アーサー・ハミルトンは平凡な銀行員で、何不自由なく暮らしていた。 ある日を境におかしな電話がかかってくるようになり、見知らぬ男から住所の書かれた紙を手渡される。電話の主は死んだはずの親友であり、その住所へ行けと懇願される。 アーサーは不思議な誘惑に駆られ、銀行を抜け出しその書かれた住所に向かうのだが、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは1966年制作の アメリカ映画 アメリカ です。 (107分)

 

もしも、全く別の人間に変身して人生をやり直せるとしたら?というテーマの作品が

 

こちらになります。 公開当時は興行的な失敗作とされていましたが、後にカルト映

 

画としてフィルムメーカー等から再評価されている作品です。

 

 

 

 

  銀行の幹部であるアーサー・ハミルトンは、帰宅途中の電車で見知らぬ男から謎

 

の住所が書かれたメモを渡されます。 彼は数日前から死んだはずの親友を名乗る電話

 

に悩まされていました。 この日も電話が鳴り死んだ友人のチャーリーだと告げられま

 

す。チャーリーと名乗る男は2人しか知らない秘密を語り、アーサーは電話の相手が

 

チャーリー本人だと理解します。 

 

 

 

 

チャーリーは自分が死んでいない事を告げ、「今まで以上に人生が楽しい」 とアーサ

 

ーに訴えます。 そしてチャーリーはウィルソンという偽名を名乗って男に渡されたメ

 

モの住所へ来てほしいとアーサーに頼み、電話を切ります。 

 

 

 

 

翌日、半信半疑のアーサーは真相を知りたいという欲求からメモにある住所へと出か

 

けて行きます。そこは食肉倉庫で、ウィルソンだと告げるとトラックに乗るよう指示

 

されます。 

 

 

 

 

着いた先は謎のビルで、応接室のような部屋へ案内されます。 出されたお茶を飲んだ

 

アーサーは悪夢のような眠りにつきます。 目が覚めたアーサーが案内された部屋に

 

は書類を広げた男がいて、唐突に説明を始めます。 それはアーサーという人間が死

 

んだ事にして、ウィルソンという新たな人間になるというものでした。  滝汗

 

 

 

 

アーサーに似た死体を用意して身元が分からない状態で死んだ事にする、アーサー自

 

身には顔から指紋まで、あらゆる整形を施して別人になり、全く新しい人生を送る事

 

が出来ると、、。 

 

 

 

 

理解に苦しむアーサーでしたが、断れない条件を突き付けらてしまいます。今までの

 

退屈な生活、叶えられなかった夢の生活、誘惑に惹かれたアーサーはウィルソンとい

 

う人間に変身する決断をするのでした。 

 

 

 

 

謎の組織が用意した全く新しい名前と顔を手に入れ、新たな住居、新たな職業で 悠々

 

自適に過ごす事になったウィルソン。 徐々にその生活へ慣れて来た彼でしたが、漠然

 

とした虚しさがウィルソンを襲い、、。 というお話です。

 

 

 

 

まるで星新一のようなストーリーでございます。中盤はフィンチャーの「ゲーム」、

 

後半は 「ステップフォード・ワイフ」 の風味が感じられる、異色のSF映画です。本

 

作はアカデミー撮影賞にノミネートされている程、当時としては斬新な映像が楽しめ

 

ます。

 

 

 

 

ソウル・バスによるオープニングタイトルのインパクト、映画のテーマを象徴したよ

 

うな人間の顔をこれでもかとクローズアップしコラージュした、悪夢のような映像は

 

それだけでも見応え十分で、ジェリー・ゴールド・スミスの音楽と相まって奇妙な世

 

界へと誘われます。 

 

 

 

 

本編が始まってもその独特な映像はつづき、人物に固定された不気味なショットや、

 

人物に異常に近いカメラや不安を煽るような構図が、アーサーの心理や謎の組織、不

 

条理な世界観の不気味さを見事に表現していて、まるでホラー映画のように、観てい

 

るこちらの心理までも不安にさせられます。

 

 

 

 

中盤までは観客側もアーサーと同じように、この不条理な世界をザワザワしながら同

 

一体験出来るのですが、ウィルソンとして生活し始めてからは、徐々に興味が薄れて

 

しまう所もあってちょっと残念です。

 

 

 

 

特にノーラという女性に出会い、彼女が参加するカルト的で摩訶不思議なワイン&裸 

 

の集会場面がやたらと長く、カオス過ぎて、ちょっと別の迷宮へと誘われてしまいま

 

した。 ドクロ

 

 

 

 

その辺りを除けば中々斬新な作品ですし、誰もが一度は考えた事がある 「今とは違う

 

別の人生」 が現実に叶えられたら、というテーマは興味深いのではないでしょうか はてなマーク

 

映画はそんな夢を手に入れた男の顛末と、その代償の恐ろしさが描かれています。

 

劇中で組織の責任者という人物がアーサーに問いかけます。

 

 

 

 

「気付いていたはずだよ、誰が君を恋しがる?誰が悲しむ?君の人生は、もう何の意

 

味もないのでは?未練はないはずだ、君が望んだ人生をやり直すんだ」 こんな真正

 

面の真理を突き付けられたら、ついつい揺らいでしまいそうな私であります、、。

 

 

 

 

ただ、生まれ変わって人生をやり直したいと思っている人間は、人生をやり直しても

 

表面が変わっただけで、その本質を変える事が出来ないまま、結局同じ不安を抱えて

 

生きていくしかなく、本質は変わらないという皮肉を突き付けられる作品です。

 

 

 

 

不安と狂気、人間の心理が見事に映像化された映画で、別の人生願望を持った方には

 

魅力的な内容だと思いますので、興味があればご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~!  パー

 

 

 

 

 

 

 

ソウル・バスによるオープニングタイトル。 ビビビっときた方は是非です! 音譜