───カズお腹いたいの?

相葉くんからLINEが来て、目まぐるしく回転していた俺の脳は一瞬現実に戻った。

やばい。そろそろ戻んなきゃ。
でも潤。潤だよ。
俺がこうして東京から離れようとしてるときに潤は偽者を俺だと思ってあんなことやこんなことを…!
いや違う、誰だか知らないけど俺に成りすました偽者が潤のあんな姿やこんな姿を……!

戻るべきは車だけどその行き先は千葉じゃなくて俺んちだ。

俺はかなり全速力めの小走りで車に戻った。

「あ、カズ大丈夫?混んでたの?それともうんこ?ひゃひゃひゃっ」
「混んでない、てかさ、俺」
「体調悪かったら無理しないで言ってね?」
相葉くんは全開の笑顔からふっと柔らかく視線を合わせて。
「久しぶりの休みだしさ、カズといられればどこでもいいんだから」

ぐらり、とする。

………こんな人を置いて俺は家には戻れない。
俺は今「ニノ」なんだ。この人の「カズ」なんだ。
この人を悲しませちゃいけない。


「全然大丈、夫……まーくん、も…トイレどう、ぞ…」
「何それペッパーくん?くふふ」

相葉くんはサングラスと帽子で完全に顔を隠すと車を降りた。
スタイルもオーラも隠せるものではなかったけれど。


「…っあ、潤!潤にLINEだ」
1人になってそんな単純なことに気付く。

でも、なんて?なんて打てばいい?
そいつは俺じゃないって?
ニノから『俺が本当の翔です。そいつは偽者だからすぐ帰れ』なんてLINEが来たところで誰が信じる?

「……じゃあ電話か?」

目の前に俺がいる状態でニノから電話が来て「そいつは偽者だ」なんて言われて誰が信じる?
いやでも俺と潤しか知らないようなことを言えばもしかして───

「お待たせ〜ほんと空いてたね!これ腹減ったら食べよ」
ぐちゃぐちゃ考えてるうちに時間はそれなりに経っていたようで
相葉くんはお菓子なのか軽食なのか、食べ物が入っているらしい袋を後部座席に置くとシートベルトを締めた。