去年から今年にかけて、著名人の訃報を聞いて、思わず「えっ…」とかたまってしまうような事がふえた。
過去のどこかで、なにがしかの関心を寄せた人たちの名前を多く聞いたからだ。
坂本龍一、谷村新司、大橋純子、元関脇の寺尾、もんたよしのり、八代亜紀。
(思い付くまま順不同)
八代亜紀さんなんて、つい、この間までTVでお見かけした様な気がするのに。
そして、気づいた。
あぁ、自分がそういう年代になったんだ。
これから聞く訃報のほとんどがそういう名前になっていくんだろう。
こうやって自分が老境にはいったと知らされるものなのかもしれない。
山田太一さんも昨年亡くなられた。
私は山田太一さんのドラマが大好きだった。
脚本、山田太一とあれば、間違いないと思って ドラマを見ていた。
その期待が裏切られることはなかった。
この本は、おもに山田太一さんがシナリオを書いたテレビドラマについてのエッセイ集だ。
副題は「私記テレビドラマ50年」
私が、一番先に思い付くのは、やはり、「男たちの旅路」だ。
特攻隊の生き残りというガードマンである主人公を演じた鶴田浩二さんがとにかくカッコ良かった。
品があって、色気もあった。
当時、私は若い女性だった。
このドラマではじめて自分の世代よりずっと上の年代の男性を魅力的だと思ったんじゃないだろうか。
確かじゃないけど、多分。
私サイドの若者としては水谷豊さん、芝俊夫さん、桃井かおりさんが出演されていた。
この若者たちは主人公と意見の対立をするんだけど、結局、寡黙でありながら短い言葉で肝心なことを語る主人公に説得?されてしまうのだ。
あるエッセイで山田太一さんは、これはご自身のお父様が亡くなったので書けた、みたいなことを書いている。もし、生きていたら、こんな利いた風なことを言う男は書けなかった、という。
私が今、このドラマをみたら、説教くさいやつだなぁ、なんて思ってしまうかも、と思えて、おかしくなった。
山田太一さんのドラマが大好きだと書いたけど、この本を読んだら実にたくさんのドラマを書かれていて、私はそのほとんどを見ていない。
何をしてたんだろう、なんて思う。
出演されている俳優さんを見ても、皆、「おお、この人か」、と思う様な良い俳優さんがキャスティングされていて、見られるものなら見たい、と思うドラマがたくさんあった。
他に向田邦子さんとか、倉本聰さんとかの話もでてくる。
この方たち書くのドラマがガンガン放送されてた時代。
なんて良い時代だったんだろう。
TVドラマの黄金期かもしれない。
実はもう一作品、私が夢中になって見たドラマを思い出した。
あまり話題に上らないし、この本の中にも登場しない。
山田太一さんがその作品についてどんなことを語るか知りたくて、他のエッセイ集も買ってしまった。
残念なことに個々の作品について語るというエッセイ集はこれだけの様だった。
しかし、ほかのエッセイ集が実に面白い。
当初の目的を忘れ何冊も読んでしまった。
エッセイが書かれた時代と今では社会は大きく変わっている。
科学技術の進化は目まぐるしく、いちじるしい。
一方、かつて経済大国だったはずの日本はいまや、その位置から滑り落ちそうになっている。
少子高齢化はますます進み深刻な人口減少が予想されている。
もう、今までのやり方ではたち行かなくなっている。日本社会はこれから大きく変化していく、と思われる。
そんな中、老境のとば口に差し掛かっている自分。
そんな私に少しも古さを感じさせず、何か、生きていく指針のようなものを示唆してくれるように思えたのは何故だろう。
私が昭和世代だからなのだろうか。
とにかく気持ちが落ち着いて行くのを感じたのだった。
ところで結局、昔、夢中になって見ていたドラマについて書かれたものはみつけられなかった。
「今はバラ色が好き」というドラマで近藤正臣さん、松坂慶子さん、中田喜子さん主演の恋愛モノだった。多分当時人気が凄かったんじやないか、と思われる近藤正臣さんが恋、仕事の板ばさみになりながら葛藤する誠実な青年を演じていて、とても良かった。
このドラマの主題歌がドラマと同じ曲名で素敵な曲で印象に残っている。
ドラマの映像は無理でもせめてこの曲は見つからないかなと探してみたら見つかりました。
作詞が谷川俊太郎さん。歌っているのは雪村いづみさん。
やはり、とても素敵。
記憶に残るドラマの印象に合っている。