中国ドラマ春花秋月その後番外 比昨天多、比明天少 完 修正済み | **arcano**・・・秘密ブログ

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韓流、華流ドラマその後二次小説、日本人が書く韓流ドラマ風小説など。オリジナルも少々。
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春花は天高く舞い上がる間地上で見送る彩彩に手を振る。彩彩も又傾いた西日とは言え眩さに目を細めながらこちらに向かって深く頭を下げた


『葉顔さん…彩彩さんに厳しすぎるわ』


『……』


『私はあざとい心根を許す事ができません』


『……同じよ私だってかなりあざといわ。それにしても、葉顔さんはもう千月洞の洞主なのに、私や兄上に時間を割いたりして良いの?』


葉顔は春花の黒目がちの瞳を見つめた。


『私も……見てみたい気がして…』


『見てみたい?』


『はい。お二人の幸せを…そうすればこの心にある靄が晴れる気がするのです』


『……それって…』


『?』


『…それは…そうじゃなくて…兄上に直接気持ちをぶつけていないから靄がかかっているんじゃないの?』


『何の気持ちでしょう?』


『いや、だから…』


『私は秋月様を尊敬はしておりますが、師弟のそれ以上の感情は持っておりません。ただずっと見てきた私には衝撃でした。私達弟子の誰にも花小蕾にもはたまた朴より送り込まれた女人達にも。心も目も向けた事のない御方が突如として熱に冒されたように春花様に心奪われるのを…』


『……物珍しかったのよ』


『千月の者達は皆心に孤独を抱いております。しかし…貴方様なら秋月様を孤独から救い出せると思っていました。そしてそれは間違っていなかった…』


『葉顔さんを闇から救う人は』


『もういません…いえ、最初からいませんでした。共に生きようと言われた事もありましたが、結局は闇から救うのではなく傷を舐め合うだけの生活になったでしょう…このまま闇を抱え孤独と共に生きる方が私には合っています』


春花は突然、葉顔にしがみつく


『ど、どうしました?危険です』


『葉顔さん、貴方は孤独ではないわ。忘れないで。兄上も私もいるんだから』


『……』


『……貴女と話していると亡くなった母を少しだけ思い出します…母は静かで淑やかで春花様とは全く似ていませんが何処か似ている…』


『静かでおしとやかなら似ているじゃ無いの!』


『はは…そうですね……』


『!?』


葉顔の笑い声に驚く


『相手を思いやる心が…似ておるのかもしれません…ですからいつも貴女と話す時、何か落ち着かない気持ちになるのです…この江湖にはそのような生温さでは生き延びてはいけませんから』


