1940年5月、第二次世界大戦初期 独裁者ヒトラー率いるナチス・ドイツの前にフランスは陥落寸前で、英国にも侵略の脅威が迫る中、新首相に就任した前海軍大臣のウィンストン・チャーチル 国民には人気があったものの、度重なる失策で党内はもちろん国王からも信頼を得られず、弱音を吐く彼を妻のクレメンティーンは優しく叱咤する 就任直後の演説では勝利を目指して徹底抗戦を誓うも、戦況は悪化の一途を辿っていく そしてドイツ軍に追い込まれた英国軍が、ついにフランス・ダンケルクの海岸で絶体絶命の状況を迎える 英国への上陸もいよいよ現実の脅威となる中、犠牲を回避すべくドイツとの和平交渉を主張する外相ハリファックスの必死の説得を受けるチャーチルだったが、、、
こちらは2017年制作の イギリス映画 です(125分)
1940年にイギリスの首相となった ウィンストン・チャーチル の首相就任からダン
ケルクの戦いまでの約一ヶ月の激動の日々を描いた本作であります 正直、有名な政
治家であり、人気者のこの方ですが、個人的には映画になってもあまり興味の沸かな
い物語
しか~し私の好きな ゲイリー・オールドマン が 主人公のチャーチル を演じ、第90
回アカデミー主演男優賞を受賞し、同じく英国アカデミー、ゴールデングローブも受
賞され これは観るしかないのでありました ご存知の通り、彼の特種メイクを担当さ
れた 日本人の 辻一弘 さんも 米英のアカデミーで メイクアップ&ヘアスタイリング賞
を受賞されました
映画の大まかなストーリーは (学も無い為) の要約をご覧になって頂くと
して、この種のジャンルには珍しく 意外とタイトな上映時間 エンドロールを省けば
ほぼ120分です (最近の特殊効果が入った作品のエンドロールって長くなりがち
あるある)その上、チャーチルという人物のキャラクターの影響もあるのでしょう
か?ついつい重くなりがちになってしまう政治のお話、その上ナチスの侵攻が迫って
いるという緊迫した状況にあるにも関わらず、時にユーモアを交え私のような人間に
も(辛うじて)分かりやすく物語が進行していきます 脚本の巧みさもあるのでしょ
うがね
本作のメインとなるのは、イギリス議会はナチスドイツのヨーロッパ侵攻に対して
どのような対抗手段を取るのか、イケイケのナチスと国民の命を守る為に、融和条約
を結んで彼等の犬になるか、ナチスの独裁に対し徹底的に抵抗をするか、イギリスと
いう国の未来を託す選択に迫られるチャーチルの葛藤と、今現在 ドイツ軍に包囲さ
れ ダンケルクの海岸に撤退している40万人の兵士を、如何に救助するかという切迫
した救出作戦を描いています。これは以前にもご紹介した ノーラン監督の 「ダンケル
ク」 をご覧になっていると、脳内で同時進行させて楽しむ事が出来ます 議会での
密室での戦いと、現場の戦場でのダンケルクの戦いの2面性が立体的に堪能できるの
でございます
この作品の良さは歴史的な出来事を描いている面は勿論ですが、このチャーチルとい
う人物の日常の行動や所作、そして彼を支える妻とのやり取りや、新たに採用された
女性のタイピストとの会話や交流が細かく描かれていて、それによってよりこのチャ
ーチルという人物の行動原理が理解しやすく、ユーモラスでチャーミングな一人の人
間としてリアルに見える所であります 最近の傾向で影響でしょうが、男性のみが活
躍するようなこの手の映画にもちゃんと女性の重要なキャラを登場させる事で、人間
ドラマとしての深みと多様性が増す事になっていて、それはそれで良い影響なのでは
ないでしょうかね
そして、今作の大きな貢献者でもあるメイクの見事さは素晴らしいの一言です それ
でいてちゃんとゲイリーの 目 の演技と チャーチルという人物の動きやクセ 喋
り方をかなり研究した努力は見事な共作だったと思います
個人的に魅了されたのは撮影でありました ブリュノ・デルボネル という撮影監
督さんで、「アメリ」「ダーク・シャドウ」等を撮った方のようですが、本作の光と
影を強調した映像は、オープニングからエンディングのショットまで見事な仕事をこ
なしておられます 重圧なドラマは得てして 退屈 になりがちな傾向にありますが、
本作は見事にそこをクリアして、ラストまで興味を持てるような映画に仕上げてあり
ます あくまでチャーチルという人物の短い期間を追った作品ではありますが、歴史
が動いた瞬間を垣間見るには良い作品ではないでしょうか? 個人的にタイピスト役
の リリー・ジェームズが気になりましたが
ヒトラーもチャーチルも、人の心を掴む演説が上手かったのですが、演説の内容の差
で、こうも違うものかと思ってしまいます 皮肉に言えば、どちらの国に属するかで
変わってしまうという 紙一重の怖さと、プロパガンダの恐怖を感じてしまう私であり
ました 興味が湧きましたら、「ダンケルク」 と合わせてご覧になってみて下さいま
せです
では、また次回ですよ~!
エキセントリックな役者から凄みと渋味が加わったゲイリー 憧れてしまいますです