「ちょっと色々ありすぎて忘れてたコレ」
俺のイメージ、乾杯してなんか食って落ち着いてきた頃皆がソワソワしてきて誰かが「ニノ誕生日おめでとう〜!」みたいな流れで渡すと思ってたんだけど。
「えぇー?何よいいのにこんなの〜」
実際俺1人だし爆弾落とされてそれどころじゃなくなってた。
「え、わっ何コレめっちゃおしゃれじゃん」
「店長に聞いて…俺酒とかよくわかんないし」
生まれ年のワイン。飲みやすいってやつを幾つか聞いて選んだ。
「冷やす?冷やすのコレ?冷えてる?これ冷えてる状態?一緒に飲もうよ」
「え冷やすのかな。とりあえず買ってから常温で置いといちゃった」
「あーじゃあ俺も分かんないけど1回冷やすか〜その方が美味しそうだし」
「ん」
学生の一人暮らしにしてはいいマンションのキッチン。そこに置かれた小さめの冷蔵庫にワインはしまわれた。
「次潤くんがウチに来てくれた時に飲も」
「………ん」
さりげなく次を約束されたことにちょっとくすぐったくなった。
そこから頻繁にニノの家に行くことに……なるわけはなく。
相変わらず俺はサークルに顔を出すこともなければ1人大学とアパート、バイト先を往復する毎日を送るだけだった。
構内で見かけるニノはまた何人かに囲まれて大笑いしてて。
目が合ったわけではないから俺もスルーしてると直後に『あの背の高いヤツ昨日漏らしたらしいよ。死ぬほどどうでもいい(笑)』なんてLINEが送られてきてびっくりすることが多々あった。
俺のこと気付いてたんだ、ってのと
あんな楽しそうにしてるのにやっぱ怖ぇな、ってのと。
…………深入りするのやめとこ。
毎回そう思って適当なスタンプ捺して携帯をしまうのにニノはコンスタントに連絡をよこした。
そして俺はそれを…
『今日バイト何時まで?飲み行こうかな』
………嬉しいと思ってしまうのだった。