最初から諦めておけば楽だと思ってた。


こういう人間にありがちな、俺みたいに懐いてこない奴が面白くなくてそれを手篭めにするゲーム。

押して引いて翻弄して。

俺がその気になったらこの関係は終わり。


そう思ってたから絶対線は引いておこうと決めてた。

何を言われてもなびかない、懐かない。


「………なに、それ。どういう」


なのに最後のあの駒はずるいよ。

カラダだけなら割り切れるだろうし、お前の絶妙に人を喜ばせるフレーズは信じなければいいだけだった。


「わかってんだろ?なのになんでさっきから全部言わせようとすんの」


あんなワケありの男、直接対決はずるいよ。

きっとお前の初めてはアイツとだろうって想像できちゃうし

アイツは自分がニノの1番から落ちることはないって自信満々だろうし

………今でも関係があるんだろうって思うし。



『キミとカズは不釣り合いだよ。俺の方が何倍もカズを知ってるし、カズも俺のことが好きなんだよ』

そう言われてる気がしてめちゃくちゃ腹が立った。



「…潤くんは『皆から好かれてる』俺の、『皆』のうちの1人?」

「そんな奴らと一緒にすんなよ」


これがお前の暇つぶしでもゲームでもなんでもいいよ。

勝ち負けとかそんな問題じゃないのもわかってる。


「……オオノさんとも一緒にすんなよ」




ムカつく。


こんな細くてちっさい奴、簡単に好きにできる。


「ちょ、やめ…っ潤」

左手でニノの両手首を頭の上で纏めて無理やりキスをする。


これくらい振りほどけないなんてほんとは嫌がってないんじゃない?

アイツに色々開発されて誰とでも気持ちよくなれる身体になったんだろ?

実際男でも女でも、簡単にヤれちゃうんだろ?


「…っん、んんん」

固く閉ざす唇を舌で割り入って薄い舌を追いかけ回す。

「ゃ…っは、ぁ」

Tシャツを捲りあげて突起を摘むと肩がピクリと反応した。


皆にチヤホヤされて憧れの的みたいな扱いされてるけどさ、結局こうやって

ちょっと遊んでやろうと軽い気持ちでちょっかい出したつまんない男にこんなことされてさ。


お前もつまんない男じゃん。


「やだ…や、ぁ」

「壁薄いから。声出すなよ」


…ベルトって片手じゃなかなか外せない。

こんな時にモタモタして超かっこ悪い。


「やめ、潤く」

その時、甲高い電子音が鳴り響いた。

「!」


音の方を見るとソファの下に落ちたニノの携帯が光ってる。


「……ぁ…」

助かった、って顔に書いてある。

そんなに俺にヤラれんのは嫌かよ。


自分の中で何かが急激に冷めてくのがわかった。


「……出れば?」


ちらりと見えた着信画面の名前は、この世で1番ムカつく男。