ゴミ清掃業の人が書いた本というので、(ちょっと面白いかも…)と読んでみたら予想を超える深い内容でした。

著者は ”マシンガンズ”というお笑いコンビの芸人さん。

お笑い芸人だけでは収入がきびしいのでゴミ清掃人という仕事に就いたそうです。

ゴミ清掃業とお笑い芸人を両方続けているとのこと。内容は深いですが、さすがお笑い芸人さんだけあって、サービス精神に富んでいて読んでいて楽しいです。

 

タイトルから、きっと、とんでもないゴミの数々のエピソードの話かなと思っていたら、もちろんそのエピソードも豊富ですが、それだけでは終わりませんでした。

おおげさでなく、今の日本社会がゴミから見えてきます。

私などはゴミを集積所に出してしまえばそれでオシマイ、その先のことを考えることはあまりなかったのですが、自分も立派な当事者のひとりだということに気づかされました。

 

ちなみに私がいつもゴミを出している集積所は、この界隈では一番、荒れていて、きたない。

何故ならば、そこを使用している世帯数がすごく多いと思われるからです。

 

数が多いと、どこの誰が出したのかわからないからだろうなぁ。

 

もちろん皆が皆だらしないわけではありませんが、ゴミ出しの指定日を守らない世帯が一定数いると思われる。

ゴミ出し用の棚や籠が空になっているのはお正月の三が日くらい。

それも、どなたかがゴミ出しできないように「棚をひっくり返す」という対策をするからだと思います。

 

ペットボトル用の籠はいつもほぼ埋まっているし、缶用やビン用の籠もだいたい少しはいっている。

私がいつも驚いているのが、段ボール。

土曜日収集なのですが、日曜日には、もう、いくつか出されている。

昨日、集めに来たのに、どういうこと!?と思うわけです。

一週間ぐらい家に置いておけないものなのか。

 

少し離れた場所におかれている少ない世帯数用の棚やかごはすっきりしているのに・・・。

少ないと誰が出したのか見当がついてしまいますものね。

いつもそこを使っている人間はもう慣れてしまっているけど、初めての人が見たら・・・。

道の美観を損ねている事、はなはだしい。

何とも思っていないのかなぁ。

 

この本の中で、とてもインパクトがあるのが、一般家庭にくらべて、超お金持ちほど、ゴミの量が少ないというところ。

大量の洋服(新品に近いものも含め)が定期的に出されるのは一般家庭で、トップクラス(著者は松クラスと名付ける)の高級住宅地では使い古した婦人用の洋服が1枚はいっている程度、だそう。

最高級クラスの高級住宅地は圧倒的にゴミが少ない、という。

他の理由もあるだろうけどモノを安易に買わないからだろうと著者は推理します。

松クラスのお金持ちになると自分の認めたもの以外にはびた一文払わないのではないか。

漁るように買ったものが人を幸せにするわけではないという様な事を、お金持ちの出すゴミが語りかけてくる、というのです。

 

さらに米軍基地の米兵のゴミの出し方は階級によって変わり、位の低い人ほどゴミの出し方が汚く、高い人はちゃんとしている。

ちゃんとしているから出世するのか、出世したからちゃんとするのか、事実として出世した人たちはゴミを軽視していない、という話。

そして、違反ゴミを出す会社は6年以内になくなる、という話。

大量シュレッダーゴミの中にビンや缶を入れる。

そんな分別をしない会社は、気付くといつの間にかゴミを出さなくなっている=存在自体がなくなっているらしいです。

 

説得力ありすぎて、私は私がゴミを出しているあの集積所を使用している全世帯にこの本を配りたい気持ちでございます。

 

他にもゴミ清掃人の仕事の過酷さや、また、ユニークなお仲間のことや、反対にゴミ出しするこれまた個性的な住民の話など、本当に面白いです。

 

しかし、最後に近づくにつれてちょっと言葉を失ってしまう様なゴミの話が出てきます。

未開封のゼリーの詰め合わせ、メロンが丸ごと3個、バウムクーヘン、干し物セットなどの贈答品の数々。野菜や肉。秋になると新米を買ったので古いお米は捨てちゃうという人が世の中には驚くほどいるといいます。

著者が最も衝撃を受けたというゴミ。

ダンボールに詰められたイチゴ10箱。

回転板のボタンを押した後の描写は、美しい様な、凄惨な感じでちょっと固まってしまう。

悪夢だ、と書いてあります。

別の清掃員はこれのキウイ版をみたことがあるという。

形が悪くて売り場に出せないから廃棄。

 

日本の食料自給率38%。62%は輸入。輸入してまでゴミ箱にぶん投げるのか,と著者は書いています。

更に、一年間にまだ食べられるのに捨てられている食べ物が日本では612万トン。

世界の人たちが世界の食べ物に困っている人たちを助けようと援助するるためにかき集めた食べ物の量。食糧援助の数字390万トンをはるかに上回る、ということ。

 

知らない話ではなかったけれど、初めて、生々しく実感できて、ちょっと恐ろしいような気持ちになりました。

大丈夫か、日本人。

いつか報いを受けるのではないか。

 

そして最後に極め付き。

日本の最終処分場はあと20年で埋め尽くされてしまう、という事実。

 

あまり、これが世間で情宣されていないのは何故なんだろう?という重い疑問がわいてきたました。

ギニア出身の清掃員に聞かれて答えに窮したという印象的な言葉。

「ナンデ、ニホンジンハ、ステルモノヲカウノ?」

このカタカナ語は頭に刻み込まれました。

 

今、世の中にはいろいろな問題があって、そのほとんどは自分が何をすればいいかわからないことが多い。

でもこの問題だけは私にも直接、できる事がある。

それはゴミを減らすこと。

この本の前作の最後に書かれていた、東京国立市のホームページで著者が感銘を受けたという3つの言葉。

「買いすぎない」

「作りすぎない」

「食べ残さない」

これをしっかり守って、ゴミだけでも松クラスのお金持ち級になろう!と思います。