『どうせ生温いわよ…でも良いわ。人を欺いて長生きするより、お人好しで短くても私らしく生きる方が幸せよ』


『……はい』


いつの間にか山をいくつも越え伝奇谷の領域へ近付いた。


谷を下に見ながら奥へ向かうと游絲の大事にした花畑が現れ、その更に奥には秋月と春花の住む邸が見えた。


春花を抱えた葉顔は辺りを見渡し、着地の衝撃が少なく済むように伸び切った草の上に降り立つ。


『ありがとう…葉顔さん…えっと…兄上は…』


キョロキョロと辺りを見回す春花は秋月の気配に気付く事なく葉顔に向けて笑顔を見せた。


『兄上はまだ帰っていないよう…』


『春花!!!』


言い終わらぬ内に谷側の森から秋月が現れた。

恐ろしい形相で猛進する秋月に春花は慌てた。何しろ黙って谷を出た。秋月の表情から察するに雷が落ちると覚悟した。


『兄上……えと…ごめんなさい…あの…っっ』


言い訳を聞く前に秋月は春花をきつく抱きしめた


『無事か?何処も何もないか?』


『え、ええ…あの…』


秋月の指が春花の額に掛かる乱れた髪を掬い、流した。

そしてもう一度己の元へ帰還した春花を確かめるべく抱きしめた。


言葉もない無音の瞬間ではあったが葉顔はぼんやりと立ち尽くし2人を見つめた。


『……』


春花はそっと秋月の背に腕を回す。

自分を抱きしめる大きな男が泣いているように感じた。


『兄上…ごめんなさい…心配かけて』


何度も春花の存在を確かめるように秋月は回した腕を強く力を込める。


『……』


『…尊主…いえ、秋月様。申し訳ありません私が春花様を…』


『良い…無事に春花が此処に戻った…それだけでよい』


葉顔は足元に目を落とすと驚き顔を上げた。


『秋月様っ念の為に文を置いておきましたが…もしや目にしていなかったのですか』


『葉顔さん?急にどうしたの?』


『良い。余計なことだ』


『しかし…』


『お前の文は読んだ。そう心配もしておらぬ。それよりも洞主自ら何処で道草をくっておるのだ。まだまだ千月は不安定ゆえお前がしっかりせぬか』


『誰のせいよ…兄上ったら…』


秋月を抱きしめたまま聞こえぬ程の声で呟く。


『はっ…申し訳ございません…では私はこれで…』


『あ、よ葉顔さんっ』


別れの挨拶をと秋月から離れようとするが微動だにできなかった。

余りに強く抱きしだかれ春花の髪に差した簪が落下する。


『あ、もう…挨拶したかったのに兄上…簪が下に落ち…』


足元の簪に手を伸ばす春花は秋月の足が泥や土で汚れ、赤く血で染められている事に気付いた。


『!?』


驚き顔を上げようとする春花をやはり抱いたまま動かさぬ秋月。


『兄上っ…ねぇ、、足が…』


『何だ…』


『ね、どうしたの!?これ…』


『そんなものはどうでも良い…』


『ちょっと待って、すぐに傷口を見せて…ひとまず邸に戻りましょう。兄上、歩ける?私の肩に腕を回して…』


自分より遥かに大きな体格の秋月を必死に邸へと連れ帰った。


『………』


『何よ…何で少し笑ってるの』


『2人で過ごした氷谷を思い出した…』


『もう!そんな事言ってる場合?とにかく座って…今手当するから…』


甲斐甲斐しく傷口を洗い、手当をするのを秋月は騒つく胸を抑え眺めていた。


『?どうしたの?何処かまだ痛む?…』


秋月は首を振った


立ちあがろうとする春花を引き寄せると膝の上に乗せる。


『兄上?』


無言のまま春花を再び腕の中に包み込んだ。




『さっき、葉顔さんが慌てたのも、兄上の怪我に気が付いたのね……私を探したの?』


『……もう、帰ってこぬかと思った…』


『何でそんな風に思うの?傲慢な兄上らしくないわ』


『今はもう力も持たぬ何者でもないただの人だいや、人でもないのかもしれぬ…春花1人も守れぬ男に愛想を尽かしたのではないかと…』


『信用ないのね私。力があろうが無かろうが、強かろうが弱かろうがそんなの関係ない


春花は不安気な秋月に体を預ける


『…無力な私でも良いと?』


『兄上がいいの。魔教でも千月でもない。ただの上官秋月を愛してるんだから。あなたはあなただわ誰でも無い



『春花は優しい…そして温かい…一度この温もりを知ってしまったら離れられなくなる…知らぬ間にその毒に侵される。まるで徐々に体を蝕む毒のようだ…』


『百花刧の様に?』


『ああ、そうだ。愛は薬にも毒にもなる。』


『薬にも毒にも?』


『薬も与え過ぎれば毒となる…それがなければ生きていけぬ程……其方が私を孤独から救い、愛を教えた。そして次第に激しい嫉妬心を湧き出させ、最後は命を捨てても構わなかった。其方のいぬ世界は死せる世界だ。狂おしい程…毎日春花が欲しい。愛を知らぬ者にそれを与えた罪は重いぞ』


『え?それは兄上よ!私なんてもっと酷い目に遭ったわ苦しいのもだし兄上にもしも何かあったらと想像して泣きながら目覚めた日もあったそれに会えない日は寂しい時も……


秋月が笑っている事に気付くと春花は唇を尖らせた


『あ、あったかもしれないけど覚えてないわ!あ、そうだ気のせいかも!うん。気のせい!絶対』


『いつからこの兄を好いておった?』


『や、やだやめてよ!そんな話』


……


……い、いつの間にかよ!うんあれは、、そうえっと鳳鳴山の裏山で…蛇に絡まれて…ん?あれ?最初からになるの?あれはでも結局兄上の罠だったし』


『そうか。最初からか』


『何満足そうにしてるの!違うから。待って思い出すから!


