全っっ然眠れなかった。


終電もないし自然に泊まらせてもらえることにはなったけどあんなことしておいてぐっすり眠れるわけがない。

もちろんニノはベッド、俺は雑魚寝な訳だけど…ニノんちの柔軟剤の匂いがするタオルケットにニノの寝息。

さっきの行為と明日からの関係性。

ぐるぐる頭を巡って気がつくとカーテンの隙間から光が差し込んでいた。


「始発出たと思うし…帰るね、お邪魔しましたっ」

寝てるニノに小声で告げて足早に家を出た。


マジで次構内で会ったらどんな顔すりゃいいんだよ…。

やばくない?やばいだろ。男だよ?ニノだよ?

慣れてるの?女だけじゃなくて男も慣れてるの?

あいつの周りにいる奴も何人かヤッてたりすんの?


「………こえぇ」


とりあえず…避けとこ。



それからニノとはたまに食堂とか大講堂の遠くの方とか。電車の反対側のホームとかで見かけたりはしたけど俺の方がすぐ目を逸らした。

あんなに仲間に囲まれて手を叩いて笑ってるニノを見るとあの日のニノがフラッシュバックみたいに目の前に現れて。

潤んだ瞳とか上気した肌とか。なんとも言えない手のひらの湿度とかコントロール出来てない呼吸とか。

その記憶が身体を熱くしてニノが見えないところに逃げたくなるのだった。




『学校来てる?見かけなくない?』

『来週サークル棟でBBQやるよ』

そんな連絡もなくなってきた8月頭。

バイト先にまたニノは現れた。