バリ山行 | Archive Redo Blog

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DBエンジニアのあれこれ備忘録

 

 

 

六甲山を題材にした小説が芥川賞を受賞したということで読んでみました。

 

バリ山行とは、一般ルートとは異なるバリエーションルートを行く登山のこと。

 

登山地図の破線ルートから、地図に載っていない勝手道、道なき道を進むものまで、そのレベルは様々ですが、身近で人気の低山にこそ多い印象があり、六甲山にも多くのバリエーションルートがあります。


この小説では、職場の仲間に誘われて山登りを始めた主人公が、バリをやっている先輩社員に興味を持ち、その山行に同行するところからバリ山行の件に入っていくのですが、仕事における不安や危機と、バリ山行における”本物”の危機の対比が秀逸で、緻密な情景描写を土台に一気にギアを上げて描かれるバリに挑む二人の緊迫感、高揚感、危機感のリアルさに引き込まれます。

 

未踏峰や名峰の未踏ルートなどではなく、バリ山行のゴールが山上を走る車道だったり、麓の住宅街だったりする六甲山を舞台にしているところもかえっていいですね。

 

ホームフィールドであるがゆえに情景を容易に想像することができ、バリという危機が日常と隣り合わせで存在しているということをより強く実感します。

 

私はバリエーションルートには、氷瀑などを見に行くときに少し入るか、あるいはうっかり誤って入ってしまうときがたまにあるくらいですが、それでも一般ルートを歩くときに比べると、緊迫感が増し、五感が研ぎ澄まされるような感覚を味わいます。


そういう感覚を好んで味わいたい、そしてその先にある達成感を味わいたいという人がバリに走るということなのかもしれませんが...私はいいかな。

 

この小説の中で「(登山道を)歩かされている」という言葉が出てきますが、私はそれを物足りないと思うよりは、歩かされている中で楽しみを見つけながら山を歩きたいと思います。

 

と、自らの登山スタイルを再考する機会にもなった作品でした。