腕の中の春花が百面相をするのを秋月は目を細めて眺めぽつりと話し始めた



『……初めて八仙居で横たわるそなたを見た時、花小蕾ではなかった。姿形はそうであってもまるで別人であった。手を伸ばし、触れたくとも触れられぬ其方の周りを温かい空気が取り巻いていた、そのせいで長い間この体中に駆け巡っていた空虚な風が冷たい風だったと分かったのだ


『私の名前を春花って付けたのはなぜ?今日はそれを知りたくて八仙に行ってたの』


……秋月には春花だ元は我らは一つの魂。秋月は枯れた原野を見、極寒の冬を憂えた日々。春の日差しに咲き乱れる花々を求めていた。

何処かに分かれて生まれた半身をようやく見つけたのだ永く暗闇を彷徨ったがようやく光と出会えた


……でも私を利用したじゃない』


『結果的にそうなったが、本当はただ…』


『ただ?』


『其方に関わっていたかった…あの女の呪縛に縛られながら解放を願った。

私は私の家族が欲しかった。結局…孤独を飼い慣らす事は出来なかった


『家族…』


思えば花家でも秋月は家族を欲しがっていた。

兄ではないと分かった後も家族である事を望んだ。それは幼き頃からの本心からだったと春花は気付きそして胸が軋む。


『人は陰と陽で一つだ。陰のままでは生きていけぬ私の陽の半身が其方だからだ』


『何でわかるのよそんな事…』


『其方は私の為に、私は其方の為に存在する』


『だって私は花小蕾の…』


『…小蕾でもなければ其方がどこから来た誰であろうとこの兄が呼び、それに呼応するように現れた。ただそれだけだ』


『…私を呼んだ?』



『ああ。心の安らぎを何処かでずっと求めていた。

上官秋月は生まれた時から憎悪の対象だ生まれてはならぬ子だ。あの女がなぜ産んだか。そんなものはとうに分かっておった。復讐の道具としての利用価値しかない生き抜く為にはあの女の望むようになるのが一番早かった私は道具になるしかなかった


春花は秋月に向き直ると両手を回し抱きしめた。

その温もりが秋月の胸を締め付ける


『あなたを孤独にしたお母様を私は許せないけど、だけど感謝するわ』


『……』


『貴方をこの世に誕生させてくれた人だもの』


春花の言葉に長い間閉じ込められた感情が揺さぶられる。

秋月にはそれが何という名の感情であるか分からなかった。春花の言葉に永久凍土の世界がじわじわとした温もりに溶け出し、灰色しか無かった心中は極彩色に変化した。腹の底から込み上げる熱い感情。

両の目から溢れ出さんとする熱い水脈を抑えるのがやっとであった。


『騙されたと思ってあなたから離れて鳳鳴山荘に居た時、もう毒が回って死ぬかも知れないと思って眠れなくて…それで兄上に聞いた事を思い出してた


『?』


『私をどれくらい好きなのって。兄上は昨日より多く、明日より少ないって




『その通りだ


『…私も同じだった


……


『気付かなかった。最初は全然。でも毎日少しずつ確実に想いが強くなっていってそれは今も同じで毎日…毎日愛してるの昨日より…それが少し怖くもあって…


『怖がらなくていい。私も同じだ…共に日々を過ごし昨日より深く愛せば良い』


『うん…』


『不思議なものだ…ただ何の力も持たぬ女子が私を一番に苦しめていた。其方の振舞いは厄介な事に愛らしかった。

苛立ちを知り、嫉妬を知り、決して私のものにならない其方が憎くなりそしてその苦しみが喜びでもあった…妙な気分だが嫌ではなかった


『そんなの私だって同じよ!意地悪ばっかりなのに…会いたくなったりして…完全にバグかと思ったもの』


『なんだ?』


『あ、いえ…別に…』


『春花』


『何?』


『春花…』


『だから何?』


『其方が私を誘惑して唆す故その気になった…大胆な事をしても良いか?』


『なっ…それはっ…そんな…いちいち言わないでよ…何て答えたらいいか…何故いつも急にそんな話になるの?』


『本来はいつだって私のものにしたいが毎秒我慢しておるのだ。一度味わったらまた欲しくなる。そう言ったではないか。春花は兄に触れたくは無いか?』


『そっ!それは…その…うん。触れたくはない。とまでは行かないけど触れなくたって良いかなってくらいは…大体さっきのは【愛が薬にも毒にもなる話】でしょ。そういうの少し恥ずかしいし…慣れないの!』


