旅回りの駒十郎一座の乗った船が港に着いた。 駒十郎は一膳飯屋にお芳を訪ね、その昔二人がもうけた清も今では郵便局に勤めていると知って安心する。 清には駒十郎はお芳の兄ということになっていた。 駒十郎の連れ合いのすみ子は、清のことを不審に思い加代に清を誘惑してくれるよう頼む。 加代と清は恋仲になり、それを知った駒十郎は加代とすみ子を激しく叱りつける。 客入りの悪くなった一座は解散することになり、。

 

 

 

 

 

 

こちらは1959年制作の 大映映画 日本 です。 (119分)

 

小津安二郎監督自身が1934年に制作した「浮草物語」を自らリメイクしたという

 

本作。作品のほとんどが、一般的小市民の家庭を描いたものが多い小津映画の中で

 

も、本作はちょっと変化球的な内容になっています。

 

 

 

 

  座長 駒十郎 率いる旅芸人一座をメインに、訪れた島での訳ありな親子の物語が

 

綴られた本作。 駒十郎が若い頃に関係を持った一膳飯屋のお芳との間には息子の清

 

が出来ますが、旅芸人という生業の駒十郎は島を去り、お芳は女手一つで育てます。

 

 

 

 

しかし駒十郎は一座の興行名目で、度々島を訪れては叔父という肩書で、清の成長を

 

見守っていたのでした。 そんな中、客入りも少ないこの島での興行に疑問を抱いた

 

駒十郎の連れ合いのすみ子は、周囲に探りを入れ、駒十郎とお芳の関係を知ってしま

 

います。 嫉妬したすみ子は一座の加代に、息子である清を誘惑するように頼むので

 

すが、これがきっかけになり思わぬ方向へと転がってしまうのでした、、。

 

 

 

 

親と娘という題材が多い小津作品ですが、今作では父親と名乗れない父と息子の関係

 

を軸に、なかなかドロドロとした人間関係が描かれています。

 

 

 

 

ただ、そのようなお話の割に常にクスっと笑えてしまうユーモラスな空気が全編に漂

 

っているのを感じるのは、私の年齢もありますが、駒十郎を演じる中村鴈治郎の漂々

 

したなんとも言いがたい演技による所が大きく、脇で光る一座の男衆3人組のとぼけ

 

たやりとりや、すみ子を演じる京マチ子との絶妙な会話によって救われています。

 

 

 

 

ただ、やはり久々に小津作品を観ると監督のこだわったセリフ回しの不自然さ。 特に

 

オープニングの船着き場での会話シーンや、清演じる川口浩の棒読み感 (あくまでも

 

監督の計算上の演出は理解出来ますが) 

 

 

 

 

そこに多少の違和感と不自然さは感じてしまいますし、いつもの会話場面での人物の

 

ワンショットの切り替えしカットが、通常以上に多様されているのが気になったりも

 

しました。 お話が進むと気にならなくなりますが、、。

 

 

 

 

本作で最も印象的な場面としては、やはり黒澤映画ばりに降り注ぐ大雨の中、道を挟

 

んだ軒下での駒十郎とすみ子の口喧嘩シーンでしょう。 男と女の立場、立ち位置、

 

情念を言葉だけでなく 情景と構図 で表現した名場面ではないでしょうか? ガーン  

 

 

 

 

そして個人的に最も見応えがあったのが、大ファンである 宮川一夫のカメラです。 当

 

時の 日本の夏 を映した映像の見事さ。色、構図、奥行き、質感と、昭和のその時代の

 

空気すら閉じ込めた映像には、ただただ ため息が出る程の美しさです。 

 

 

 

 

そこにはめ込まれた俳優陣の佇まい。 特に 京マチ子 と 若尾文子 の美しさと凛々しさ

 

たるや。キラキラ  そんな女性陣にビンタを連打する駒十郎の姿に時代を感じた私でした 

 

 

 

 

そうそう、駒十郎の子供を産んだお芳を 杉村春子が演じているのですが、京マチ子が

 

杉村春子に嫉妬って、、。まぁ、そういうものなのでしょうね。 情念て。 

 

ラストの駅校内で、無言のマッチのやりとりも印象深いものがありました。 メラメラ  タバコ

 

 

 

 

劇中で、最近の若者は何をするか分からない といったセリフがありましたが、今も昔

 

もその昔からも言いつづけられていて、人間の根幹てのは、何も変わらないものなの

 

かと感じてしまいました。 

 

 

 

 

最後に列車のテールライトが並んで去って行きますが、それも駒十郎とすみ子、もっ

 

と言えば 男と女、の距離感を象徴しているようにもとれる映像が印象的な作品でした

 

海に浮かぶ島、灯台、雨、それぞれが作品を象徴した比喩になっている、日本的情緒

 

が溢れた作品で、女性二人の美しさと、中村鴈治郎の顔力。 見所が沢山ある映画です

 

ので、機会があればご覧になってみて下さいませ、です。  目

 

では、また次回ですよ~!  パー

 

 

 

 

 

 

 

「浮草」 の風景ショットを坂本龍一の曲に乗せてみました。 よろしければです。 音譜