黒鳥忌。
今年も『虚無への供物』同様、金曜日の開幕となった。





自分の来る前に、誰かが花をたむけていた。
黄色い薔薇である。『虚無』を知る者にとって、「黄薔薇」という呼び名は忘れ難いものであろう。










かつて、告別の場で「その悪しき働きを収め、そのよき働きのみがいよいよ輝きをまし、躓きの石のすべては、栄光への踏み石となります」と、黒鳥館主人にして贋法王の〈ことば〉の力を語った相澤啓三氏も、今年の初めにこの世を去られた。


中井英夫、生誕99年目の黒鳥忌は疫病禍の中の、ひと時の凪の間に静かに暮れていった。