「ゴメンこの前楽しめた!?」

いつも(って言っても3回しか喋ってないけど)適当な感じでヘラヘラしてんのに。

「誘っておいて放ったらかしにしちゃってめちゃくちゃ気になってたんだけど俺松本くんのLINEとか知らないし」

あの日から今日までの数日間、こうして偶然出会えるまで気にしてくれてたのが少し嬉しかった。


廊下のど真ん中で話してたから、人が来るとニノは俺のTシャツの裾をちょんって引っ張って端っこに連れてった。

「教えてもらっていい?」
慣れた手つきでQRコードを差し出す。
「…さすが」
もたつく俺とは大違い。
ニノの友だちは何人登録されてるんだろ。
「ん?なに?」
「んーん」
「あ、松本くんてじゅんって言うんだ?漢字は?」
「潤う、の潤」
「へぇーかっけぇ」

あ。こういうとこか。ナチュラルに人が喜ぶこと言えちゃうとこか。
人に好かれる奴って一緒にいると勉強になるな。

「ニノは韻踏んでるみたいだよね」
そう言うとニノは一瞬、固まった。
「…もしかしてカズヤだと思ってる?」
「違うの?」
「ううん、カズヤでいいよ」
「いいとかじゃなくね?」
「いいよ松潤」
「略すなよ!」

ニノは遠くに友達を見つけたのかにやりと笑うとひらひらと手を振って行ってしまった。

和也。
かずや。かずやじゃないとしたら……

「かず…なり?」

次会ったら「かっけぇ」って言ってやろう。