ずいぶん前に新聞の書評を読んで面白そうだなぁとメモっておいて、図書館で借りて読みました。
七代目市川團十郎の生涯を描いて、江戸や歌舞伎の魅力をたっぷりと味わえる作品です。
10月31日に13代目市川團十郎襲名のニュースを見てそういうことかぁと納得。
なんだかタイムリーになりましたが全くの偶然です。
この本は市の図書館全体での蔵書数が多い。
高齢者が喜びそうと図書館の職員さんが考えたのかしら?なんて思っていましたがこの襲名の予定があっての事だったのかと。
と、いう様に私は歌舞伎は良く知りません。私にとっては歌舞伎入門編のような作品になりました。
本の中に登場する演目の題名や、着物の色や柄、帯の結び方、日本髪の曲げの種類、ひとつひとつWikipediaで調べつつ読みました。
このWikipediaですぐ調べられるってこういう本を読むとき本当に便利。
それにしても著者は登場人物がどういういで立ち、どんな色柄の着物にどんな羽織を合わせ、どんな帯を結んでいるかなど、詳しく描写してあって想像なのか、それとも浮世絵なんかを参考にしてるのか、なかなか楽しいです。
演目のストーリーなども読んでみましたが、歌舞伎の場合、ストーリーにはそんなに意味はないのかも。ただただ、世の庶民をいかに楽しませるか、役者の芸をどう見せられるか、そこに重点が置かれてるんだなぁと思いました。
難しい理屈はいらない。
有名な「六方を踏む」のも、たとえば弁慶が義経の後を追うしぐさなんだけど、そこにどんな感情が込められているかを形、動きで表しているように思え、この動きを編み出した人はすごいなぁと思ってしまいました。
歌舞伎が海外でも受ける理由が納得できます。
とは言っても、作中で取り上げられている〈四谷怪談〉は、昔TVで見たことがありますがやはり面白い。この本を読みながらも思わず引き込まれました。怖いけど凄みのある物語です。怖いけど哀しい。名作だなぁ。これを初めて見た人たちがどんなに面白い!と思った事だろうかと想像してしまいました。
若い頃、市川猿之助(当時)さんの人気の宙乗りの舞台を幾度か見たことがあるのですが、あれもこの歌舞伎のいかに見ている人を楽しませるかに通じてたなぁと思い出しました。
また、歌舞伎は衣装も粋できらびやかで華やかですものね。
途中、水野忠邦の天保の改革が出てきます。そのために江戸はすっかり活気を失って華やかさや賑わい、粋までもなくなってしまった、という箇所があり、何だか今の日本の状況に重なるなぁと思ってしまいました。
今の日本の状況は必ずしも”お上”のせいだけではないかもしれませんが・・・。
「円安」なんかはもっと、どうにかできなかったのだろうか、と考えてしまいます。
時代が違うので色恋沙汰などは今の感覚で考えるわけには行きませんが、物語の重要なサイドストーリーとして楽しめます。今でいうと、少し違うかも知れないけど、やり手のステージママみたいな妖婦の存在が何とも嫌味であだっぽい。
私は「助六すし」が好きでよく食べます。
多分、歌舞伎の「助六」から来てるんだろうなぁとは思っていましたが、揚げ(稲荷鮨)と巻き(巻き寿司)で助六の恋人の(揚巻)からきていると初めて知りました。ほかにもおはこ(十八番)は市川家の秘蔵芸の十八番を桐の箱に入れて管理したから、などと面白ミニ知識もWikipediaで調べたりしてるうちに得ることになりました。