ブルーブラックのインクのペンが手元にない。たぶん、この前の大掃除の時に捨ててしまったのだろう。あの時はまさか、こんなに時間ができるとは思ってなかったから。まさか、また文章を書いてみようと思うような時間が。

 昔に何かの雑誌で手帳活用術のような特集が組まれていて、その中で有名な編集者だという人が手帳への書き込みにブルーブラックのインクの万年筆を使っていた。その編集者によると、尊敬する作家が原稿を書く時に使っているのが、やっぱりその色だという。

雑誌に載っていたその編集者の手帳の写真、そこに書き込まれた文字は黒のインクと違い微かな濃淡がその筆跡の上にあって文字が生き生きしてるように見え、そのインクに惹かれ、次の日にブルーブラックのボールペンを買いに行った。

それ以来、ノートに書き殴る文字はいつも濃い青だった。

どうしようもない感情も、誰に聞かせることのない歌の歌詞も、楽しいスケジュールも。

 今、この文章はブルーブラックのボールペンがないから、黒いインクのペンで書いているけど、やっぱり、書いていてブルーブラックのインクが恋しくなってきた。

 ブルーブラックは夜空を詰め込んだ色。きっと工場は夜だけ働いて、夜空の端っこを切り取っては大鍋に詰め込んでは溶かしてインクを作ってるに違いない。そう、ブルーブラックのインクで文字を書くことは夜空で文字を書くことだ。夜空色の文字だ。

思えば、ノートに文字を書き殴るのもいつも、夜だった。