俯き顔を赤らめる春花に秋月は微笑む


『信じぬ』


『あっ…』



秋月は瞬く間に春花の唇を奪った。

春花は開いた目をゆっくりと閉じると秋月に身を委ねた。


夜の帳が下りようとするその天上は

赤みを帯びた橙から徐々に濃い墨を落としたように赤紫へ。そして藍から深い青へと変化した。


陰と陽の融合は美しく、そしてのびやかに流れ行く。

2人だけの世界が何処までも広がっていく。

隔てるものは薄い絹の羽衣一枚であろうと必要はない。

静寂に熱い吐息が零れ落ちる。

緊張と緩和の律動は底なしの沼に消え失せ、やがて死の淵を彷徨う。


秋月は今この漲る瞬間の幸福は永遠の幸福に匹敵する事を悟った、それは春花も同じであった。


気付けば窓から見える山の端から月は随分と高く離れていた。


『月があんなに高いわ…』


『……』


格子戸の隙間から月光が差し込んでいた


『……小春花…』


『………』


『何故こちらに背を向けておるのだ』


『………』


『顔を見せて欲しい』


『…嫌よ…』


言いようもない喜びと気恥ずかしさにわざと不機嫌な態度になってしまった。

秋月の腕が肩に触れるもそれをつい払い退けてしまう。


『……痛むのか?もしかして無理をさせすぎたか?加減ができずに…』


『ち、ちょっと!!そんなあからさまに言わないでよ…あ…』


思わず振り向く


『もーっっわざとでしょ。もう。恥ずかしいから見ないで!何よいつも自分ばかり余裕で…』


『兄の腕の中に隠れておればよい…そうすれば誰からも目につかぬ』


『違うでしょ!…もう……さ、寒っ』


『強がるな…ほら…兄が温めてやる』


『………兄上の衣だけじゃ寒い…私のは…あ、あんな所に…』


寝台から離れた床に無惨に散らかる衣


『取って来れば良い』


『嫌よ!こ、こんな姿で取りにって…丸見えでしょ!』


『灯りもなにもない。真っ暗では無いか』


『嘘ばっかり!こんなに月が明るいなんて詐欺よ!夜なんだからもう少し気を遣ってよね』


『それは…月に言うておるのか?』


『そうよ!…風は冷たいし、なのに星も月も嫌味なくらいに明るいなんてどう言う事?』


愛らしさに胸が詰まる


『まぁまぁ…そんな事は良いから観念してこちらへ…兄の腕が嫌なら其方の放り捨てた衣を取って来れば良い…相変わらずお転婆で困る』


『……卑怯よ…立てないもの…それに放り捨てたのはあなたでしょ…私が脱ぎ捨てたみたいに言わないで』


言いながら仕方なく秋月の腕の中に収まる。

秋月は春花の温もりに情が掻き乱される。


『あ、そうだ。兄上…聞きたかったんだけど』


『なんだ?まさか春花がそんなに勉強熱心とは嬉しいぞ』


『は!何を言って…そうじゃなくて!兄上の元には朴から女人が送られてきてたって本当なの?』


『!?なっ…ど…誰がそんな出鱈目を…』


『へぇ、その反応を見ると本当なのね…ちょっと小耳に挟んだから…』


『女人が送られて来ようと私にはなんの興味もない』


『ふーん、あ、そう!』


『じゃあ何でそんなにすんなり衣を脱がせたのよ』


『そんなものは構造を知っておれば簡単だ…』


『こ、構造?!構造って何の?女人の体?

だってすぐに胸のここにこうやって手を滑らせて…シュッてして…パラってなって…』


『ま、待て待て…そうではない!』


『ふんっ良いわよもう。言い訳なんて聞きたく無いし』


拗ねて丸くなる


『ならば春花。お互い昨日より深く、多く愛そう』


『明日よりは少なめにね!大体そんなのずーっとじゃない』


『あぁ、そうだ春花と秋月は永遠に続くのだ…良いか?』


『………うん…じゃあ…もう一度私に大胆な事をしてくれる?』


『…春花が望むだけしよう』


月に照らされた伝奇谷の花達は秋の風に揺れた。

魂の半身を探し求めようやく手に入れた秋月に春の花が美しく微笑んだ。




ふぃー。ちょっと今回はビター風に。

途中で一回削除しちゃって…😭書き直したんでもう修正は暫くしたくないんだけど、又加筆修正あればしゃーす。