死刑囚のお願い


「私はこの七年間、一本の煙草も喫っていません。一滴の酒も飲んでいません。適度の運動をし、規則正しい生活をしてきました。つまり、多分とても綺麗で、健康な内臓をもっています。私は凶悪な犯罪を起し、社会に大きな迷惑をかけてしまいました。もし私の死によって、私の臓器を役立てることができるのであれば、ぜひそうして欲しいのです」として、ある死刑囚は処刑後の臓器提供の意思を表明した。

死刑囚の刑死体は、江戸時代の「腑分け」から現在に至るまで、おおいに医学のために役立ってきた。今日でも罪滅ぼしにと、生前からアイバンクや腎バンクに登録したり、献体の遺志を残して処刑されていく死刑囚も少なからずいるが、それらは死体からの限られた移植で、脳死移植ではない。しかも、その脳死移植も、1997(平成9)年の臓器移植法成立までわが国では非合法だった。

 が、厚生省の臓器移植対策室によれば、いまや、「死亡した受刑者や処刑された死刑囚たちの移植についてもなんら法的な問題はない」という。また、臓器は死刑囚ドナーからは早急に摘出をする必要があるが(移植は心臓や肺は切除後四時間、肝臓は24時間、腎臓は48時間以内)、それについても法務省矯正局は、「死刑執行後の遺体は早ければ一時間ほどで家族のもとへ引き渡しがおこなわれる」 といい、移植は物理的にも可能だとしている。
 しかし、かつて執行一時間で遺体引き渡しが家族になされたことなど、法務当局の死刑秘密主義の政策から実際には一度もなかった。
 半面、その多くが若く健康体であり、あらかじめ時間をかけて健康チェックができるとともに、死亡の日時(死刑執行日)や場所もわかっており、レシピエント(臓器受容者)の選定・待機にも都合がいいといった臓器移植ドナー(臓器提供者)としての死刑囚の利点も、すべては死刑執行の事前公表があってこそである。
 日本の、処刑方法は絞首刑、受刑者の心停止をもって死刑の完了としている死刑制度では、死刑囚の臓器移植などそもそも医学的にも無理であった。
 最近の中国や台湾などでは人工的脳死に最適な頭部銃殺刑を採用するなどして、臓器移植そのものを前堤とした死刑に処刑法や制度を変更してきている。
 死刑囚にも臓器提供の恩典として台湾では執行前に全身麻酔が施されるそうだが、麻酔ののち脳幹部を銃撃、すぐさま待機していた医師が止血処理と人工呼吸をして脳死確認をし、移植病院へただちに運んで臓器摘出という処刑工程をみると、死刑囚はもう〝生きた臓器バンク″ そのものというしかない。
 こうして摘出された臓器を海外で移植してくる日本人もいるという噂もある。
 現在、海外からの輸入臓器による移植手術も認められているが、1992(平成4)年6月の信州大医学部倫理委員会の承認条件には、「死刑囚、またはその可能性が高い臓器提供は認めない」という一項がいれられている。

  ・・・・村野薫 著「死刑はこうして執行される」より抜粋・・・・


私の臓器を役立てて下さい!!

・・・・死刑囚になったら、最後の望みも叶えられないのです・・・・