宮Love in palaceその後物語番外 2 | **arcano**・・・秘密ブログ

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韓流、華流ドラマその後二次小説、日本人が書く韓流ドラマ風小説など。オリジナルも少々。
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宮は薄暗い雲に包囲されているようだった。

現に後日ある一定の時間、宮の上空の雲が渦を巻いていたと世間を騒がせた。

チェギョンはシンや慌ただしく消えたヨナを思い不安を覚えていた。

『お前はここにいろですって。。。何よ…ヨナは私の友人よ!』

意を決すると立ち上がる。

シンはヨンジンなる青年に対峙していた。コン内官も然り。

『君は何処からきたんだ?』

『どこから…って…まぁマカオに住む前はこの辺りだけど』

『先程、姉上からの連絡で分かったことだが、防犯カメラを解析した。この東宮殿へは正門からの訪問ではなかったようだな』

『……抜け道が…』

『何故抜け道の存在を?恐らく妃宮も知らぬ筈。。』

『……たまたま見つけた。そうたまたま!偶然。』

『たまたま?偶然?あり得ないな。一体どれだけの衛兵が配備されていると?』

『……チェギョンの旦那さんて、結構意地悪だな…追求の仕方もだけど、、チェギョンの扱いだって最低だった』

『何?』

『別に…ただ俺なら余所見もしないし脇目も振らずにチェギョンだけを大事にするのになって…』

『…メディアの報道を鵜呑みにするのは愚か者がする事だ』

『間違ってた?報道…案外正確だったんじゃないかな』

『おまえ…』

『で、殿下…暴力はいけません』

『何故止めるんだ内官!』

『は、、ただ今皇帝陛下より伝令が参りました…取り急ぎ宮へ戻れとの事でございます』

『あ、なら行ってきたら良いよ。僕は此処でチェギョンの旦那さんの話も聞きたいから待ってる。先にトイレだけ貸してくれないかな?』

『……仕方ない…内官、彼をここから一歩も出さないよう頼むぞ』

皇帝の命とあれば参じなければならない。
シンはへミョンの待つ宮殿へ向かった。

その頃宮の不穏な空気を察知し退却しようと隙を見て逃げ出したヨナは東宮を出た瞬間に警備のイギサ達に結局捕まった。

『ヨンジン様ですね?申し訳ありません、女皇帝陛下の命により同行いただけますか?』

『それは・・命令ですか?』

『いえ、丁重にお連れするようにとのことです・・』
丁寧だがされど威圧的に強制的な「お願い」であった。

姉であり女皇帝陛下であるへミョンに呼び出されたシンは苛立ちを隠せなかった。

『シン、どうしたの?そんなに殺気立って・・』

『・・・妃宮とちょっと・・客人をもてなしていたところですので・・心配で・・』

『あら、、客と二人にしてきたのが心配なの?』
図星を突かれたシンは瞬時に言葉を失った。
それから程なくしてイギサと共にヨナが部屋に到着する。

『ヨンジン・・?姉上、この者に何かご用でしょうか?』

姉には何か思うところあっての今この状況であることは十分理解できた。

『何かご用ですかって…大方わかっているんでしょ?』

すました表情のシンに呆れた。

『……』

ヨナは珍しいものでも見る様子でへミョンを見つめる。

『で?はじめまして…でいいのかしら?ヨンジンさん…もっとも、本来は龍(ヨン)と呼ぶのが正しいのかしら…それとも別に名前があるの?』

『!!』

狼狽えるヨナは思わず後ずさる。

『それはどういう意味ですか?』
シンは姉と異国から来た青年に鋭い一瞥を放ちながら追求する。

『ふぅ…弟は何事もせっかちなの。。時に答えを急ぐ必要ない場合もあるけど、、チェギョンの事になると暴走ぎみなのよ。でも、今回は私も知りたくなったからあなた方を呼んだのよ…シン、、これを…』

へミョンが持ち出したのはシンが使う玉璽であった。(※玉璽:王の使う印)



