ジョシュ・マラーマン原作の同名小説をサンドラ・ブロック主演で映画化したスリラー映画

 

 

 

 

 

 

             -  BIRD BOX  -  監督 スサンネ・ビア

 

 出演 サンドラ・ブロック、トレヴァンテ・ローズ、ジョン・マルコヴィッチ 他

 

こちらは2018年制作の アメリカ映画 アメリカ です。 (124分)

 

 

 

 

 「良い?絶対に目隠しを取ってはだめよ。」「目隠しを取ったら、死んでしまうんだから」幼い二人の子供に必死に話しかける母親のマロリー。彼女は子供達と共に目隠しをして危険な川をボートに乗り込み川を下っていきます。

 

 

 

 

その5年前のある日、妊婦であるマロリーは姉と一緒に産婦人科に寄った帰りに突然世界が一変します。世界中で人間が集団自殺しはじめ、街はおろか世界中がパニック状態に陥っていました。

 

 

 

 

産婦人科からの帰宅途中、運転していたマロリーの姉も何かを目にした事で正気を失い、マロリーの目前で自ら車に轢かれて亡くなってしまいます。パニックの中一人でさまよう彼女は偶然見つけた一軒家に逃げ込みます。

 

 

 

 

その家には家主のダグラスをはじめ数人の避難者が逃げ込んでいました。外の光を見ると異常な行動をとってしまうためみんなまず家の窓という窓を覆い外を見ないようにします。避難者はそれぞれ生物兵器のテロだとか宗教的な終末の世界が来たのでは?と推測しますが、真実は謎のままでした。

 

 

 

 

新たに避難してきた妊婦の女性も加わり奇妙な共同生活が始まります。しかし、しばらくして食料は尽きはじめ、近くのスーパーまで車のカーナビを頼りに食料の調達に出かけます。無事に食料は手にしたものの、一人、また一人と死や裏切りによって仲間は減っていきます。

 

 

 

 

そんなある日、マロリーとオリンピアに破水が始まり出産する事になります。しかし、後から仲間となった男はすでに何かによって常軌を逸しており、オリンピアやダグラスたちを殺しはじめます。

 

 

 

 

なんとか生き残ったマロリーとトムは新たな避難場所を探し、二人の子供とひっそりと生活をしていました。そんなある日、寝ているとトムは無線に飛び込んできたリックという男から川下の安全な場所の話を聞きます。

 

 

 

 

そこに行くか意見が分かれる二人でしたが、ある日外を散策していた矢先に何かにすでに洗脳された人間たちによってトムが殺されてしまいます。トムが死んだことで決意したマロリーはリックの言う安全な場所へ向かうため川を下る旅に出るのでした、、。

 

 

 

 

突然訪れた得体のしれない”何か”によって引き起こされるパニックと恐怖を描いた本作。その理由も謎も明かされないまま進行する展開に最後までゾクゾクしながら観てしまいました。

 

 

 

 

サンドラ・ブロック演じる母親が二人の幼い子供に強い口調で「絶対に目隠しを取ってはだめよ。」という謎のオープニングに始まり、そこに至るまでの5年前の出来事と現在の目的地へ向かう川下りの物語を交錯させて見せる構成が見事でした。

 

 

 

 

5年前には日常だった日々が、突如非日常へと変化する突然の出来事の描写がとっても怖くて、観ているこちらも訳が分からないまま映画内の世界へと引き込まれてしまいます。”何か”という謎の存在を見てしまった人は自ら自殺してしまうという恐ろしい設定がもう恐怖でしかありません。

 

 

 

 

人が自ら死を選ぶという描写はシャマランの「ハプニング」を思い起こさせますし、音と視覚は違えど母親と子供が旅するドラマは「クワイエット・プレイス」の特に2を連想させます。逃げ込む家での共同生活は「ミスト」を、原因の不明さは「鳥」を彷彿とさせ、良い意味で期待を裏切らないウエルメイドな作品に仕上がっています。

 

 

 

 

特にお気に入りだったのは食料が少なくなり近所のスーパーまで車に乗って出かける場面。外を見ないように窓を塗りつぶし、カーナビと車体に付いたセンサーで物を避けながらスーパーを目指すという今だから出来る斬新さにドキドキしました。 それでも道に転がっている多くの遺体を車でボコッと踏む瞬間、皆何を踏んでいるものが分かっていながら黙っているという暗黙の空気感が恐ろしくリアルでした。

 

 

 

 

ただ人によっては”何か”を見ても変化ご起きない人間もいて、心が闇落ちしている人間は平気っていうから厄介な存在で、見ようとしない人間に目をこじ開けてでも素晴らしいから見ろ~!と強制的に見せようとする鬼畜感は恐怖でしかありませんでした

 

 

 

 

謎のパニックが始まる集団の前日譚と、それに並行して描かれる個の親子の物語の対比も見事で、親になる自信もなかったマロリーが母親として、人間として成長して強くなっていく人間的なドラマも力強く、ほぼ出ずっぱりのサンドラ・ブロックの演技と表現力は素晴らしかったです。

 

 

 

 

双子を産んだのかと思わせての、そういう事情があったのねというドラマ的な繋がりの巧みさと、それを表す小さな手に握られたキティちゃんのキーホルダー。川の見張りを二人のどちらかにさせようとする場面では「ソフィーの選択」が過りました。それほど二人とも可愛かったのでありました。

 

 

 

 

ラストはある意味ハッピーエンドではあるものの、明るい希望を予感させないままで終わります。”何か”を感知するからと箱に入れられたままだった鳥は箱から外へと出されますが、今度はマロリー親子がタイトル通りの状態になるという皮肉にもとれるエンディングです。

 

 

 

 

姿の見えない”何か”とは?このエンディングとは?等、観客である私達の想像力が試され、そのイマジネーションによっていくらでも世界が膨らむような幅のある作品です。意味や理由や謎が理路整然としていないと楽しめない方には少し消化不良に感じてしまうかも知れませんが、それでもかなりワクワクドキドキして楽しめるのではないでしょうか。

 

 

 

 

ホラー映画としても楽しめますが、グロ描写やビックリ演出が少なめの作品ですので、その手の作品が苦手な方でも安心して恐怖と人間ドラマの両方が楽しめる映画だと思いますので、機会がありましたらご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー