「じゃあこれで固めていきましょう」
「進捗いります?」
「いえ、出来上がったらで」
打ち合わせも終わりが見えてきた。
後は担当に託すだけ…
「じゃ俺はここで」
広げてた書類とタブレットを一瞬でバッグに入れるとすぐ席を立った。
さすがに今日は誰も誘って来ない。

お疲れ様でしたー、とかお誕生日おめでとうございましたー、とか。
そんな言葉に振り向いて笑顔で部屋を後にする。
ちょうど来たエレベーターに乗り込むとすぐに携帯をチェックした。
20:53。
21時前か。大分予定狂ったな。
「やっぱ着信あったかぁ〜…」
そうだよなそりゃ心配するよな。
いくら仕事でもとりあえず電話するよな。
車乗ったら掛け直そう。
駐車場にいるマネに急ぐよう告げてシートベルトをした。


『オカケニナッタ番号ハ…』
あれ?また?
何してんの智?
まだ俺んち来てないの?
LINEでもしとくか。

『仕事終わった。帰ります😊』

後は昨日から溜まってるおめでとうLINE、とりあえず先輩から返事するか…。


「わ。最悪っすね……」
マネがぽつりと呟いた。
「なに?」
「この先で事故みたいで…今からじゃ引き返せないですね」
「マジかよ…」

智も電話に出ない、俺も動けない。
この数日なんなんだよ。
なんで上手く回んねーんだよ。
俺厄年とか?いや男はまだか。
「下道行けるようなら下りていいからなる早で帰れるようにして」
「はい」

そのイライラは伝わらないように、LINEの返事は絵文字たっぷりに返していった。