今年入手した古書のなかからベストテンを選ぼうとピックアップしてたら11冊になっていた(苦笑)ので10+1ということで。

◎渡辺啓助『聖悪魔』 国書刊行会 1992年ーー地元ブックオフにて105円
ブックオフで国書の本が買えただけでももうけものだが、これは見返しに墨書で著者名が記されている。発行当時作者は90歳くらいのはずだが、その力強い筆跡は年齢を感じさせない。

◎竹内博(編)『証言構成〈OH〉の肖像 大伴昌司とその時代』 飛鳥新社 昭和63年ーー神保町・みわ書房街頭ワゴンにて520円
「怪獣図鑑」で昭和の少年たちの記憶に今も残る評論家の追悼本。通常ならこんな値段で買える代物ではないが、背文字が退色して読みづらいのと、最後の頁にシールを剥がした跡が大きく残っていて「傷もの」だったせいかとてもお買得な価格。

◎二宮フサ訳、飯野和好絵『ロベール・デスノス おはなしうた』 晶文社 1976年ーー神保町・澤口書店にて500円
シュールレアリズムの詩人が残した、昆虫や小動物を主題にした愛らしい詩集。作曲家ルトスワフスキがこれをもとに歌曲を作っているはず。デスノスは画家・藤田嗣治の元妻と結婚し、対独レジスタンスに身を投じ、チェコの収容所で絶命する。

◎ヴァレリー・ラルボー 岩崎力訳『A.O.バルナブース全集』 河出書房新社 1973年ーー神保町・三省堂古書館店頭にて1000円
これも相場からすればかなりの安値。カバー無し、粗布による表紙の堅牢な作りでマニアックな海外小説の翻訳を河出は意欲的に出していた。同じシリーズではピランデッロ、ブルガーコフなどもある。ロレンス・ダレル『アレキサンドリア四重奏』もこの中にあった。

◎現代漫画の発見⑧『佐々木マキ作品集』 青林堂 1970年ーー地元ブックオフにて105円
段ボール函入りの大型本。言うまでもなく青林堂は「ガロ」の版元。8巻目ということは他の漫画家のもあったんだろう。どんな作家が入っていたのか。

◎天龍・和久田三郎『相撲風雲録 私の歩いてきた道』池田書店 昭和30年ーー神保町・一誠堂にて500円(古本まつり時の街頭セール)
戦前の角界を揺るがした春秋園事件の首謀者、革新派力士の自叙伝。といっても角界史に特に興味があるわけでもない自分がこれを買ったのは別の理由から。以前にも書いたが、この人の息子は三島由紀夫に師事した演劇人で晩年は趣味に徹した古書店を構えた方で、その店「天誠書林」には自分も幾度か入ったことがある。そんな縁で。

◎沢田研二・玉村豊男編『我が名は、ジュリー』中公文庫 昭和61年ーー地元ブックオフにて105円
知る人ぞ知る、馬鹿みたいな古書価で今なお知名度の高い一冊。頁を繰ってみると戸籍抄本の写しとか中学の成績証明書、健康診断時の胸部レントゲン写真とか今ならあり得ないものが平気で掲載されている。冒頭には「渡邊美佐さんへ」の献辞が。戦後昭和の芸能界といえばナベプロだ、やはり。

◎『東京劇場 ガタリ、東京を行く』UPU 1986年ーー神保町・スーパー源氏にて2000円
長年捜していた一冊をついにゲット。バブル景気の裏側、山谷、高円寺を回遊する稀有のアクティビストの側には若き日の浅田彰、平井玄、竹田賢一の姿も。

◎世界文学全集99『バタイユ:C神父/ブランショ:死の宣告/ベケット:マロウンは死ぬ』講談社 1976年ーー神保町・田村書店店頭段ボール箱にて100円
それまで一度も現物を見たことすらなかったものにいきなり最低価格で出くわす。フランス現代文学のいわゆる3Bといわれるメンツの二度とは無いカップリング。やや小さな判型のこの全集、他にはナボコフ『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』ジョージ・エリオット『ミドル・マーチ』アンドレイ・ベールイ『ペテルブルク』も入っていて、やはり見つけるのは難しい。

◎藤子不二雄監修『スーパー・メカノサイエンス ドラえもん道具カタログ 2112年版』中央公論社 昭和61年ーー神保町・澤口書店にて1000円
かつての実質的全集「藤子不二雄ランド」の別冊的なもの。この存在を知ったのはSF作家・山本弘氏のブログ。例の「22世紀デパート」の通販カタログという設定でひみつ道具の数々を紹介した、過剰にSFマインドに溢れた逸品として絶賛されていて、いつかは欲しいと思っていたもの。それこそ大伴昌司のごとく道具の(はなから嘘の)内部構造、運動原理が実に細かく描かれていて楽しい。ちなみに、あの「ロボ子さん」のお値段は1500000円(リースも可)だ! 鉄腕アトムの十倍の百万馬力で尽くしてくれる「最上級ガールフレンドロボット」‼

◎森[セン]三『新編 物いう小箱』講談社文芸文庫 2005年ーー地元ブックオフにて105円
まあ、興味があればネットで調べてみてください。そういうことです。


今年のめぼしい成果(といっていい程のものか)を挙げてみたが、去年までの選考基準と明らかに異なるのは、今回は明白に「相場」を横目に見ながら選んだということ。
古書店の棚やネット(主にAmazon)で目にする相場と、自分が実際に入手した値段との落差を意識することで「掘り出し物」感を更に強く実感するようなラインナップを行ない、それをこうやってシコシコ打ち込んでいる今の自分の顔は明らかに「下衆顔」だ。
ただ古本が買えるだけで嬉しかった、初心な頃にはもはや戻れない「汚れちまつた」己の有様を再確認させられた一年だった、ということか。

(それにしても、購入場所が神保町かさもなくば地元しか無いというのも何と開拓精神の薄いことよ。うん、全然冒険してないね)