チャベスと麻生、波長ぴったり? | 永田町異聞

チャベスと麻生、波長ぴったり?

国連総会ではブッシュ前米国大統領を「悪魔」と罵り、世界を驚かせた。チリの会議では、スペインの前首相を非難してフアン・カルロス国王から「黙りなさい」と叱られた。


その男、ベネズエラのチャベス大統領が来日して、6日、麻生首相に会った。WBCの日本チームを持ち上げるなど愛想とお世辞をふりまいたチャベスと、麻生首相はよほど波長が合ったのか、それとも合わせたのか、1時間ほどの会談は中南米の陽気なムードに包まれたようだ。


チャベス大統領の訪日の目的ははっきりしている。ベネズエラのオリノコ油田開発への投資を促すためである。首相官邸のホームページに次のように会談内容が記載されている。


「オリノコ油田開発やガス開発、資金手当の可能性についてワーキンググループを設置して検討することで一致しました」


実はこの日、日本の独立行政法人「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」(JOGMEC)と、「ベネズエラ国営石油公社(PDVSA)との間で、包括協力協定への調印が交わされた。それに合わせたチャベス訪日であり、和やかな雰囲気だったこともうなずける。


しかし、チャベスは、外貨の稼ぎ頭である石油輸出の半分をアメリカに依存しながらも、「反米左翼」として知られ、ここ数年はロシアやイランなどとの関係強化をはかっている。日本としては、ベネズエラの資源に魅力を感じつつ、チャベスの反米的姿勢は気になるところだった。


ただ、オバマ政権が誕生してからは、米国の「チェンジ」に期待を寄せる発言をするなど、チャベスに微妙な変化が見られることも確かだ。


ベネズエラを東西に横切るオリノコ川流域には、サウジアラビアに匹敵する原油が眠っているとされる。しかし問題は、地下に液状でたまっている通常の原油と異なり、オリノコ原油は砂に染み込んでいたり、タール状で存在したりすることだ。カナダアルバータ州の「オイルサンド」と同様の超重質油で、開発コストが通常の数倍かかるという。


オリノコ川流域では1990年代から米エクソンモービルや英BPなど7社が計170億ドル以上を投資し、超重質油から合成石油をつくる技術を確立した。ところが、チャベスは、外資への開放政策を一方的に転換、一般の原油開発をすべてPDVSA主導に切り替え、2007年5月、開発事業の国有化を宣言した。


欧米のメジャーをコケにするその強気の背景には、おりからの原油価格高騰と、将来の石油枯渇を見据え、コスト高のオリノコ原油でも十分、大もうけできるという目算があった。


ところが、昨年7月からの原油価格下落と世界景気の悪化で、状況は一変した。石油やガスなどで外貨を稼ぎ、オイルリッチ国の一つに数えられたベネズエラの経済は急速に悪化し、チャベス政権を揺るがしている。


経済立て直しに迫られたチャベスの視界に大きく入ってきたのが、石油輸入の9割を中東に頼っている日本から原油開発の投資を呼び込むことだったのだろう。世界景気が膨張し今よりずっと資源ナショナリズムへの危機感が強かった昨夏まではどちらかというと日本のほうが開発投資に積極的だったはずだ。


原油調達先を中東以外にも拡大し、エネルギーの安全保障につなげたいはずの資源小国・日本こそ、チャベスにとって、資金、技術をもたらしてくれるこの上もないパートナーになりうる存在だと映っているのではないか。


とはいえ、日本にとって、オリノコ川流域の原油開発がほんとうに割に合う事業になるかどうかはまだわからない。ワーキンググループで検討するという段階に過ぎないのだ。


世界経済の減速が続き、新エネルギー開発が進めば、そもそも「石油の枯渇」ということすら疑わしくなるかも知れない。チャベスの思い通りにコトは進むだろうか。


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