代々受け継がれた玉璽はシンも公務の際には使用する。

手に取るシンは違和感を感じた。

『確かに私が使う玉璽だが…何故これを姉、、いや女皇帝陛下が?それに…』

いつもよりも鈍い光に首を傾げた。
『少し古いけど、間違いなく貴方の玉璽よね?』

『…いつも公務で使っているものです。』

『この玉璽はこの世に二つとない王の証。代々天子が持つもの。。それを何故あなたが持っていたのかしら?』

ヘミョンはシンの隣の青年へ目を向ける。

『何?』

『これはね、シン。貴方の持っている玉璽。でも明らかに貴方のものよりも経年している。。
内官に調べさせたけど貴方の玉璽はちゃんと管理されていたわ。。』


『……』

『どういう事だ?』

『先ほど警備の者が不審な人物を宮の周辺をうろついていた男を捕まえて…
その男の持ち物の中から出てきたの…』

『??』

『その男は今捕らえられて牢に入れられてる…もしかしたら罰を受けているかも…』

『内官が?!』

ヨナは思わず口走る

『内官?内官だって?』

姉弟の聴取に逃げる事はできぬと覚悟を決めた青年は静かに深呼吸をした。

『あぁ、、彼は私の内官だ』

『じゃあこの玉璽はどうしたの?』

『それはお祖父様から父へ…そして私へ受け継がれた玉璽です。』

『!?』

『では、お祖父様は誰なの?』

へミョンは見透かしたようにヨナを見つめた。

『祖父の名はイ・シン…隣にいる貴方です。申し訳ありませんが名は明かせません…こちらで使っている名前は借り物です…』

『!!!!』

『あはは!やっぱり?当たったわ!』

『え?』

『え?』

へミョンの反応にシンとヨナは同時に驚く。
まるでシンクロしたように見えヘミョンは更に笑う

『貴方未来から来た私たちの子孫でしょ?シンの孫って事?』

『、、まぁそうなります。。大叔母様。』

『やめてよ!そんな呼ばれ方好きじゃないわ!』

『あ、すみません…』

『…ねぇねぇ、、じゃあ…チェギョンのお腹の子は…』

『私の父です。。』

『!!!』

『わ!じゃあやっぱり男の子なの?!わぉ!お祖母様との賭けに勝ったわ!』

言葉なく驚嘆するシンを尻目にヘミョンは喜んでいる。

『姉上…すみませんがそんなことでお祖母様と遊ばないで下さい。。』

『なによ・・いいじゃない…別に…でも本当にそうか気になるならDNA鑑定でもしても良いわよ?』

『いえ、何となく分かります。チェギョンも他人の気がしないと申しておりましたし…何よりそっくりだ…』

『…妃宮の弟のチェジュンにでしょ?似てる本当に…ならあのチェジュン君結構かっこよくなるのね』

『あ、大叔父上は俳…あ、いえ』

『そうね、歴史は語るべきではないわね』

気まずい中でへミョンの明後日な反応に救われるヨナ。

『へぇ、、で?何しに来たの?こんな過去まで・・』

核心をついた質問に表情を固く強張らせた。

『時間を往来するには厳しいルールがあるのであまり詳しくは話せません…』

青年は俯き答えた。

『貴方の事だけでいいわ』

『あ、、はい…父上より婚姻を一方的に進められ…』

『ん?』

『もうすぐ20歳です。。それで、、皇帝陛下である父上に結婚話を勝手に進められ・・』

『あら?どこかで聞いた話ね』

『はい・・その・・これまでの王朝が続いた中で政略結婚以外で結婚した皇帝夫妻を調べたのです』

『つまりは・・歴史の中で相思相愛で結婚した夫婦を探したわけね』

『はい。それで、、その・・御祖母様と御祖父様が該当したのですがお二人とも
気軽に話ができる状態ではないので・・』

『お身体が?』

『あ、いえ・・第二の人生だって二人で御祖母様の実家で・・』

『え?チェギョンの実家に?』

『勿論きちんと警備の者はいます。』

『そう・・・でも、よく貴方がそれを許したわね・・シン』

『そんなの反対に決まってる・・』

『未来の話はしてはいけない決まりになってるので・・ここまでに・・』

『あぁそうだったわね・・で?チェギョンとシンに会いにきたの?』

『あ、はい・・お仕えしているコン内官の細かい日記がありましたのでそれを参考に・・』

『内官の日記?』

『はい・・私の内官はコン内官の甥にあたります・・』

『成程ね・・で?なにか収穫はあったの?』

『・・・いえ・・ただ・・』

『ただ?』

『御祖父様には言いにくいのですが・・御祖母様がとても可愛らしく見えました』

『それは?どういう意味だ?』

『はい・・まず、僕達は騒動を起こした皇太子妃が国外追放されたマカオに行先を決め、御祖母様が行った博物館へ向かいました。やってきた妃宮は明るく、優しくて・・何より誰に対しても隔たりなく接して下さる。ただ、時々寂しそうにして、、けれど気丈に振る舞われる。』

