんですね、だからそういう意味で言えば、あのー一般の市民社会では、自由意思の侵害に当たるようなね、例えば外出禁止のような物があったとしても、直ちにそれをですね、あの強制性っていう風に言う事は難しい。そもそも慰安所に、おいて働くというのはそういう事なんだっていう事前の説明がね、どれだけあったのかという事だけがそこでは問われるという事に、なったりするんですね。ていうような、あのー、問題。つまり国際的に多くの人達が問題にしている、その問題の焦点についてだけ徹底して記事を書けばいいんですよ。どうでもいい事をなんで、書いちゃったんだろう。
強啓:だからね、もうここまで来るとそのどうでもいい事では済まされなくなって、もう日、日本と、韓国との、こうした外交問題までこじれてしまった、その原因の一つにもなってる訳でしょ?
宮台:だからさ、だからそこについてね、ていうかあのー朝日新聞が無責任だっていう産経新聞の言い方も、当たるんだけれども、実際にはその92年の朝日新聞、に続いてね、産経新聞を、含めた全ての新聞が、吉田清治証言を、その報じています。虚偽としてではなく、そうした証言があるという風に、やっぱり報じていますので、朝日新聞だけが前提を作った訳ではないという事も、まぁ言いますが、でもまぁそれもしかし、実はどうでもいい事で、ポイントはね、何が出てきたのか。つまり、えー吉田清治証言は、嘘だったんですね。嘘だったという事からですね、実は全てひっくり返して、あのー、まぁ従軍慰安婦は、え全てですね、金の為に自由意思でやっていたっていう風に、ひっくり返し、だからただの売春婦なんだ、或いはね、あのーまぁそういう、売春婦っていう言い方、よりももう少し、きついですね。
強啓:そういう組織であったと。
宮台:土別的な発言でですね、それを名指すっていう事をする、やっぱり日本の国内の政治家やね、やっぱりあのー論壇人がいたわけですね。でーそういう議論に対する反発が、えー韓国で、生じたという事であって、朝日新聞がきっかけを作ったという事について朝日新聞はもっと反省しなければならないが、朝日新聞が全ての、原因、この日韓関係のこじれの原因を作った訳ではないという事。これも非常に重要なんですね、ただ産経新聞も報じたじゃないかという事じゃなくて、えー要は極端な議論、吉田清治氏の証言が嘘だったから、ね、全てはただのですね、あのーその売女なんだ娼婦なんだみたいな言い方をする、そういう議論をブーストしたような、えー雑誌やメディアにも実は、非常に大きな責任があるんですよね。ただ、朝日新聞がですねその、まぁ最初の段階で、いきなり誤報からですね、問題を、引き金引いてしまったっていう事から、朝日新聞には物が言いにくくなってしまったんですね。
強啓:ただそのーどうなんでしょうか、これからーの、おーこの歴史認識なども触れてきている訳で、その、おー解消の為にもう一度これ検証し、し直そうという、例えば日韓の間で、検証し直すという事っていうのは、ありなんですか?
宮台:ありなんだけれども、その検証の態度が大事でね、あのーどっちが正しくてどっちが間違っているのかみたいな、まぁはっきり言うとつまらない二項図式ですね、どっちが白で黒かみたいな話、これだめなんですよ。あのね、僕がよく言う事だよね。あの、例えば、在日韓国朝鮮人の方々の、実は大半は、強制連行されたのではなくて、あのーまぁ済州島などを中心とする、まぁ差別される人達が多かったんだけど韓国・朝鮮半島でね、えー一旗揚げる為に、日本にやって来たんですよ。でもちろん当時、日本が朝鮮を占領支配していましたけれども、で、もちろんそういう背景がある事は百も承知だけれどもね、自発的に一旗揚げにやって来た人達が大半です。もちろんですね、あのー軍の工場、三菱といろんな所でですね、あのー民間の工場も含めて強制連行による労働があった事は既に判っていますけれども、ね、それは知ってるよ、でもそれと、あのー「在日韓国朝鮮人の全てが、強制連行された」の如き誤解とは何の関係もないんですね。でこの誤解を吹聴したのはやはり日本の、1960年代を中心としたやっぱり左翼なんですよ。で当時はねやっぱり、あの帰国運動というのがあったりして、それともまぁ賃がよかった。帰国運動には、えー自民党の議員さん達も、えー関わっていましたよね。ただ、そこでね、まぁ、慰安婦じゃないですよ。在日の韓国朝鮮人の方々の、多くが自発的にひと足先にやって来たんだという風に言うと、「それ見たことか!強制連行図式は間違いじゃないか」、違う。強制連行で工場で働かされていた奴もいるし、それとは別に、その日本に入ってきたその人間達が色んな差別を受けてきたという事実も、あるんですね。ところがその日本ではちょっと頭の弱い人達がいっぱいいて、あの「それ見たことか!」と鬼の首でも取ったようにですね、自分の、まぁ勉強しないで凝り固まった価値観を正当化する為にね、ご都合主義的に史実を、まぁ事実をつまみ上げ、食いしてね、議論するというね、でだから朝日新聞も、実はそういう新聞だっていう部分もあったんですよ。
強啓:だからそういう、あのー、おー、問題点はそっちにあるんだって押し付け合うんではなくて、もう一度歴史ってのはこういうような認、間違いからこんな報道になって行ったんだって事も含めてのね、あのー、外交の冷静なやり取りっていう所に、何か落とし所ないかなっていう思いはした、持ちたいんですけどね。
宮台:うん、ですけどね、外交だけじゃないじゃないんですよね。やっぱり今外交はやっぱりパブリックリ、プマシーになっちゃってるんですねインターネットを背景にしてね、なのでやっぱり国民の世論が愚昧だと外交が足を引っ張られて愚昧になってしまうんで、国民の世論がもう少し賢明な配置になるような、まぁメディア関係者を含めた我々の、皆さんの努力が必要ですね。