
朝方まで会社の人と呑み、遅い日曜日を迎えた。
随分会っていなかった兄貴に会いにいくため、少しだけアルコールの気怠さが残る体を起こし、そそくさと着替えを済ませ、ホテルをチェックアウトした。
五条通を東へ歩き出す。ヒヤリとした朝の空気が頬をなで、思わずマフラーに顔を埋める。懐かしい匂いがしたので深呼吸をする。
車の排気ガスの匂いの中に、18年間親しんだ関西の朝の空気の匂いがした。
五条烏丸の喫茶店で軽い朝食を摂ったあと、コンビニで地図を買い、待ち合わせ場所である京都大学に向かうことにした。
ここから百万遍まで歩けない距離でもない。そこまで歩こうか迷ったが、電車を使う事にした。
出町柳駅を出て、記憶をたどりながら今出川通を東へ歩く。何度か来てはいたものの、7年間と言う時間がモヤのように頭の中の風景に重なっている。
東大路通を右に曲がり、そうこうしているうちに正門に到着した。既に兄貴は到着していて、不思議なほど変わった様子もなく、木の下の植え込みの縁石に腰掛けていた。父の5周忌以来、一度も連絡を取り合っていなかったが、いつもの優しい兄貴だった。
お互いの近況と、その他どうでもいい話をしながら、紅葉の京都御所を通り、出町柳のゆるい商店街をブラブラし、二人京都の街を散歩した。
東京への帰りぎわ、『都合の悪い事でも何でも言うてこいよ。』と見送ってくれたとき、名残おしい気持ち…小さなころ遊園地から帰るときに感じた寂しさに似たような気持ちでいっぱいになって、家へ帰る人が行き交う四条駅で思わず泣いてしまった。
明日は月曜日。また兄貴と私は日常に戻り、別々の場所でそれぞれの時間を過ごす。今日はゆったりと兄弟の時間を過ごしたものの、つかの間の非日常だったのかもしれない。
人生は旅のようなものと誰かが言っていたが、人生を歩いて行く人は巡礼者のようなものではないかと帰りの新幹線の中で思った。
最終地点は皆同じ、死というものだと捉えている。そこに辿り着くまでに、一体どれだけの事が出来るだろうか?どこまで自分を高みにもってく事ができるだろうか?
答えはすぐには出なかった。
《おわり》