『・・・』

『シンと離れてって事かしら・・』

『はい、恐らく。でも歴史的に知られている事に疑問が湧きました。騒動の発端、離婚の言葉をチェギョンが口にするなど、俄かに信じられなかった。何故かと思い成婚の頃に戻りずっと見て参りました。。夫にぞんざいに扱われても気丈に振る舞い、笑顔でいる。従祖伯父が支えられ宮で過ごされた。しかし誰がどれだけ慰めても夫を想う姿がいじらしくて・・本来なら時間を往来するにその時代の人物と関わりを持つのは御法度。しかしマカオで過ごすお祖母様が幸せそうで…声を掛けてしまいました。
お祖母様はこの私にも、それから従兄と言う設定で一緒に過去へきた内官にも親切で・・』



『ふん・・・だからそれが隙だというんだ・・』

シンは苦虫を噛み潰したように呟いた。

『血の繋がりがあることを恨みに思ったくらいでした・・』

『恋しちゃったの?』

『・・・全くの他人ならそうなっていたでしょうが、、お祖母様ですから。けれど「弟」に似てるって理由で近くにいる事を許してくれた以上は・・近付けはしませんでした』

『当たり前だ・・』

『チェギョンはモテるのよね・・』

『御祖父様は相変わらず厳しいな・・』

『まぁでも、、可愛い孫には違いないわね・・きっと』

『はい・・それはわかります・・私は・・父とは違って御祖母様に似ているので殊更可愛がって頂いて・・』

『あら!お腹の子はシン似の面白味のない皇帝陛下なの?』

『はい・・それで自分と同じように政略結婚を無理に進めようと・・』

『貴方の答えはどう?この時代にきて今は?』

『御祖母様も初めは政略結婚で、しかも家が貧乏だったから結婚したと・・だけどお祖父様がとても孤独で、救いたいと思っていたと。それが愛とは知らなかったと笑っていました。辛くて辛くて夫から、宮から離れて自分らしさを取り戻そうとしたのに結局は…自分らしさが宮にあったなんて言って。あんなに意地悪な扱いをしたお祖父様を許して愛するなんて。。

お祖父様だって…あれだけ拒否しときながらあれほど独占欲丸出しで…不思議でした。あんなに睦み合えるなんて・・政略結婚もアリかもとは思いましたが、しかしそれまでの経緯がなかなか僕には難易度が高いかと…』

『あはは!まぁ、、真実は一つじゃないわ。こうして少しだけ未来を話してしまった以上は
多少未来は変わるかもしれない。私たちはこの事は心の中に預けておくから大幅ではないにしろ
あとは自分たち次第だって事。頑張りなさい未来の皇帝陛下!』

『はい。。あの・・未来の私はとても反抗していて・・』

『チェギョンに似て?』

『あ、はい・・それで、、あまり良い孫ではないかもしれないけど・・・
御祖父様の事凄く好きだから・・本当は・・』

『で?何だ?』

『だから、、もし未来で御祖父様の大切にしている御祖母様の可愛い寝顔ビデオ・・
壊してしまっても許してください!』

『ぶっ!!』
ヘミョンは思わず吹き出した。

『あ、こっそりキスビデオもありました』


『なに?!なにそれ!』

『お、おま!!何をっっ』

『眠っているお祖母様に…』

『分かった分かったから!!・・・コピーして保管しておくから気にするな』

咳払いをすると眉ひとつ動かさず至って冷静に努め答えた。

『真面目すぎ・・』

『やっぱり御祖父様はきちんと話せば理解はしてくれる!』

満面の笑みはチェギョンの笑顔に似て太陽のように輝いた。

別れの時は静かに近づいている。