出ない…か。

まぁいいや。俺今年はそんなものに振り回されない年にするし。

カフェインのせいか頭が覚醒してく感じがする。
生まれ変わったみたいな、逆に清々しい。
心置き無くジムで汗流して仕事に打ち込もう。

……と。
今かけた相手から着信があって一瞬心臓が跳ね、うっかり通話ボタンと終了ボタンをトトっと押してしまった。
「う、ゎ」
あわあわと携帯を手にじたばたする俺を運転手さんがバックミラー越しにチラリと見てくる。

もう一度コーヒーでシャキッとさせて………

「さと、し…?」
電話の向こうでは、荒い息遣いだけが聞こえる。
トレーニング中?
こんな朝から?ジョギングでも始めた?
それが段々落ち着いてきて。

『もしもし…なんでずっと出ないんだよ』
やっと聞こえた声はそんなんで。
……いきなり説教?
「なんでって…あんたこそ」
喧嘩の続きをしたいわけじゃないのに。

『どこにいるの?』
「…タクシー乗ってる」
『どこ行くの』
「ジム」
『誕生日なのに』
「ただの日曜だよ」
『会いたかったのに』
「…っ」

普段そんなこと言わないから急にそんなのびっくりするよ。

『1年で一番、会いたい日じゃん』
「なん、」
じゃあ相葉くんと会ってたり連絡して来なかったりはなんでだよ。
素直に喜べない俺が顔を出して。

『ジムなんてやめて戻ってきなよ。俺今松潤のマンションにいるし』
俺だってこの前智んちまで行ったんだよ。
なのに楽しそうに相葉くんと出てきたじゃん。

「…やだよジム行くよ。そのあとそのまま仕事だし」
『ええっまじ?この流れで!?』
「この流れで」

……じゃああんたのソロはお任せするよ。
最低限の打ち合わせにして早く帰るから。
それでいいでしょ?
それくらい待てるでしょ?

あ、待てるって言えばニノ。
そっちも後で連絡しとかなきゃ。

智はやめないよって。
智も待っててくれるって。

俺も誕生日は、智と過ごしたいって。