傷物二冊に、些か重い気分のまま靖国通りの老舗の並びを、店頭均一棚ばかり見て流してゆく。
この辺りの店はどこも品揃えが専門的で、日本文学、浮世絵、歴史史料、仏教系等等、おいそれと軽い気分では手を出せない。以前、村○×樹の直筆原稿を売りに出したら、それが春×本人の逆鱗に触れ、ニュースになってしまった店もあったり。
しばらく歩き、ある間口の狭い文学系老舗店の前に到着。ここの均一は必ずチェックする。店頭の本は入口で会計しなければならないという不文律と、店主がコワいことで有名な店だが(バレバレだな…)、店内の品揃えが素晴らしい分、外の安売り本もレベルが高いので、常に人だかりの絶えない所だ。
段ボール箱に無造作に詰められた本はどれも百円。自分もしっかりヤンキー座りでキメて物色開始。
やけに薄い冊子が沢山あるな、と見てみたら映画パンフの山だった。シネ・ヴィヴァン六本木のじゃないか懐かしい…ここに観に行ったよな、メカスの『リトアニアの旅の追憶』は…
安いからって全部買ったらやはり総額は高くなるし、持って帰るの大変だし。慎重に吟味して、ゴダール『パッション』、エリセ『ミツバチのささやき』を選ぶ。この館のパンフ、必ず蓮實重彦と武満徹の対談が載っていたのね。
それらパンフの山に、一冊だけやや厚いのを発見。見てみると、おお…
『山谷(やま) やられたらやりかえせ』のパンフじゃないか!実は未だ観てないのだけど、1980年代のヤマの労働者と、右翼・警察との闘いを記録したドキュメンタリー映画の傑作として名の響いている作品だ。これを撮影した佐藤満夫監督は右翼に刺殺され、彼の遺志を継いで映画を完成させた労働組合指導者・山岡強一もまた、凶弾に倒れた。これは当然、買う。闘いに散った二人への、今更ながらの追悼の意志表示として。
さて、それらパンフの下にはさらに、英語・仏語・独語などの洋書が積み重なっている。首を不自然に横にして(タイトルが横向きだもんで)、書名をチェックしてゆくと、なんか見覚えある表題が。
ああ、(ロシア詩人)プーシキン作『エヴゲーニー・オネーギン』の英訳版だあ…なに、translated by Vladimir Nabokov…ナボコフが訳したやつじゃん!
ナボコフ訳・英語版『オネーギン』、二冊本なのだが、一巻目の本文より、二巻目の「注釈・索引」の方が異様に分厚い。本文のおよそ2.5倍(汗)。ナボコフ先生、仕事が丁寧過ぎです。
こんなの買っても、勿論読めませんが何か?(爆) いいのさ、これだって百円なんだから。
また、明日につづく…か?
