いつか花になる | **arcano**・・・秘密ブログ

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韓流、華流ドラマその後二次小説、日本人が書く韓流ドラマ風小説など。オリジナルも少々。
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『又会いましたね?』

打ち合わせの後事務所を出て1人。

それは信号待ちの最中に起きた。

『え?…あ…』

目深にキャップを被った彼は小さく「どうも」と呟いて笑った。
この間この先の道端で何も隠さず傘も差さずに肩を濡らしていた人とは思えなかった。

『こんにちは…ん?もうこんばんはですか?』

腕時計を確認すると17時を少し過ぎていた。

『あは。どっちだろうね。どっちでも良いや』

変装してるつもりでも全然隠れていない眼差しに目を合わせる事は出来なかった。

『ですね…。』

沈黙が訪れてなかなか変わらない信号を睨んだ。なのにすぐ隣の彼は私を見ているみたいだった。
感じる視線を確かめる勇気がなくて…ひたすら信号を見つめる。

『ここ、信号なかなか変わらないよ』

『あ、はい…いつもは気にならないけど今日はなんか』

『僕がいるから長く感じる?とか?』

案外核心を突いてくる。度々襲う沈黙が重かった。

『あ、えーっと仕事ですか?』

『うん。ちょっとね音合わせ的な感じ。
そっちは?事務所そこだよね?』

『はい…私も次の打ち合わせ…』

信号が変わり歩き始めた。

『ふーん。。てことは日本には暫く帰らない?』

『はい。暫くはこっちで仕事終わらせて…かな』

『そっか……』

車道側が赤になると少しだけフライングして渡り出す。

『もう、あの店行かないの?この前、彼氏といたでしょ…いたっていうか居合わせたのかな?』

『あー、、あれは彼氏というか友達ですかね…私が一方的に想ってただけみたい』

『なになに?失恋?』

面白がるように笑うのを尻目に信号を足早に渡った。

『……まぁ。失恋ってよりその他大勢だっただけ。』

付き合ってるつもりだったのは私だけだった。
恋愛は暫く要らない。私には仕事があるし。
帰って早く台本読まないといけないし…

『ふぅん…じゃあ、もし今彼に会っても大丈夫?』

『大丈夫…じゃない。かな…でも友達だから…仕方ない。会えなくなるよりは…』

『いっそ友達のままで?へぇ強いね…』

『からかってます?』

『全然。今そう言う歌詞書いてるから、女の子って平気なのかな?とか。ただの興味。
あと、、こうやって偶然が2回って事はまた会えそうだと思って』

『……』

返答に困る。

『なんて。うそ。偶然じゃない』

『え?』

思わず、隣で歩く彼を見た

『やっと目が合った』

満足そうに笑って

『実は待ってたんだ』

呟いた

『…どういう事ですか?…』

『傘借りたままだったから、又ここで会えるかなと』

『ああ、じゃあ。はい』

手を差し出すと驚いた顔をした

『?』

彼の手が伸びて私の手のひらに触れる

『え?』

『ん?握手じゃなく?』

『傘を貰おうかと思って』

『ああ!あはは握手かと。』

『そうみたいですね』

手を離そうとするのを逆に強く引き寄せられた。

『離して貰えません?』

『ああ。ごめん…離れ難きってやつ?』

『はぁ、、モテる人って…そういう事平気でできちゃうんですね?あの人もそうだったし…』

『あの人…ああ、彼?心外だな。僕は誰にもこんな事はしない』

『私、勘違いはもうしないんで。』

きっぱりと拒絶したのに…

『やっぱり?…残念』

と言っておどけた。その表情が寂しげで本当に残念そうに見えて良心が痛む。

『はい。ではバスが来ますのでさようなら。』

彼の様に名実共に雲の上の人と関わったらきっと、ろくな事ない。私が一番知っている。
そう思って背を向けた。

『あ、、ねえ』

『はい?』

『傘……今度でいいかな』

『………』

捨てて下さいと。言えなかった。
この気持ちに説明がつかなくて所在なくて
今でも何故あの時?

『いつでも…』

なんて言ってしまったのか。
すぐに後悔したのは言うまでもない。
ただ私の言葉に

『わかった!』

と言って無邪気に笑う。
今の今まで曇っていた表情が一瞬にして
最上級の笑顔に変わって。

『でも、別に…返さなくても…』

反則技に負けたくなかったけど彼は
何も言わずにただ笑顔で頷いた。

ああ、この気持ちはきっといつか…

花になる


箸休め的短編です。