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『横溝正史読本』より。左・横溝、右・小林。
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「そのレビューの楽屋でゴロゴロしてるちゅうのは、菊田一夫君なんですワ(笑)だからあれ「菊田一耕助」ですよ…菊田君、誰かにその話を聞いたらしくて、しばらく年賀状くれてましたよ(笑)」
「あの人(渥美清)ネ、四十年のNHKテレビでぼくの『人形佐七』を一年やってくれたことあるの…初めのうちは渥美清でドラマを締めてたな。いや、これ、うまい役者だなと思ったことあるんですよ…渥美清が金田一耕助やってくれるとすると、ぼくはいま期待してるんですけどね」
「実は今日の対談のために(『ドグラ・マグラ』を)読み返そうと思っていたんだけど、真夜中に気が変になっちゃってね…もう死ぬとこだったよ。ガラス割っちゃってね…だから、おれはまだ相当感受性が強いなと思って、安心したよ(笑)」
「名探偵の出てくる本格探偵小説っていうものは、第一次大戦が終わって、第二次大戦が始まるまでの間の束の間の平和が産んだ文学のような気がするね…だから探偵小説が復活しても、やっぱり松本清張が築き上げたリアリズムの洗礼は受けなきゃいけないんじゃないかと思う」
「うちに平櫛田中さんの書があるの…九十七歳のときの字ですよ。ことし百三か四でしょう。百歳になられたときに、向こう三十年間のケヤキやクスを買い集められたそうですよ。それでぼくはこう考えた、去年の正月に。「田中さんには及びもないが、せめてなりたやクリスティー」(笑)…年に一作書いてみたいと思った、長編を。その矢先だから、クリスティーの死は大ショックですわ」