人生の終末住宅のすすめ-02 | 元・極め設計職人のJAZZな家造り

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ヤフブロから引っ越してまいりましたが、その後脳梗塞になり、家造りの仕事から引退することになりました。会社も解散・廃業しましたが、興味あることなどよもやま話などを今後ともブログ投稿を継続するつもりです。

家を設計する場合、家族構成はとても重要な計画の前提条件です。

施主が亡くなるまでに家族構成の変化が生じない場合、終末住宅のニ-ズは
恐らく発生しません。

しかし、一般的にお子さんが将来ニ-トにでもならない限り、様々な形で
家族構成は変化します。

また、現在子供のいない夫婦の場合でも、家を建てる時、子供を作る予定が
ある家庭ならば、将来のお子さんの部屋を確保できるスペ-スを折り込みます。

家造りにおいて、子供という存在は常に不確定なものです。

人生はナニが起きるかワカリマセン。

子供が成長し結婚すれば、家族に新しい世帯が生まれます。
仕事の就職先が地元とは限りません。地元に就職しても転勤もあります。

家づくりにおいて、その前提となる家族構成とは、時間軸上とても不確定な
ものです。しかし、その不確定な家族構成の中で、確定的なものがあります。

夫婦です。

もちろん、離婚することもあるし、死別することもあるわけですが、
家族の最小単位は『夫婦』と考えてよいと思います。

『終末住宅』は最小単位である夫婦が快適に死ぬまで暮らす住宅であり、
どちらかが亡くなった後も、残された一人が死ぬまで快適に暮らすことを
目的に建てる住宅です。

50~60代で終末住宅を建てるというのは一例にすぎません。
実は若くして終末住宅をベ-スに家づくりをした有名な建築家がいます。
菊竹清訓という方です。氏の自邸『スカイハウス』は傾斜地に建ち、
夫婦2名を基本に置いた住宅で4本のRCの大きな壁柱で支えられています。

その下はピロティという空間になっていて、木製のカプセルがコンクリ-トの
床下に吊り下げられていて、それは子供の個室になっているのです。
-思春期を迎える子供が増えると、そのカプセルを増設し吊り下げていくわけです。

子供は、そのうち自立し家を出ることを想定していて、それをを前提に
仮設的な木製カプセルを吊るし、子供の個室にあてがっているわけです。

将来、終末住宅となるであろう夫婦の空間はシッカリしたRC造で
作られていますが、木製カプセルは住み手がいなくなれば、あまりお金を
かけない造りなので、簡単に廃棄できるようにと考えられています。


近年、郊外の戸建てを売って都心部のマンションに住み換えるという
ケ-スが増えているそうです。

老後は、利便性が高く、医療施設も近くにあり、公共交通の発達した立地で、
エレベ-タ-や管理・セキュリティの充実したマンションの方が良いという
ことでしょう。

子供も独立して、広い家は不要になった。
車もいつまで運転できるかわからないし、広い家を掃除するのも大変…。

住み替えも、終末住宅の一つの選択です。

逆に、ずっと都心のマンションに暮らしていたが、定年退職後、子供も
独立したし、夫婦でノンビリと自然の中で、もしくは、田舎で余生を
送りたいということで、地方に移住する人もいます。

都会では高額な土地も田舎では2足3文の価格です。
地方都市近郊ならば、医療施設も商業施設も充実しています。
大店法の緩和で地方都市近郊には巨大SCが進出し、都会に負けない
商業空間も実はあります。

綺麗な水と空気は老後かけがえのないものです。田舎にはそれがあります。

地方都市は、海山など美しい自然に近く、また、
地方は都会より物価も安く暮らしやすいのです。

土地の購入資金が無くて、庭付き1戸建てを断念した過去、もはや、
仕事も辞めているので、都会にいる理由はありませんね。

夫婦2人の暮らす一戸建ては、コンパクトでリ-ズナブルな建設費です。
2階建てにする必要もなく、広い庭に平屋建てです。

地方移住も、終末住宅の一つの選択です。
海外に移住するのもありかもしれません。

終末住宅は、建替え時期を迎えている家ならば、建替えるでしょうし、
売却して住み替える場合や、リフォ-ムなど様々な選択肢が考えられます。


田舎に帰省していた時、駅前の喫茶店に入って喫煙していると、
隣のテ-ブル席に座っていた老人からタバコを1本もらえないかと話しかけられ、
何でも禁煙中らしく、それがきっかけで色々と世間話をしたことがあります。

そのご老人は、春から秋は田舎で、秋から春までは都会で暮らしている
ということでした。

都会にも家と土地があるそうで、田舎にも親の残した家と土地があり、
渡り鳥のように季節の移り変わりとともに住むところを変えているそうです。

都会の良さも味わい、田舎の良さも味わうということです。

私自身、都会に戸建てを持ち、田舎の一等地に親の残した土地を持っています。

職業柄、定年はないので頭がボケないかぎり働くことになると思いますが、
趣味で仕事ができる状態になれば、この老人のように、
田舎と都会を渡り鳥のように行き来することになるかもしれません。

ご老人曰く、別にどちらかに決める必要はない、
それぞれの良さを切り取って生活すれば良いそうです。

1本のタバコのお礼にと、コ-ヒ-代を支払って行かれました。
職業はお医者さんで、息子に跡を継がせて隠居暮らしだそうです。


昔、借金してまで家を建てる必要はないと思っていました。
その考えはある時、ガラッと変わりました。

家を建てるお金が溜まるまで待っていたら、いつになるかわからない。
老人になって、やっと家を建てる金が溜まったとして、どのくらい新居で
暮らせるのか?人生、限られた時間の中で、快適な生活を送る時間が多い
ほうが良い。金が溜まるまで待っていたら快適な人生が減ってしまう。

快適な生活を送る時間を失うことの損に気づき、
借金して家を建てることを決意したわけです。

当初、自分が借金を完済する前に死んじゃったら、残された家族は
どうなるのだろうと心配していましたが、保険を掛けることで、
借金は家族に残らないことを知りました。

同様のことが、終末住宅にもあてはまります。

残り少ない人生だからと、すでに身の丈に合わなくなったボロボロの家に
住み続ける意味ってあるのでしょうか?
-老後の生活も考えないといけませんので、サイフと相談しないといけませんね。

終末住宅は人生最後の日を迎える家でもあり、また第2の人生を送る家
でもあります。

いつになるかワカリマセンが、プロトタイプを創ってみたいと
考えています。