ほんとうの親鸞 (講談社現代新書)/講談社- ¥798
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浄土真宗の宗祖、親鸞。
鎌倉新仏教の中でも傑出した存在であり、現在でも浄土真宗の信徒数は諸派合わせて1300万人余りと仏教宗派の中で最も多く、また「歎異抄」に示される悪人正機説などの思想は、信徒であるか否かにかかわらず、知識階層から高く評価されており、高校の教科書でも紹介されるなど、今では一般にもよく知られるものとなっています。
しかし、親鸞の生涯や思想を知ることのできる資料は非常に少なく、その実像はほとんどわかっていないそうです。
この本は、そんな数少ない資料を紐解きながら、親鸞の実像に迫ろうというものですが、迫ろうとすれば迫ろうとするほど、よりあいまいになってくる...親鸞とはそんな存在のようです。
それは、親鸞本人が自らの教えを説こうとしたのではなく、生涯にわたって法然を師と仰ぎ、法然の教えを伝えようとしていたからである。
つまり、自らの思想や軌跡を伝えようと言う意思がないが故に、それらが形としてほとんど何も残されておらず、本人の姿がぼやけてしまうということのようです。
では、宗祖親鸞とは一体何なのか...
結局、親鸞自身には法然のもとから独立して新宗教を興そうという気持ちはさらさらなく、親鸞の血を引く本願寺の歴代法主が、のちに宗祖として祀り上げ、その教えや軌跡に肉付けを施して神格化していったということなんですね。
浄土真宗における親鸞に限らず、宗祖と言うのは得てしてそういうものだということです。
ただ、だからといって親鸞は過大評価されていると言うべきものでもない。
むしろ、そういう宗祖としての過飾をそぎ落としたところにこそ真に評価すべきものがあるとも言えるのではないか、というような印象を持ちました。