日本代表の予選リーグでの快進撃、初の決勝トーナメント出場もあって、日本のラグビー熱が空前の高まりを見せている。テレビ中継の視聴率(ビデオリサーチ関東地区)は初戦のサモア戦で平均32.8%を記録すると、スコットランド戦では39.2%、準々決勝の南アフリカ戦では41.6%という数字を記録した。

スポーツ中継では、2002年サッカーワールドカップ日韓大会におけるロシア戦の66.1%という途方もない視聴率の記録があるが、そもそもファンの人数ではサッカーがラグビーを圧倒しているはずなので、今回のラグビーの視聴率を見るに、その盛り上がり方がとてつもないものだと感じる。

そんな盛り上がりを見せているラグビーも20年ほど前は全く状況が違っていた。
もちろん70年代後半から80年代にかけての「北の鉄人」新日鉄釜石の日本選手権7連覇や、その後の神戸製鋼による日本選手権7連覇、大学ラグビーの早明戦などの試合はスタンドが満員となりラグビーブームはあったものの、海外へ出ると日本代表は全く歯が立たない状況だった。
ラグビーワールドカップには1987年の第1回大会から連続で出場はしていたものの、第2回大会でジンバブエに勝利しただけであり、前回の第8回大会で南アフリカに勝利するまで連敗続きだった。特に第3回大会のニュージーランド戦では17対145という歴史的大敗を喫するありさまだったのだ。

ちょうどそのころの日本のラグビーについて書かれた本が「ラグビー特別便 1986~1996」 藤島 大だ。ナンバーやラグビーマガジンに寄稿された文章と観戦譜からなる自選集となっていて、ラグビーを知らずともラグビーの面白さを感じることができる。

その本の最初のところで、筆者はラグビーについてこう語っている。

 

断言してしまえば、ラグビーとは、「退屈を楽しむゲーム」である。あるいは、「退屈を楽しむ余裕のある人々のゲーム」か。

「世界でいちばん巨大な子供:ラグビー特別便 1986~1996」 藤島 大(スキージャーナル:1996)

 

退屈を楽しむラグビー!それが今やどうだろう、日本代表チームのみならず各国の試合中継にクギ付けだ。

日本代表戦以外でもアイルランド対ニュージーランド戦では平均視聴率が16.5%だったように、軒並み高視聴率を記録している。

 

一方で、日本ではサッカーに負けず劣らずファンが多いはずのプロ野球。その頂上決戦である日本シリーズの視聴率は振るわない。第1戦から3戦まではヒト桁台で日本一の決まった第4戦でなんとか11.8%を達成したにとどまった。

何の工夫も感じられない実況アナウンサーと野球の面白さを伝えるよりも放送ブースで盛り上がるだけのゲスト解説者、手に汗握ることもないつまらない試合を3時間以上も見せられるとあってはテレビ中継を見ようと思わなくなるのも自明の理か。