久しぶりの智んちはなんだか物が増えてた。
なんていうか…なんだろ、前来た時よりソワソワする。


1次会の飲みは翔くんが帰ったことでお開きになった。
程よく酔ってたし、智は俺より酔ってたしあのまま気分良くあの店で終えてもよかったのに
珍しく智が俺ん家来たいなんて言い出して。
色んな資料で片付いてもないし人が来て何かもてなせるようなものもないから全力で断った。


玄関からリビングまでのちょっとした廊下にも大小の描きかけのキャンバスが無造作に立てかけられてる。
多分適当に置いたんだろうけどそれが絶妙なセンスでついキョロキョロしちゃう。
アトリエにしてる部屋は他に借りてるんだろうからここに置いてるってことはお気に入りなのかな?
それとも完成させるのにイメージ膨らませたいとか?
絵のセンスがない俺には芸術家の考えることはわかんない。

「うわ、すげぇ」
リビングにも昔見たことがあるフィギュアがあって懐かしくて手に取る。
美術館にあるものって触れないじゃん?
ここは遠慮なくアートに触れられて楽しい。

「……座っててよ」

照れてるのか呆れてるのか智は俺とは逆のテンションでブランデーとグラス、ビールの乗ったトレイを運んできた。

「またビール?」
「リセットされた」

店員さんみたいに甲斐甲斐しくコースターとグラスを置いてくれて、なんだかそれが可笑しい。
こんな気を遣う人だっけ?

「意外。こんなコースター使うんだ?」
レストランとかでよく見るオシャレなやつ。
コースター自体使いそうにないのによりによってこのデザインだなんて智ぽくないなー、なんて。

「あー…うん、なんか。あった方がいいかなー…と。俺ひとりだったらそんなの使わないよ」


………あー…
そういうこと、か。

「…おお、そっか。そういうことね」

ふぅん。
そっかそっか。
まぁ…そうだよねそんな存在いないわけないよね。


最初に感じたソワソワとは違う、居心地の悪さだけが俺に重くのしかかった。