「ダークナイト」3部作や「インセプション」「インターステラー」など数々の話題作を送り出してきた鬼才クリストファー・ノーラン監督によるオリジナル脚本のアクションサスペンス超大作。

 

 

 

 

 

 

             -  TENET - 監督 脚本 クリストファー・ノーラン

 

   出演 ジョン・デヴィッド・ワシントン、ロバート・パティンソン、

                                                                             エリザベス・デビッキ 他

 

こちらは2020年制作の アメリカ アメリカ イギリス イギリス  の合作映画です(151分)

 

 

 

 

言わずもがなのクリストファー・ノーラン監督の作品で、前作「ダンケルク」から3

 

年ぶりの新作でございます。 映画好きなら、そりゃあ~有無を言わず観たくなるのは

 

当然の事でして、初日の朝一番に駆けつけた次第です。 ただ私の近所にIMAXの

 

劇場は無く、電車乗ってまで、、と考え重低音で我慢しました。 劇場に入る時に娘さ

 

んに手を引かれたお婆さんもいらっしゃって、大丈夫かな?とちょっと不安がよぎっ

 

た私でしたが、さて、その映画本編のザックリした内容でございますが、、、

 

 

 

 

  映画は開始早々テンションマックスで幕を開けます。 満席の観客でにぎわうウク

 

ライナのオペラハウスで、テロリストによる占拠事件が勃発。 多数の人質を救出する

 

ために特殊部隊が館内に突入します。 突入部隊に紛れ込んだ主人公の 名もなき男 

 

(彼だけ固有名詞がありません)は、混乱の中で、オペラ会場にいた仲間の救出に

 

動きます。仲間の救出に成功した男ですが、その後、身代わりとなって捕まってしま

 

います。男は、自殺用の毒薬を飲み込みますが、薬は別のものにすり替えらえていま

 

した。

 

 

 

 

昏睡状態から目覚めた男は、占拠事件は男をテストするものだった事を知らされま

 

す。テストに合格した特殊工作員の男は、そこであるミッションを命じられます。そ

 

れは未来からやって来た脅威と戦い、世界を救うというモノでした。男はある研究所

 

で不思議な現象を体験させられます。 自分が撃ったはずの弾丸が拳銃に戻るという 逆

 

行する弾丸 が惹き起こす現象でした。 男は時間の逆行を可能にする装置が極秘に現代

 

に送られてきたことを知らされます。 

 

 

 

 

人や物が過去に移動できるようになっていたこの技術は、第三次世界大戦と、それ以

 

上の惨劇を人類に引き起こしかねない大きな危険性をはらんでいました。そのすべて

 

のカギを握る存在としてTENET(テネット) という言葉が伝えられます。この逆行す

 

る弾丸がどこから来て、誰が関わっているのか、第三次世界大戦を未然に防ぐために

 

男は任務に就くのでした、、。

 

 

 

 

上映が終わり劇場内の明かりが点いた瞬間、多分客席には多くの「はてなマークマーク」 が飛び

 

交っていた事でしょう。 かく言う私もその一人でした。 物語の序盤、この不思議な 

 

世界観や理屈、TENETといった基本の設定を説明されるのですが、説明はかなり抽象

 

的で大ざっぱ。その上、量子物理学やエントロピーという理系の、それもかなりマニ

 

アックなもので一応の解説が済んでしまいます。 ここが鑑賞するにあたってのポイン

 

トでもあります。 普通映画を観る時は設定を理解してから物語を共有しようとします

 

が、本作ではある意味それを拒絶されます。 そこで立ち止まってあれこれ思案しなが

 

ら鑑賞していても映画は楽しめないもので終わってしまいます。

 

 

 

 

というか、そんな暇がない位に物語と場所がハイスピードで次から次へと展開してい

 

き、私達は映画に振り落とされないように必死にしがみつづけているのがやっとな作

 

品です。本作についてのヒントは TENET について説明される場面で男に告げられる

 

言葉 「頭で考えるな、感じろ」というセリフにあり、ノーラン自身から観客に対して

 

のメッセージでもあります。 ですからとにかく理屈は置いといて、画面に映し出され

 

る非現実的なリアリティの世界をただただ堪能するのが一番の楽しみ方で、映画が終

 

わってから友達とああだこうだとお喋りする楽しみも含まれた作品です。

 

 

 

 

まぁ主人公の男がビルは登るは、時間の逆行したアクションはするは、建物は爆破し

 

ちゃうは、本物のジェット機が建物に突っこむは、観た事ないカーアクションはある

 

はと、ノーラン作品の醍醐味の「ほとんど実写」という圧倒的な映像の凄みは、これ

 

でこそ映画というワクワク感を堪能させてくれます。 これだけのビッグバジェット

 

の映画なのに難解なロジックの作家性ある作品を作れるというのもノーラン監督の勢

 

いと実績あってのものだと感心します。

 

 

 

 

これまでのダークナイトを除くノーラン映画のほとんどが時間をテーマにした作品が

 

多いのですが、今作はその極みのような内容で、遂に時間の逆行がそのまま映像とし

 

て描かれている訳ですが、これは正に 「映画」 という芸術そのものでもあります。

 

過去、現在、未来というそれぞれの時間軸の物語を、編集という作業によってひとつ

 

に繋いで一定の時間に収めてしまうという。 この時間芸術とでもいうものを私達は普

 

段から観ている訳ですが、その映画という特性自体に物語を持たせて映像作品に仕上

 

げた本作は、クリストファー・ノーランによる映画そのものへの愛を可視化させたよ

 

うな作品なのではないでしょうか。

 

 

 

 

映像や構成は勿論ですが、この作品に緊迫感をもたせている音楽が素敵でした。 重低

 

音上映という事もあってか、主人公の心理、そこで展開するアクションの緊迫感を見

 

事に表現した音楽は、特別な旋律がある訳ではないのですが、ミニマムな音階の繰り

 

返しが映画自身の心音のように聞こえて、作品自体を特別なモノに仕上げています。

 

 

 

 

正直、まだ一度しか観ていない私なんかは作品の半分程しか理解出来ていないのです

 

が、少なくともこの作品は劇場で鑑賞するのが最も適している映画なのは間違いあり

 

ません。 勿論、私自身も今後DVD等で再度鑑賞すると思いますが、劇場という環境

 

で観る本作とはかなり印象が変わってしまうのではないでしょうか? ですので、もし

 

興味がある方は劇場で上映されている今こそご覧になる事をお勧めします、です。

 

 

 

 

こうして理解しようと再度鑑賞しようとする行為も、同じ時間を再度体験する訳です

 

から正に映画の内容にリンクしているように思えます。 それすらもノーランの計算な

 

のではないか?と考えてしまう程、いくらでも考察を楽しめる作品とも言えます。

 

そうそう、この映画を一緒に鑑賞したあのお婆さん、観終わってどんな感想を持った

 

のでしょうね。 私なんかよりず~っと作品を理解して、重低音による爆音を楽しんで

 

いたかも知れませんね。 そんな事が頭をよぎりつつ劇場を後にしたのでした、、。

    

   「頭で考えるな、感じろ」 TENET の鑑賞法の参考になれば幸いです。

 

では、また次回ですよ~! パー

 

 

 

 

 

 

 

TENET のサウンドトラックです。 聞くだけで映画の緊張感を感じる楽曲です。 音譜